373 事後報告
報告
千鶴ちゃんから少し離れてから、電話をかける。時間的に多分いけそうだけど出なかったらメッセージを入れておこうと思っていると数コールの後にすぐに本人が出た。
『健斗か?音楽会終わったのか?』
「はい。お昼も食べて今は買い物中ですよ。遥香さんはお昼ちゃんと食べましたか?」
『お前の愛妻弁当だからな。残さず食べたさ。んで?どうかしたのか?』
とりあえず俺は先生に軽く経緯を説明すると、先生は納得したように言った。
『なるほどな。しかしちーちゃんが動物飼いたいなんて以前なら絶対言わなかったことだな』
「俺もびっくりですよ」
『それだけお前に心許してるんだろうな。ま、ハムスターは嫌いじゃないしどうせお前が面倒見るから大丈夫だろうが・・・ハムスターの寿命って3年程度だろ?そこは大丈夫そうなのか?』
「そうですね・・・まあ、何の不安もないと言えば嘘になりますが・・・」
チラッと近くで嬉しそうにハムスターを見ている千鶴ちゃんを見てから俺は言った。
「遅かれ早かれ、生き物の生と死に関しては知らないといけないことですからね。それを教えるのも親の役目ですから」
『ま、お前にも考えがあるだろうから心配はしてないが・・・。だが、お前は大丈夫なのか?』
思わぬ心配に少しだけ驚いてしまうが・・・俺はそれに思わず苦笑してしまう。
「本当に優しいですね」
『当たり前だ。お前のことを誰よりも愛してるんだからな』
まあ、俺も生き物の生と死に関して色々思うところはあるが・・・少なくとも一緒に過ごした思い出があればきっと大丈夫なはずだ。
確かに母さんの死から動物を飼うことに関しては少しだけ抵抗があった時期もあったけど・・・でも、それはそれ。可愛い娘が家族を増やしたいならそのお願いを聞くのも父親の役目だろう。
「俺も遥香さんのこと世界一愛してますよ」
『電話じゃなければキスでもねだってたな』
「ですね」
『まあ、今日は結構早めに帰れそうだし帰ってから存分に甘えるとするさ』
「はい。お待ちしてます」
そうして電話を切るが・・・なんか肝心のことよりも早く帰ってくる方が少し嬉しくて顔に出そうになるのを抑えるのが大変だった。今は父親タイムなのだと気合いをいれつつ千鶴ちゃんに報告すると嬉しそうに笑う千鶴ちゃん。
この笑みを曇らせたくはないが・・・まあ、生きていく上で本当に必要なことはきちんと教えないといけないしね。それに・・・もしもの時に支えるのも親の役目だしね。そうしてこの日、音楽会のご褒美としてハムスターを購入するのだった。




