353 出発前に
出発
「じゃあ、またねちーちゃん」
名残惜しそうにそう言うお義母さん。まあ、可愛い孫が居なくなって寂しいのだろうが、帰る日なので仕方ない。
「けんちゃん、やっぱり私も卒業式行っちゃダメかしら〜」
「こら、霞」
「むー、だってだって、瑠美ちゃんばっかりズルい〜」
「全く・・・すまないね健斗くん」
お義母さんが来ても別にいいのだが・・・流石にそこまで大人数は不審がられるだろうし遠慮して貰ったのだ。
「あの、いつでもいらしてください。歓迎しますので」
「じゃあ、我慢するわ〜。あ、恵さんに会ったら伝えてくれる?『うちはいつでも大丈夫』って〜。お願いね♪」
「えっと、わかりました」
何が大丈夫なのだろう?まあ、当人同士でしかわからないこともあるか。そんな風に思っているとお義父さんが何かを差し出してきた。見ればそれはメモ帳のようで・・・俺は思わず聞いていた。
「あの・・・これは?」
「昔、遥香が私の誕生日に初めてくれたメモ帳だよ。ずっと使ってなかったのを見つけたから君に渡したくてね」
「いいんですか?そんな大切なものを・・・」
「いいんだよ。どのみち君には娘という大切なものを渡すんだ。それに少しばかり渡すものが増えてもバチはあたらないだろう」
そう言われてしまえば俺が拒否する理由はないので有り難く受け取ることにする。簡素なメモ帳だけど、持ち運びには便利そうで役立ちそうだと思えた。
「それとだ・・・これもついでに渡そう。これは私達からの遅めの誕生日プレゼントだと思ってくれて構わない」
そうして渡された包みを開けると偉く高そうなボールペンがケースに圧倒的な存在感で居座っていた。
「こんな高そうなものいいんですか?」
「遥香とちーちゃんには渡したが君には渡してなかったからね。使うことは少ないだろうが使ってくれ」
「ありがとうございます。大切にしますね」
なんというか、こういうプレゼントは初めてなのでわりと嬉しかったりする。
「健斗。そろそろ行くぞ?」
車から顔を出してそう言ってくる先生の言葉に頷いてから、隣でお義母さんに捕まってる千鶴ちゃんを抱っこしてから頭を下げて言った。
「お世話になりました。あと、今年もよろしくお願いします」
「ああ。頼んだよ」
「会いに行くわね〜」
そうして挨拶をしてから車に乗り込む。にしてもお義母さんが本当に千鶴ちゃん大好きみたいで何よりだ。千鶴ちゃんは割と普通の反応だけど・・・それはそれで仕方ないだろう。そんな感じで先生の実家への挨拶は終わるのだった。




