303 手紙と時計
「母さんからの・・・」
道理で古い型なわけだ。でも、なんで今更これを渡したのか疑問に思っていると、父さんは懐かしむように言った。
「『きっと、健斗は18歳に結婚する』って言ってたの。だから18歳の誕生日に渡してって言われてたの」
「母さんエスパーなのか・・・」
まさか本当にそうなるとは思わなかったが。そんな風に思いながら時計を取り出すと下から小さく折りたたまれた紙が出てきた。時計の保証書か取扱説明書かと思っていたが、開いて中身を見てから俺は一瞬固まってしまう。
「健斗?」
「・・・母さんの字だ」
随分と昔だから覚えてる訳ないのに、それでもこれが母さんの字だと1発でわかった。母さんからの手紙だ。
「そういえば、何か入れてたわね・・・」
俺はその父さんの台詞が聞こえてこなくて代わりに手紙に意識がいってた。
『健斗へ。18歳の誕生日おめでとう。お母さんはきっとそこまで生きられないけど・・・でも、きっと健斗はお母さんの代わりに皆を守ってくれると信じてるよ。だから大丈夫だと思ってる。きっとね、健斗は18歳になる頃には素敵なお嫁さんが出来てると思うんだ。なんでそう思うかってね・・・理由はお母さんの息子だからよ。きっと、健斗はこれから先色々大変だと思うけどお母さんはいつもこの時計と共にあなたを見守っているからね。だから・・・頑張れ健斗!あとね・・・私、いや、私達の元に生まれてきてくれてーーーありがとう。愛してるよ』
ぽたぽたと俺は涙を零していた。あぁ、くそ・・・みっともないなぁ。
「おにいちゃん、かなしいの?」
「・・・違うよ。嬉しくてついね」
「うれしい?」
「うん、だから大丈夫だよ」
心配してくれる千鶴ちゃんを抱きしめながらそう言う。
母さん・・・誕生日プレゼントしっかり受け取ったよ。母さんの予想通り俺は素敵なお嫁さんを見つけたよ。可愛い娘までいるから、母さんの予想を超えてるかもしれないね。あとね・・・俺、頑張って2人を支えたと思うんだ。母さんとの約束守れたかな?
それからこれも言わせて欲しいんだけど・・・ありがとうは俺の台詞だよ。俺さ2人の元に生まれてきて心底幸せだよ。だから・・・ありがとう。俺を生んでくれて、俺を愛してくれて・・・本当にありがとう。
可愛い娘の前で泣くのはみっともないとわかってるけど・・・それでも、こんなサプライズを用意されては仕方ないだろう。千鶴ちゃんが俺の読んでいた手紙をちらっと見てから何かを決意していたように思えたが・・・この時の俺は気づけなかったのだった。




