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しかし、MPが足りない。~ 記憶持ちのリグノ君の地獄ハーレム ~  作者: 土家右玉
青髪の少女

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異変

『さてと』

自室に帰ってきた。さっきのやり取りで、かなり精神を削られた。


机の上には二冊の魔法書。

これを読み込まないといけない。魔法の習得には自信がある。五日あれば十分だろう。いや、長く見積もって五日だ。ヴィアの妹の呪いがそれより早く完成する可能性もある。急がないと。


解呪の呪文は“アンチカース”。

ただし前提として、“カース”を含めた四つの魔法を習得している必要がある。俺はそのうち三つは既に覚えている。つまり残る“カース”さえ覚えれば、“アンチカース”習得の条件が整う。


この魔法を覚えた時点で、冒険者としては終わりだ。ランク査定ではステータスと魔法欄をギルドに提示する必要がある。覚えてはいけない魔法を覚えていれば、それだけでギルドは追放。テミス教からは、良くて破門、悪ければ命を狙われる。


 腹をくくり"カース"の魔法書を開く。これを何回も通読(つうどく)する事で、魔法を取得できる。


『・・・・』


1回目の通読が終わった。だいたい30分。"パタリ"と裏表紙を閉じる。


『パンパカパーーーーーン!!!』

頭の中でファンファーレがなった、何回も聞いた音。


『え?あれ?』

まさか、もう覚えた?ステータスを確認する。


覚えた魔法欄が1つ増えて215個になっている。タップして確認すると、"カース"が追加されていた。


たまたま、簡単な魔法だったのかな?1回で覚えれたのは初めてだ。まあ、ともあれ残るは"アンチカース"だけだ。


『これも一回で覚えるなんてこと、ないよな・・・?』

とりあえず、アンチカースの魔法書をパラパラと流し読みをする。


『パンパカパーーーーーン!!!』

またファンファーレ。


『え?え?』

覚えた魔法欄が更に1つ増えて216個になっている。タップして確認すると、"アンチカース"が追加されていた。今度は三分。まともに読んですらいないのに。


『どういうこと?』


魔法欄を見ながら考える。こんな簡単ならヴィアが覚えた方が早かったんじゃ?いや、でも前提となる他の三つの魔法はそれなりに時間がかかったし。


『う~~ん』


考えても分からない。分かったのはこれで冒険者リグノは終わったという事だ。随分(ずいぶん)あっさりだったが、不思議と後悔はなかった。まあ、洞窟潜(もぐ)っても稼げてなかったしな。辞める決心がついてありがたいぐらいだ。


時間は夜半前、さっきマリ姉(ねぇ)の部屋に集合してから、1時間も経過(た)っていない。


『今日はもう寝るか?』


体も脳もやたら疲れている。洞窟から帰って気絶していたせいで、まだ回復しきっていない気がする。さすがにヴィアの妹の呪いが今日 完成するという事もないだろう。


・・・いや、でもこういうのって、余裕見せると結局、後でドタバタするような気もする。

かといって、早すぎると意気込みすぎだと思われるかもしれない。


『報告だけしとくか』


それが一番無難な気がする。そう思い立ち、ヴィアの部屋の前のドアをノックする。


"コンコン"


返事がない。


"コンコン"


返事がない。マリ姉(ねぇ)の部屋かな。


マリ姉の部屋の前に来たらボソボソと話し声が聞こえてきた。やっぱりここか。あれから話し込んでたのかな?


