365 音楽会の招待状
招待状
「あ、そうだ・・・はい、おにいちゃんこれ」
千鶴ちゃんを迎えに行って家に帰ってくると千鶴ちゃんは思い出したように鞄から何かを取り出して渡してきた。可愛らしいデザインのそれは一見、何かの招待状のように見えるが・・・
「開けてもいいのかな?」
「うん」
「ありがとう。それじゃあ・・・」
中には音楽会のプログラム用紙と千鶴ちゃんが書いた可愛らしいイラストと招待のメッセージが書かれていた。メッセージは先生の手書きかな?まあ、千鶴ちゃんももうかなりひらがなはマスターしており、今はカタカナと漢字にも若干手をつけているのだが・・・まあ、書けない子も多いだろうしそこは統一したのだろう。
「あのね・・・ごしょうたいなの。おんがくかいの」
「うん、ありがとう。凄く嬉しいよ。絶対に行くからね」
「うん!」
自分も昔、似たようなものは書いた気がするけど・・・結局それを父さんや母さんには見せれなかったなぁ。まあ、父さんは仕事があったし、母さんも辛いのに無理して来そうで怖かったというのが本音だが・・・まあ、後日お祖母ちゃんに見つかってため息混じりに叱られたのはいい思い出かな?
「ままもこられればよかったけど・・・」
「ごめんね、お仕事が丁度忙しいから。今度はきっと来てくれるよ」
「うん。でもね・・・おにいちゃんがきてくれるのすごくうれしいの」
えへへと笑う千鶴ちゃん・・・本心なのだろうが、やっぱり先生にも来て欲しいのだろう。時期的にも色々やることあるだろうし俺も仕事に関して口を出したくはないのであれこれは言えないけど・・・まあ、それを支えるのが俺の役目だしね。
俺は千鶴ちゃんの頭を優しく撫でてから微笑んで言った。
「招待状、ママの分もあるんだよね?来れなくても渡せばきっと喜ぶと思うよ」
「ほんと?」
「うん。絶対そうだよ」
「じゃあ・・・わたす」
本当に健気で可愛い自慢の愛娘だと思う。俺は少しでもこの子の支えになってあげられてればいいが・・・いつかはこの子が心底信頼できるパートナーと会えるといいとも思う。もちろん娘の親離れは寂しいが・・・千鶴ちゃんが本当に幸せになるのは俺の手元じゃないのもわかってるのだ。
まあ、でも・・・幼いうちは俺が目一杯甘やかしてもバチは当たらないよね?やり過ぎは良くないけど・・・この子は1度地獄を知ってるからこそ、自制のできる子だと分かってるから大丈夫だろう。むしろ我慢しすぎるきらいがあるので、せめて家族にはもう少しワガママになってもいいとは思うしね。




