↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
しかし、MPが足りない。~ 記憶持ちのリグノ君の地獄ハーレム ~  作者: 土家右玉
青髪の少女

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/23

サンドイッチ

ヴィアの横で、俺はベッドに仰向けになり、天井を見つめていた。横でヴィアが身じろぎをした。


『どうしてこんなことに』

そんな言葉が胸の奥で渦巻く。


あの後の出来事をざっくりまとめると、こうだ。マリ姉(ねぇ)の部屋から帰ろうとした瞬間、俺の冒険者カードの魔力欄が変化していた。


/////////////////////////////////////////////

魔力:3/15(3x5)

/////////////////////////////////////////////


MPの最大値が、まさかの五倍。


当然、ヴィアのスキルが元に戻ったのかと思ったが、カードには相変わらず「異性には効果がない」の文字が残っていた。


意味が分からない。でも「これで全部うまくいくのでは?」と期待して、マジックポーションを飲んだがMPは回復しない。


『あれ?』

首をひねり三人で悩み、色々試し、話した結果、MPの自然回復を待ってみようという事になった。


で、冒頭に戻る。


俺の左側にはヴィアが寝ている。左手首には麻紐が結ばれ、ヴィアの右手首と繋がっている。長さは1mほど。どうやらこれでも接触判定になりスキル効果が発動するらしい。


そして、俺の右側にはマリ姉(ねぇ)が寝ていた。


『なんなんですか!これは一体!』

叫びたい。心の底から叫びたい。


『拷問か?』

"やわらかな拷問"。なんか、そんな小説ありそうだな。精神年齢はそこそこ大人でも、身体は健全な16歳。死線をくぐった直後でもある。いや・・・考えるのはやめよう。


しかしこの二人、よく寝れるな。一応、俺、男なんだけど?あ、男判定されてない?だからヴィアのスキルが効くのか?


「ふぁ・・」

左のヴィアが微妙に体を寄せてくる。胸が二の腕にあたる。控え目だが、存在感はある。


「んぅん・・」

右側でマリ姉(ねぇ)が動く。妙に色っぽい。こちらもあたる。装甲は言わずもがな。


「だっ・・だ・・」

ヴィアの頭が肩に触れ、さらりと髪が頬を撫でる。


「むぅ・・」

マリ姉はさらに密着してくる。ほぼ抱きつかれている。

ちょっ、膝(ひざ)を中央に寄せるな。当たるだろうが。これ以上の領土侵犯は戦争行為とみなします。誠に遺憾です。いかんですよ。大本営が発表するぞ。


『リナ騒がないかな?そうすれば、一人からは解放されるんだけど。』


そもそも、なぜマリ姉までここにいるのか?意味がないわけではない。ヴィアと二人きりになれば妙な雰囲気になって、俺の野獣が解放され、ヴィアの男嫌いが悪化し、全てが台無しになる可能性がある。


マリ姉は防波堤だ。・・・でも隣で寝る必要はないと思う。


そんなふうにして二日が過ぎた。えっ、大事なところが抜けてる?本当に何もない。

夜は二人にサンドイッチのように挟まれ、サンドバッグにされる天国(じごく)が続いただけだ。


昼は紐で繋がれたまま外に出られないので、ヴィアの妹レードの様子を見たり、ヴィアと話したりして過ごした。と言っても、ヴィアは無口だから、俺が一方的に喋るだけだ。


御伽噺や前世で読んだ本の話を延々と語る俺を、ヴィアは黙って聞いていた。「うるさいな、この人」くらい思われていたかもしれない。でも、黙って向き合うには間が持たない。マリ姉は昼は仕事とリナの世話で不在だし、二人きりの時のヴィアは、こちらを見ようともしない。警戒しているのは分かるけど。


ちなみにMPは予想通り自然回復が効き、二日目の朝にはアンチカースを唱えられる“7”まで回復した。


/////////////////////////////////////////////

魔力:7/15(3x5)

/////////////////////////////////////////////


今なら、唱えれなかったあんな魔法やこんな魔法も唱えれるんだろうな。少しだけ、気持ちが昂(たかぶ)る。


-------------------------------


三人でヴィアの部屋にやってきた。ヴィアの妹のレードが寝かされている。


ヴィアもマリ姉(ねぇ)も緊張しているのが分かる。俺も緊張している。これで本当にうまくいくのかという思いもある。呪いの完成までにはまだ、時間はありそうだが、失敗すれば次のMP回復までの猶予(ゆうよ)が在るかと言えば微妙だ。それに、俺自身も色々な意味で限界が近いです。


ベッドの横に立つ。ヴィアと繋(つな)がっている間、何度かこの部屋に来たが、レードは一度も目を覚まさなかった。黒い文字のような紋が体中を覆い、やせ細った体からは腐れ木を焼いたような濁った匂いが漂う。ひどい不快感。


呪いは周りをも不幸にしながら。絶望(し)に向かって進行する。そんな、言葉を思い出した。


ヴィアの話では、呪いを受ける前のレードは快活な娘だったらしい。その気持ちを思うと、いたたまれなくなる。この娘は、どんな思いで妹を見守っていたのだろう。


「はじめます。」

俺が一息ついて、言った。儀式めいた感じにはしたくなかった。あっさりでいい。この後も当たり前の日常が続くのだから。ヴィアがコクリと頷(うなづ)いたのを確認してから。俺は詠唱を始めた。無詠唱でもいけるが、万が一にも失敗はできないからな。


「我願う。清き光、清浄の精霊の加護を受く。土は土に帰し、火は火に帰し、水は水に帰し、木は木に帰し、金は金に帰す。我誓う。永遠の忠誠、精霊の御霊。我願う。正常なる清浄。血は血に帰し、皮は皮に帰し、骨は骨に帰し、肉は肉に帰し、魂は魂に帰す。我望む。回転の理、赤き黒の打破。大いなる磁心をもって天恵を垂れ給え。アンチカース!!!」


メイスから放たれた光がレードを包み込み、やがて静かに収まる。黒い紋様は跡形もなく消えていた。


「成功?」

ヴィアが問う。すこし声が震えていた。


「たぶん。」

俺が答える。苦労した割には一瞬だけど、所詮(しょせん)は一つの魔法に過ぎない。回復魔法だって発動は一瞬だ。基本は変わらない。


「レード」

ヴィアが呼びかける。


「レード」

ヴィアが再び呼びかける。


「ん、ん・・・」

レードが目を開ける。


「レードっ!」

ヴィアがレードに抱きつく。


「お、お姉ちゃん。って、黒いのがなくなってる。体も痛くない。」

レードが自分の体を見ながらキョロキョロする。ずっと寝ていたから記憶がワープした感じなのかな、状況が掴(つか)めないのだろう。


「・・良かった。」


「・・・・」


「・・・・」


「・・・・」


しばらく二人は抱き合ったまま動かない。その姿を横目に、俺とマリ姉はそっと部屋を出る。これ以上いるのは野暮(やぼ)だ。


「なんか、やたら疲れた。」

安心したら、軽口が漏れた。早く眠りたい。


「またお姉ちゃんと、一緒に寝る?」

マリ姉も軽口で返す。


「素敵な提案だけど、それは、寝れそうにないから止めておく。」


「あらっ、振られちゃったのかしら。」


そんな事はない。マリ姉(ねぇ)はいつも魅力的だ。


「おやすみ、マリ姉」

さすがに色々とこれ以上は無理だ。


「おやすみ、リグノ」


そうして俺は、三日ぶりに自分の部屋のベッドへ向かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。