「・・・リグノの・・。」


ノックしようとした手が止まる。

俺の名前が聞こえた。


「リグノが・・。」


「・・・」

なんの話だろう?あの二人が陰口を言うとは思えないが・・・。気になってしまい、つい聞き耳を立てる。


「具体的に・・・・“しなしなの水袋”が通常の状・・。」

少し聞き取りづらいが、マリ姉の声だ。


「ふにゃふにゃ・・。」

ヴィアの声もする。


「それで、本気の・・、この丸棒で・・こうなる・・。」


「え・・・硬く・・の?」


「そうよ、リグノの・・ちょうど・・だったかしら。」


「痛・・・。」


「意外と・・人の・・平気なのよ。」


「出来る・・かな。」


「・・十分に・・雰囲気を・・。」


「・・自然と・・そうな・・。」


「体の力を・・、小さいリグノを迎える気・・。」


「・・小さいリグノ・・。」


「不思議・・かわいいと・・でしょ。」


「なんとなく・・った。」


「・・にね女の子も楽しんで・・・。体だけで・・、心を擦(す)りつけるの・・。」


「セッ・・が楽し・・一緒に・・。」


『猥談かよ!!』

思わず心の中で叫んだ。何を話してんだマリ姉。いや、聞き入った俺も俺だが、これは男の性(さが)だ。でもよく考えると重要か?重要な事なのか?


それにしたって、これ以上俺の名前が出てくるのは耐えられない。しかも、隣の部屋にはリナが寝ていたはずだ。


「だからね、女・・。」


『これ以上は無理』

ドアの前で軽く咳(せき)払いし、俺は勢いよくノックした。


中で"ガタン"と大きい音がし、少ししてから扉が開く。


「あら、リグノ?忘れ物でもした?」

マリ姉が顔を出す。いつも通りの表情だ。奥のイスにはヴィアが座っている。


「ちょっと話があって」

俺も平静を装(よそお)って返す。何があっても知らない振り。それが大人の対応。報告してとっとと帰ろう。


「あら、やっぱりヴィアちゃんとしたくなったのかしら?」


「違う!!」

いや、違わないのかもしれないが、今は違う。


「"アンチカース"を覚えたから、報告だけしとこうと思って。」


「えっ。」

「もう。」

マリ姉とヴィアが同時に声を出す。そりゃ驚くよね。さっき別れたばかりだし。


ヴィアが近づいてきたのでカードを見せる。"アンチカース"の文字がしっかり表示されている。


「まあまあ、やっぱり乗り気じゃない。」

マリ姉が茶化す。


『ぐっ』

この人はもう放っておこう。人の気も知らないで。


「意外に簡単な魔法だったみたい。」


「リグノ」

ヴィアが手をギュッと握り込んできた。少し痛い。


「きちんと気持ちよくなるよう頑張るから。」

次は自分の番だとばかりに真っすぐ見つめてくる。頬(ほお)が赤い。美人にこんなふうに迫られて、悪い気はしない。


それにしても、ヴィアの雰囲気が変わった気が、いつもの無表情なのは変わらないけど。内側の温度が高いそんな感じだ。マリ姉の性教育?のせいで決心が固まったのかもしれない。


『うん、やばいよね』

洞窟で死にかけ、体と頭はヘトヘト、美人から迫られる。脳内に明鏡止水を描(えが)く。


「・・いや、・・そんなに急がなくてもいいんじゃないかな。」

喉が詰まって言葉が滑らない、声がわずかに上ずった。ヴィアからいい匂いがする。


「ちっちゃいリグノ・・。」

ヴィアが視線を下に落とす。


『ちっちゃくないよ。こんにちわ』

言うてる場合か。自分でツッコむ。そして、引っ込め。

鏡は濁り、湖は荒波になろうとしています。明鏡止水さん仕事をして。


「あらあら、体は正直ね。」

マリ姉にも見られた。自分死んでもいいですか?


「じゃあ、準備をしないと、リグノの部屋でいいかしら。」


いや、流石(さすが)にこの宿はないだろう。きちんと雰囲気を作って高級な宿で、ヴィアの心の傷を薄める為にも。あと、そろそろ、手を放して欲しいんだけど。


一旦撤退しようとカードを袋に戻そうとした時、冒険者カードの表記が変わっていることに気がづいた。

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