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「エルフだったとは……」
「何故、戻ってきた早々に残念な感じで出迎えられなければならないのでしょう」
十日後、四人が炎王に送られて戻ってきた。それも炎王は玄関の前に四人を置いてさっさと帰ってしまっていた。
きっと陽子に怒られる前に戻ったのだろう。
そして、玄関の扉を中から開けたのは、地下の居候と言っていい白髪の青年だ。とても残念な表情を浮かべてスーウェンを見ている。
「地下から出てくるなと言われていなかったのか?」
その横をグレイが疑問を口にしながら、通り過ぎていく。
「なぁ、シェリーの気配がないのだが?またあいつと何処かに行ったのか?」
グレイの背後では、オルクスがシュロスに向って突っかかっていた。
どうやら、屋敷内にはシェリーはいないらしい。
だからシュロスが、扉を開けて彼らを出迎えることになったのだろう。
「あ〜?なんだったか。狐の王様に呼ばれたと言っていたな。すぐに戻ってくるんじゃないのか?」
シェリーは、国王のイーリスクロムから招集されたらしい。恐らく、聖女お披露目パーティーの件だろう。
「それよりも、何故エルフは金髪碧眼じゃないんだ?」
シュロスからすれば、そんなことよりエルフの見た目が気になっているようだ。
「それは、何の意味があるのです?」
シュロスの質問の意図が測りきれないスーウェンは質問に質問を返す。
「うーん?意味はないかなぁ。それで、なんでなんだ?」
「強さを求められたからですね」
「ん?あ……あ〜そうか、属性の支配か。オーケ」
シュロスは納得したのか、地下へと降りる階段のほうに戻っていった。
本当にただ単にエルフ族のことが気になっていたらしい。
だが、この色の件はシェリーが言っていたはずなのだが。
スーウェンの深い青色の髪の色のことをだ。
「ヨーコはいるか」
そして、未だに玄関から中に入ってこないリオンが視線を巡らせながら、この屋敷の本当の門番と言っていい者に声をかける。
「陽子さんはとても忙しい。便利扱いしないでよね。全く成長できない鬼くん」
姿は見えないが、陽子の声だけが聞こえてきた。何が忙しいのかわからないが、何かをしているのだろう。
そして、軽々しく話かけないで欲しいと話を切り上げた。それもこの十日間いなかったが、何も成長できていないとまで付け加えてだ。
陽子はダンジョンマスターなので、相手のステータスを見ることができる。
だから、その言葉には嘘はないのだろう。
無駄だったと言っているのだ。
しかし、鬼族であれば訓練をつけてもらってたリリーナ以外に、鬼族最強と言っていいイゾラが今はいるのだ。
何も変わらなかったとは如何なものなのだろうか。
「やっぱり居ないから俺、シェリーのところに行ってくる」
いったん屋敷の中に入って行ったはずのオルクスが、リオンの前を通り過ぎて姿を消した。
駆けていったというより、その姿を消したのだ。
恐らく何度か使っている、雷の力を使った移動方法だろう。
制御ができていないようだったが、この感じだと上手くいっているようだ。
「私は地下に行きますので」
シュロスに絡まれていたスーウェンは、そのシュロスを追いかけるように地下に降りていく。
陣形術式の勉強が中途半端になっていたので、その続きを教えてもらうつもりなのだろう。
スーウェンは自分の未熟な部分を補おうと、番のシェリーに会いにいくよりも優先させたようだ。
そして、何か荷物をもって玄関を通り過ぎるグレイ。
「『鉄牙のマリア』のところに行ってくる」
グレイも外に出ることを告げいく。
同じ金狼族のところに出かけると。
そうするとリオンはどうしようかと考え、リオンは踵を返して玄関の扉を閉めたのだった。
そしてその一方シェリーといえば…
死んだ魚の目をして立っていた。
「こんな感じはどう?」
青い髪に長いうさぎの耳が生えたサリーがシェリーに向って尋ねる。
だが、その言葉にシェリーは反応を見せない。
「カイルさーん!入ってきてくれませんかぁ」
シェリーが何も反応を示さないので、サリーは代わりにカイルに意見を聞くつもりなのだろう。
「もう、いいのかな……」
入室の許可が出たので、カイルはシェリーがいる部屋の中に入ってきた。だが、シェリーの姿をみた瞬間、固まってしまう。
そして、足早にシェリーの側にいき、何も反応を見せないシェリーを抱え込んだ。
それもサリーを睨みつけながらだ。
「可愛すぎる」
「これでいいと解釈していいですか?」
「駄目だ」
「うーん?一応、これが一番露出度がない衣装なのですけど?」
そう、今何をしているのかと言えば、聖女のお披露目のための衣装の試着をしているところだった。
シェリーが、何を着ているのかといえば、真っ白なドレスだった。首元がレースに覆われ、胸元が滑らかな生地に覆われ、腰から下にふわりと広がるドレスだ。
サリーが言っているように、足元も靴の先しか見えず、腕も手袋をしているので、顔以外が布に覆われていると言っていい。
そう、頭部もベールに覆われているのだ。
「こんな可愛いシェリーを他人に見せるなんてありえない」
「困ったわ。シェリーちゃん。もう、これでいいって言ってくれないかしら?」
シェリーは何度も着替えさせられて、辟易しているのだ。そして、サリーといえば、カイルの番への執着に困っていたのだった。




