289 お兄ちゃんおこ
おこです
「千鶴ちゃんお待たせーーー」
そう声をかけると同時に俺に飛びついてきた千鶴ちゃん。なんだかいつもと様子が違うので気になっていると、ふと顔をあげた千鶴ちゃんの目が泣き腫らしたように赤くなっているのがわかった。
「あ、千鶴ちゃんのお兄さん。あのですね・・・」
「・・・何かあったんですか?」
「えっとですね。実はさっきのことなんですが・・・」
先生から説明されたのは、いつも通り友達のレナちゃんと本を読んでいた千鶴ちゃんだったのだが、突然同じ組の男の子に絡まれて、レナちゃんとその男の子で喧嘩になったのを、千鶴ちゃんが涙を流しながら先生に報告したということだった。
幸い千鶴ちゃんには傷一つなく、レナちゃんとその男の子はちょっとのかすり傷がついただけで済んだそうだが・・・
「・・・その男の子はまだいますか?」
「ええ、向こうでお母さんと一緒にレナちゃんに謝ってますね」
そう言われたので、千鶴ちゃんを抱っこしてあやしながらそちらに行くとお母さんらしき人はレナちゃんママとレナちゃんに懸命に謝っており、男の子は不貞腐れてるという構図になっていた。
「あの、ちょっといいですか?」
俺がそう声をかけると、レナちゃんママはここ最近面識があったので頷いてくれて、男の子のお母さんの方は俺が抱えてる千鶴ちゃんを見てから顔を真っ青にして言った。
「す、すみませんでした。うちの息子がとんだご迷惑を・・・」
「いえ。少しだけその子に言いたいことがあったので・・・よろしいですか?」
そう聞くと頷いてくれたので、俺は不貞腐れてる男の子に目線を合わせると、ポンポンと頭に手を置いてから言った。
「寂しかったとしても、仲良くなりたかったとしても、女の子を傷つけるのはかっこ悪いよ。君が好きなサーレンジャーはそんな酷いことするかな?」
近くにあった男の子の持ち物からチョイスする。今やってる戦隊モノのやつだが、その言葉に男の子は少しだけ顔を下に向けて言った。
「・・・しない」
「だよね。男の子だったら、女の子を守れるようにしないと。それにね、いくら千鶴ちゃんやレナちゃんが可愛いからって、そんな風にしてたら2人から嫌われちゃうよ?お友達になりたいなら、ちゃんと言葉にすることいいね?」
「・・・わかった」
わりと素直に頷いたのを確認すると軽く頭をポンポンしてから、驚くお母さんと、感心するレナちゃんママ、あと謎の視線を向けてくるレナちゃんに微笑んでからその場を後にする。
本当はね、内心千鶴ちゃんを悲しませた男の子に激おこだったりするのだが・・・幸い怪我はないし、今回は穏やかに済ませる。これで傷物にされたら有無を言わさずに雷を落とすだろうが・・・命拾いしたな少年よ。
ちなみに千鶴ちゃんはといえば、さっきから俺に甘えるようにぎゅっと抱きついてきてるので、可愛いものだ。




