351 乾かす間に
手入れ
「おにいちゃん、かみやって〜」
お風呂からあがってきた千鶴ちゃんがそう言ってるくるが予想通りなのでいつも通りに髪を拭いて水気を取ってから、ブラシで整えてドライヤーで乾かす。そうしていつも通りのことをしていると感心したように近くで見ていた楓太さんが言った。
「手馴れてるね」
「ええ、まあ。いつものことなので」
「本当に健斗くんは家庭的だね。僕も見習いたいけど・・・無理そうだ」
「それはそうでしょ?健斗くんは女子力高いんだからねぇ」
「あの・・・瑠美さん。出来れば女子力はやめてください」
家庭的は褒め言葉だけど男が女子力を語るのはかなりハードルが高いのでそう言うと瑠美さんは笑いながら言った。
「まあまあ、そういえば健斗くん卒業式で答辞とかはしないの?」
「しないですね。多分生徒会長とかの仕事じゃないですか?」
「ぶー、つまんないなぁ。あ、でも卒業式なら泣いてる健斗くん見れるのかな?」
「どうでしょう」
卒業式で泣く要素が微塵もないとは口に出せなかった。学校自体に思い入れは微塵もないので泣くになけない俺は大分薄情なのだろうけど・・・実は先生と千鶴ちゃんと出会うまで泣いたこと1度もないんだよね。
もちろんそんなことは言わずに俺は千鶴ちゃんの髪をやりながら前から聞きたかったことを聞いた。
「そういえば大地は来ないんですか?」
「息子は楽しく仕事に勤しんでるよー。まったく誰に似たのか」
居心地悪そうにお酒を飲む楓太さん。まあ、そんなところにツッコミは入れずに俺は千鶴ちゃんに言った。
「本当に千鶴ちゃんの髪は綺麗だよね」
「えへへ、おにいちゃんがいつもやってくれるからだよ」
お兄ちゃん呼びなのは多分、俺をパパと呼ぶと周りがニヤニヤするから本能的に自重しているのだろう。まあ、残り少ないお兄ちゃん呼びをエンジョイしようと思っていると瑠美さんが思い出したように言った。
「そういば健斗くん随分とお祖母ちゃんに気に入られてるんだねー」
「そうですか?普通だと思いますが・・・」
「だって、畑手伝って野菜も貰えたんでしょ?私と姉さんでも仕事を手伝わせて貰えたことないからねぇ」
少し意外なようだけど・・・まあ、それだけ畑に情熱を持っているのだろう。遥香さんは案外お祖母様の血を濃く受け継いでるのかな?仕事への情熱を考えるとあながちハズレでもなさそうだけど・・・まあ、とりあえず今は嬉しそうに髪を弄らせてくれてる千鶴ちゃんに集中力するべきだろう。




