379 恵方巻き
1日遅れ
「ん、今夜は恵方巻きか?」
夜、帰ってきた先生が家の状況を見て節分を思い出したのと同時に2人のために具をなるべく食べやすいものにした特製の恵方巻きを夕飯として出すと懐かしそうな表情を浮かべる先生。
「もう随分と節分はしっかりやってないから懐かしいもんだ」
「せっかくですし、こういう行事はきちんとやりたいんです」
「わかってるよ。確か年ごとに決まった方位を向いて願い事しながら無言で食べきるんだったな。今年はどっちだ?」
「西南西らしいですよ」
俺も節分は結構久しぶりなので色々調べ直したが、まあ大まかには大丈夫そうだ。
「ぱぱ、どっち?」
「ん?ああ、こっちの方だよ」
スマホのアプリで調べた方角を千鶴ちゃんに教えると無言で食べはじめる千鶴ちゃん。にしても、やっぱりパパ呼びもなかなかいいものだよね。
「ちーちゃん、美味しくても喋ったらダメだからな」
こくこくと頷く千鶴ちゃん。
「にしても・・・私やちーちゃんのために中身をアレンジしたのは流石だな」
「どうせなら美味しく食べて貰いたいので」
「んじゃ、私も食べるとするか」
そうして先生も無言で食べはじめたので俺もいい加減食べることにするが・・・ここにきて特に願い事がないことに気がついてしまった。千鶴ちゃんや先生のことならいくらでも思いつくのだが、それを願い事として願うのはどうなのだろう?
というか、初詣とかでもきちんと色々お願いしてきてるし上乗せしていいものなのかな?あんまり欲張ると後で色々反動がありそうだと思う辺り、貧乏性なのかもしれないな。
そうこうしてると千鶴ちゃんが真っ先に食べ終わったようだった。美味しかったのか顔を輝かせている姿になんとも可愛いと思ってから俺はその姿で願い事を決めて全部食べるのだった。
「美味かったよ。ごちそうさん」
「ごちそうさまでした」
「お粗末さま。デザート食べる?」
「うん!」
「そういや、私もちーちゃんもお前のご飯食べ始めてから体重増えることないよな」
デザートを用意していると唐突にそんなことを言ってくる先生。俺はそれに苦笑して言った。
「まあ、一応カロリー計算してますからね」
「お前、案外栄養士とかもいけたかもな」
「今更目指すつもりはないですよ」
それに他人のためにそこまですることは出来ないだろうね。心から好きな人や大切な家族のためならいくらでもやるけど・・・うん、やっぱり俺はその手の職には向いてないかもしれないなと思いながら、2人のためにデザートを用意するのだった。




