356 店主の懐かしみ
馴染みの
「おう!健斗くんかい、あけましておめでとう!」
サービスエリアでお昼を食べてから、巽家本家に行く前に小倉亭に寄ると、いつものように元気に挨拶をしてくる店主。もう70越えてるはずなのに、偉く元気な印象を受けるその店主は、俺の後ろにいる先生と千鶴ちゃんを見て首を傾げた。
「おや?珍しいな。連れがいるのかい?」
「えっと、あけましておめでとうございます。嫁と娘ですよ」
「嫁と娘!?」
驚いたような表情を浮かべてから何やら感慨深そうに感心する店主。
「そうか・・・あの小さかった健斗くんも、もうそんな歳なのか。おいちゃんなんだか寂しくなるねぇ」
「いつも通りいちご大福を。2人の分もください」
「あいよ。ちょっと待っててな」
小倉亭のいちご大福にはあんこが入ってないので2人も食べられるのだが・・・何やら頼んだよりも多く品が入っていて驚いていると店主は嬉しそうに言った。
「健斗くんは常連さんだからね。それに、昔から知ってる子の結婚祝いにしては、少しばかり地味かいな?」
「そんなことないですよ・・・ありがとうございます」
「にしても、あの健斗くんが結婚か・・・きっとお母さんも、天国で喜んでるだろうね」
「あの・・・健斗の母親のこと知ってるんですか?」
それまで空気に徹してた先生がそんなことを聞いてくる。ちなみに千鶴ちゃんは、並んでる商品に興味津々だけど、店主の勢いが怖くて、俺の後ろで隠れているのだった。
「ん?直接は1度しか会ったことないな。健斗くんのお父さんと2人で、仲睦まじそうにねぇ」
何やら懐かしむ店主。
「まあ、でも清子さんと健斗くんが1番通ってくれてるかな?」
「清子?」
「あ、えっと、祖母です」
元々この店はお祖母ちゃんが通ってて、お見舞いによくいちご大福を買っていたのだが・・・まあ、お祖母ちゃんが亡くなってからは俺が1人で通っているのだ。
「そういえば、たまには清子さんにお線香あげにいってもいいかい?」
「いいですけど・・・多分まだ祖父に間男扱いされる可能性もあるので、お気を付けて」
「それは怖いな。まあ、それだけ清子さんを愛してたんだろうね」
うちの祖父の悪いところというか・・・1度こうと判断したらなかなか頑固だったりするのだ。お祖母ちゃんが亡くなった時の葬式でも店主を間男と勘違いしていたようだったし・・・まあ、店主もそれを面白がって否定しないから余計にややこしくなったのはある意味記憶から離れなかったりする。
「まあ、なんにしても・・・幸せなりなよ健斗くん」
「・・・ありがとうございます」
挨拶をしてから店を出ると、外では雪が少し降り始めていたのだった。




