298 カニさん
かにぃ……
ピンポーン。
空いてる時間に千鶴ちゃんに文字の書き方を教えていると珍しくチャイムがなる。珍しいなぁと思って出ると宅配の人から大きな発泡スチロールに入った荷物を受け取る。要冷蔵と書かれていたのでなんだろうと思って開けるとーーー
「・・・蟹?」
送り主を見れば父さんの名前になっていた。本人が明日来ると言ってたがその前に寄越してくるとは・・・
「おにいちゃん、なあにそれ?」
「うん?ああ、お祖父ちゃんからの贈り物だよ。蟹」
「かにさん!」
キラキラした瞳を向けてくる千鶴ちゃん。まあ、蟹ってテンション上がるよね。俺としては思ったより量が多いからどうしようか悩んでるけど・・・それは言わないでおこう。
「とりあえず今夜と明日は蟹料理かな」
「かにさん♪かにさん♪」
チョキチョキと可愛らしいダンスを踊る千鶴ちゃん。こんなにいい反応してくれるなんて・・・ありがとう父さん。というか、こんな高級なもの贈ってくるとはなぁ・・・まあ、大丈夫だろうけど、少しお金遣いが心配になってくる。
まあ、なんだかんだで本当に無駄な出費をすることはないとは思うが・・・うん、気にしないでおこう。
「ねぇねぇ、おにいちゃん。かにさんもってもいい?」
「うん?いいけど・・・怪我しないように気をつけようね」
少し重いし、ハサミも危険だからそう言いながら渡す。アレルギーはなかったはずだし大丈夫だろう。そう思って渡すと重そうにしてからハサミの部分を開いて閉じてを繰り返して満足そうに頷いていた。
うん、今日もうちの娘は大変可愛らしいです。
「あ、明日はお祖父ちゃん来るけど大丈夫?」
「おじいちゃん?どっちの?」
「えっとね、お兄ちゃんの方のお祖父ちゃんだよ」
ちゃんと父さんをお祖父ちゃん認識してくれていたことにホッとする。忘れられてもおかしくないほどに久しぶりに会うからね。まあ、とはいえ数ヶ月程度だけど。それでも子供の中ではそれなりの時間だしね。
「この蟹もお祖父ちゃんからのものだから、明日会ったら一緒にお礼言おうね」
「はーい!」
うんうん、いい返事だ。本当に素直でいい子だ。まあ、俺と先生の娘だし当然だよね。と、そんな親バカな思考をするが、まあ、うちの娘が可愛いのは事実なので仕方ない。
そうしてひとまず蟹を冷蔵庫に閉まってから夕飯の準備までの間さっきの続きで千鶴ちゃんに文字の書き方を教えるのだが・・・思った以上に飲み込みが早くてびっくりだ。やっぱり要領がいいのだろう。




