317.5 親子の姿
「おにいちゃん、もういっかい!」
嬉しそうに健斗と遊ぶ千鶴の姿を見ながら遥香は微笑む。本当に心から健斗のことを慕ってくれているのがわかるからこそ微笑ましいのだ。
健斗は気づいているか分からないが・・・千鶴は確実に健斗のことを親として認めていると遥香からはそう見えた。このペースならおそらくそう遠くないうちに本当に父親になりそうな健斗に心底愛しさを感じながら・・・少しだけ自慢したくもなった。
こんなにハイスペックでカッコいい夫がいるのが本当に心から嬉しくて・・・この気持ちを誰かにぶつけたいのでとりあえず妹の瑠美にそれをぶつけようと理不尽なことを考えていた。
「ままー!」
「次、遥香さんの番ですよ」
「ああ。わかった」
健斗と交代で千鶴とソリに乗る。流石に健斗みたいに坂道で千鶴を乗せたままソリを引っ張るなんて芸当は出来ないが・・・それでも、娘との交流は心底楽しくなる。
ただ、ソリだと3人では楽しめないので、午後は別の遊びを提案しようと思っていると千鶴は言った。
「まま、たのしいね!」
「ああ。そうだな」
「おにいちゃん、きてからまいにちたのしい♪」
「・・・かもな」
健斗が来てから遥香と千鶴の人生は好転したと思う。仕事ばかりで家事もろくに出来ない遥香からしたら本当に嬉しい存在。千鶴としてもきちんと傍で見守ってくれる人がいるのは本当に嬉しいのだろう。
そのうち健斗のことを『パパ』とでも呼び始めたら、今度はパパのお嫁さんになるとでも言い出しそうで少し怖くはあるが・・・まあ、そこら辺は健斗が上手くやってくれるだろうと信じている。
娘に嫉妬するようなことは本来あってはならないだろうが・・・それでも、やっぱり千鶴にだけ向けられる顔には少しだけ嫉妬してしまう。同様に自分にしか向けない表情は何よりも嬉しいものだが・・・まあ、それはそれだろう。
(やばいな・・・アイツのこと好きすぎて変な思考になりやすい)
どれだけ抑えても考えてしまうのだからもう仕方ないとしか言えないだろう。本当に心から惚れてしまっているし、自分でも信じられないくらいに重い愛情が芽生えてしまっているのだ。
(卒業まで残り僅か・・・持つかなぁ)
正直なかなかギリギリの勝負だが・・・逆に言えばあと数ヶ月で本気で愛しても問題なくなると気合いをいれることにする。早く本気で愛して健斗を自分のものにしたいと思いつつもそれを顔には出さないように気をつけながら楽しむのことにするのだった。




