305 母さんの想い
プレゼント2
「誕生日に腕時計か、いいデザインだな」
父さんが帰ってから、千鶴ちゃんを寝かしつけて俺は今日貰った母さんからのプレゼントを先生に見せていた。本当は着けていたかったけど・・・どうせならもう1つの贈り物を渡してからにしようと思ったのだ。
「はい。それで・・・実はこれペアウォッチらしいんです。もう1つ女性用もあって・・・受け取って貰えますか?」
「・・・いいのか?」
「はい。遥香さんに受け取って欲しいんです」
その言葉に頷いてから先生はもう1つの時計の入った箱を受け取ってくれた。俺のやつと同じデザインで大きさが違う女性用のそれを取り出そうとしてから・・・俺のと同じように丸められた紙が出てきたので思わず苦笑してしまう。
「これは・・・手紙か?」
「おそらく母さんからです。俺のにも入ってました」
「つまり、私宛ということだな」
そう言ってから手紙に目を通してーーー先生は少し驚いたような表情を浮かべてから何かを託されたように頷いて言った。
「・・・ええ、絶対に幸せにしますよ。お義母さん」
まあ、何が書かれていたのかは分からないけど、多分俺のと同じように母さんなりのメッセージが込められていたのだろう。
「しかし・・・お前の母親は未来視でも出来たのか?」
「さあ、俺も謎です。女の勘ってやつでしょうか」
「なるほどな。まあ、しかし、もう少し遅ければクリスマスのプレゼントを時計にしたかもしれないな」
「俺もその可能性はありました」
このタイミングだからこそ、まだ変更がきくので良かった。まあ、誕生日からだいぶ遅れての到着だったけど、母さんのことだからそんな父さんのことも予測してたのかもしれないな。
「なあ、健斗。私達も子供達にこれくらい出来たらいいな」
「ええ。でも、生きて存分にしましょう。孫の顔を見てから一緒のお墓に入りましょう」
「プロポーズみたいだなそれ」
「もう少し気の利いたこと言えればいいんですが・・・口下手なので」
情けないことに、言葉のボキャブラリーが少ないのだ。だからあまり饒舌には言えないが・・・それでも、伝えたいことは伝わったのか頷いて言った。
「どうせなら長生きして孫の顔みてから一緒にあの世にいくか。だが、まずは目先のことだな。あと数ヶ月後に・・・夫婦になれるんだからな」
そう、もうそこまで来てるのだ。色々準備はあるけど・・・それでも、本当の意味で夫婦になれるのだ。千鶴ちゃんと家族になるのも楽しみだが・・・まあ、その前になんとか上手くそのことを伝えなくてはいけないとも思うのだった。




