363 後輩からのお願い
お久しぶり
「おーい、健斗」
帰り支度をしていると、吉崎から声をかけられる。
「なに?」
「お前にお客さんだぞ。女の子の」
「どうも、先輩♪」
その顔を見て若干顔に出そうになるのを抑えるのに苦労した。見覚えある彼女は後輩で、女装した俺のことが好きだと嬉しくない告白をしてくれた百瀬さんだ。
にしても学校で声をかけてくるとは・・・幸い残ってるクラスメイトは少ないしそこまで目立たないけど、それでも後で先生にはきちんと弁解しようと心に決めてから百瀬さんに近づくと聞いた。
「何か用かな?」
「先輩にお願いがありまして。少しいいですか?」
「断るとどうなる?」
「悲しくて先輩の大切な人にあることないこと話すかもですねぇ」
「はぁ・・・OK。とりあえず場所を移そうか」
あまりこの子と関わりたくないけど・・・先生や千鶴ちゃんに何かを吹き込まれるのは宜しくないので仕方ない。そうして連れてかれたのは調理室。時間的に無人なので大丈夫だろうが、やっぱり若干居心地悪いよなぁと思う。
あくまで個人的な意見だけど、学校の調理室って地味に動きにくいというか・・・やっぱり自分の家の台所が1番だと思ってしまうんだよね。
「あ、先輩。遅くなりましたが、あけおめです」
「あけおめ。それで?俺にお願いしたいことって何?」
「せっかちですねぇ。まあいいですけど。実は私に料理を教えて欲しいんですよ」
「唐突だね」
女の子から料理を教えて欲しいと言われるのは初めてじゃないので特に驚かないが・・・それでも、女の子同士で付き合ってるこの子ならある程度料理も出来るのではと勝手に思っていたので若干疑問に思っていると百瀬さんはくすりと笑って言った。
「実は今、メシマズな彼女と付き合ってるんですが・・・流石にそろそろ致死量になりそうなのでやむをえず対策をすることにしたのです」
「待って。料理で致死量って何を食べさせられてるの?」
確実に毒物の類いの気がするが・・・涼しい顔で言われるので本当なのか疑わしくなる。
「今までの彼女は皆、家庭的だったので私あんまり料理は得意じゃないんですよ。だから先輩にお願いしたくて」
「それはいいけど・・・でも、俺もあんまり時間ないから少ししか教えられないよ?」
「構いません。何品か自然と作れる程度になれればいいので」
それはそれでハードル高いような・・・まあ、レシピ知ってれば大抵の人は作れるし大丈夫かな?
「もしくは先輩がメイド服を着て私にオムライスで文字を書いて欲しいのですが・・・」
「うん、料理教えるだけで勘弁して」
そうして俺は何故か後輩に料理を教えることになるのだった。ナチュラルに悪の道に誘うのは止めて欲しいが。




