373.5 思わぬ出会い
「ふぅ・・・終わったな」
いつもより早くに仕事を終えられて、帰路につく遥香。音楽会に行けなかったことは残念だが・・・後で健斗に感想を聞こうと思いつつも先程の電話を思い出して苦笑してしまう。
(しっかし・・・まさか音楽会のご褒美がハムスターとはな)
確かに子供へのプレゼントで有り得るものだが・・・自分の娘が欲するとは思わなかったので少し驚いていた。前なら絶対に遠慮して言わなかったが・・・健斗が父親になると決まったからその遠慮のハードルが低くなったのかもしれない。
「にゃー・・・」
「ん?」
そんなことを思っていると、何やら通り過ぎた路地裏からか細い動物の鳴き声が聞こえてきたように感じて引き返す遥香。するとそこにはこの寒い中毛布に包まれて震える子猫が汚いダンボールの中にいたのだった。
「って、おいおい今どきこんなことあるのか・・・」
明らかに捨て猫という風貌の子猫に遥香は眉を寄せてからため息混じりに言った。
「困ったな・・・このままスルーは流石にまずいか」
雪がないとはいえ、1月の寒空で1晩も経てば凍死してもおかしくないだろうし、見過ごしたとあれば流石に目覚めも悪いので仕方なしに猫を抱き上げる。
「ん・・・メスか」
「にゃー・・・にゃー・・・」
か細く鳴いてから抱き上げられた遥香の指を舐める子猫に遥香は若干苦笑してしまう。
「1日に2人も家族が増えたとあったら流石にあいつも驚くか」
「にゃー・・・?」
「預かってから警察に届け出てもいいけど・・・ちーちゃんがハムスター飼うなら私もせっかくだし猫を飼うとするさ」
まあ、どのみち世話を健斗に頼むことにはなるが・・・ハムスターよりはよっぽど寿命が長いのでもしもの時も大丈夫だろうと思う。
「名前は後でいいか。とりあえず必要なもの買ってきて・・・後はアイツに全部任すか」
かなり健斗に丸投げになっているが・・・家に繋ぎ止めるものが多いに越したことはないだろう。浮気防止にもなるだろうし・・・まあ、健斗が浮気をするとは微塵も思ってないが、それでも家にいる時間が増えるのはいいことだと思うのだ。
「あ、でもちーちゃんのハムスター食べないよう気をつけないとな」
「みゃー・・・」
「と、いけない。早く行くとするか」
震える子猫を見てから、遥香は少し早足で近くの空いてるペットショップと動物病院に寄ることにするが・・・それで時間をくわれて結局帰宅がいつも通りの時間になってしまったのにはため息をつくのだった。




