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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
28章 穢れと鬼

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「鬼切丸だ!」


 シュロスが自信満々で、ドクロがデザインに盛り込まれたグロテスクと言っていい幅広の刀を掲げていた。

 恐らく何かのゲームの武器なのだろう。どうみても使い勝手が良いように見えない。


 それを鬼族であるイゾラに差し出している。


 鬼であるイゾラに鬼を切る武器を渡すという神経の無さに、シェリーはため息を吐く。

 そのため息に被さるように、この世の終わりという雰囲気をまとった者からもため息が吐き出された。


 モルテ王である。


 アイラの悲鳴が聞こえていたことから予想はできていた。そう、アイラがモルテ王を拒否しているのは、力云々という問題だけではなかったのだ。


「どうにかならないのか?」


 モルテ王はシェリーに視線を向けて尋ねるも、その質問をシェリーにするのが間違いだと気がついていない。


「それこそ神頼みでもすればいいのではないのですか?まぁ、神の尺度で物事を判断するので、言葉には気をつけたほうがいいですね」


 その失敗例が嬉々として刀の説明をしているが、イゾラには全く以て理解されていないようだ。


「なんで武器に吸い取られるってことになるんだ?」

「だから言っただろう。これが食うんだって!」

「炎王。それ回収しておいてください」


 近くにいる炎王に、シェリーは怪しい刀を回収するように言った。何を食べるのかまでは聞き取れなかったが、その時点で碌でもない武器で間違いはない。


「ああ!鬼切丸が!」


 炎王がイゾラが手にしている刀を謎の空間にしまった。それを見て嘆くシュロス。


「シュロスさん。大人しく座っていてください。モルテ王。最初に言っていたアイラさんと同じ時を生きる案を代わりにお教えするでよろしいでしょうか?」


 そのうち時が解決してくれるであろうという、適当な妥協案だ。しかし、この件は話し合いが始まる前にシェリーが教えると言ったことなので、代わりという言葉を使うのもおかしなものだ。


 いや、それで手を打たせようとしているのだろう。


「それはなんだ?」

「死の神モルテ様がナディア様の名を叫んでいたように、ラース国を守護するナディア様であれば、それが可能です」


 シェリーは堂々と、天地がひっくり返っても起こり得ないことを口にした。

 女神ナディアはラースと己の子のためにだけ、力を使っている。


 それ以外の者がどうなろうと、ナディアにとってどうでもいいことなのだ。


 だが、シェリーはナディアの名をだしたのだ。

 これは誰に聞いてもありえないと答えるはず。いくらシェリーの頼みでも、ラースの血が全く入っていない者のために力を奮うことはないだろう。


「それはいくら何でも無理だ」


 それはもちろんモルテ王も否定的だった。


「そうですね。しかしナディア様は、白き神を嫌っているのです」


 女神ナディアが白き神を嫌う元凶は勿論シュロスだ。

 だからといって、女神ナディアがモルテ王の願いを叶える理由にはならない。


「アイラさんはご自分の行いによって白き神から否定されてしまいました。なのでナディア様が手を差し伸べる可能性があります」


 シェリーはそういうも、所詮可能性だ。

 絶対ではない。


「しかし私自身も女神ナディアから否定的だろう?」

「モルテ王は一時的な滞在を許されたので、まだ大丈夫です」


 シェリーは誰かと比べて大丈夫だと口にする。そう、ナディアからはシュロスは絶対に連れてこないようにと言われているのだ。


「ただ今すぐは、ナディア様が応えてくださらないと思うので、モルテ様が連れてきた時に願ってみると良いでしょう」


 女神ナディアの性格からいけば、シェリーがナディアの名をだしたぐらいに姿を現すのだが、今日はそのような気配すらない。


 そしてシェリーは死の神モルテがナディアをモルテ王の前に連れてくると確信していた。


 いや、そもそも死の神モルテの失策なので、己で尻拭いするだろうと言うことだ。


「それで本題の詰めに入っていいですか」

「仲裁はラフテリアという件だな」

「はぁ、それ上手くいく気が全くありません」


 モルテ王は何が何でもラフテリアを表舞台に出したいようだ。


「俺の方が攻撃されるとかないよな」


 ラフテリアにどこかヴィーネと似た何かを感じている炎王は、モルテ王の言葉に不安を駆り立てられているようだ。

 ヴィーネの扱いの難しさが身に染み込んでいる分、炎王の立場の危険性も感じているのだ。


 そしてそのラフテリアはというと、この世界で作られてはいないケーキを口にして、とても機嫌がいい。

 そう、いつも騒がしいラフテリアが大人しくケーキの美味しさを堪能していたのだった。




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