369 発表
本番
音楽会は運動会の時のようにガッツリそれぞれに出番があるというわけではなく、どちらかと言えば団体での発表がメインになりそうだが・・・他の学年の子供達の発表にはそれぞれほっこりしたものだ。
演奏自体は取り立てて上手いわけではないけど、一生懸命なのは伝わってくるし、ミスをしても涙目で頑張る姿は観客として応援したくなるのだ。まあ、運動会みたいに声を出しての応援は出来ないし終わりの拍手くらいしかないが。
そんな中で千鶴ちゃんの組の番になる。大きめのピアニカで一生懸命演奏するのだが・・・その真剣な表情と思ったよりもずっと上手に演奏出来てる事実には驚かされた。
「千鶴ちゃんの組凄いですねぇ・・・」
そして何故か隣に座る後輩がそんなことを呟くが・・・まあ、レナちゃんの組も凄かったしこれがあの子達の実力なのだろうと思う。千鶴ちゃんの先生が千鶴ちゃんが他の子に丁寧に教えていたと言ってたし・・・案外千鶴ちゃんには人に教える才能もあるのかもしれない。
(そんなところまで似てるなんて・・・やっぱり親子だなぁ)
本当に先生の血を色濃く受け継いでいるようで微笑ましくなる。和也さんの血もあるはずなのだが・・・本当に微量なのかもしれないな。まあ、俺は和也さんのことを多少しか知らないからなんとも言えないけど・・・それでも、今2人の側にいられるのは俺だしそこまで気にしてはいない。
そりゃあ、多少は嫉妬の感情とかもあるけど・・・でもね、それを忘れるくらいに俺は2人のことが大好きなんだよね。過去のことは俺にはどうしようもないけど・・・これからのことは俺がどうにか出来るかもしれない。
ぱちぱちぱちぱち。
そんな風に思っていると演奏が終わって拍手がおこっていた。俺は拍手しながら千鶴ちゃんに目線で凄かったと伝えると伝わったのか満面の笑みを浮かべる千鶴ちゃん。
その後で合唱もあったが・・・1番綺麗な声が千鶴ちゃんだったと感じたのは多分俺の気の所為ではないだろう。現に何故かずっと隣にいる後輩も千鶴ちゃんの歌声を褒めてたしね。というか・・・何故この後輩は俺を1人にさせてくれないのだろうか?
「あ、先輩。私そろそろ彼女のところ行きますね」
そして何故かそんな断りを入れて去っていったが・・・本当にこの後輩との関係が自分でも謎になってくる。とりあえず先生や千鶴ちゃんに誤解はさせたくないし、なるべくやんわりと拒絶しようと決意して最後まで音楽会を楽しむのだった。




