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しかし、MPが足りない。~ 記憶持ちのリグノ君の地獄ハーレム ~  作者: 土家右玉
青髪の少女

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19/23

宣告

目が覚めると、いつもの安宿のベッドに寝かされていた。

洞窟狼(ケイブウルフ)に襲われ、自力で脱出ポータルまで逃げ帰ったところまでは覚えている。


右腕と左脚の痛みは消えていた。洞窟の守衛が傷だらけの俺を見て「ヒール」をかけてくれたのだろう。ただではない。後できっちり回復料金は請求されるはずだ。それでもありがたいことに代わりは無い。


起き上がろうとした瞬間、腹のあたりが重い。


『あれ?』


首だけ動かして確認すると、人が寄りかかっていた。ヴィアだ。頭部が青いまりもみたいだな。


俺の動きを感じたのか、ヴィアは目を覚まし、視線が合うとそのまま立ち上がって部屋を出ていった。


『なんだったんだ・・・』


不思議に思っていると、ヴィアが戻ってきた。後ろにはマリ姉(ねぇ)がいる。いつもの糸目で、表情が読めない。怒られるのだろうか。怒られるのはまだいい。泣かれるのはきつい。


「リグノ・・・」


マリ姉が静かに名前を呼ぶ。


「飲みなさい」

木のコップを渡される。中身はただの水だろう。よく喉が渇いていると分かったなと思いながら、素直に飲む。


「ありがとう、お姉ちゃん」

とびっきりの笑顔で返す。これで誤魔化されないかな、という淡い期待を込めて。


「リグノ・・・」

再び名前を呼ばれる。真顔のままだ。やっぱり通じないか。


怪我はもう大丈夫?」


「うん」


頷(うなづ)きながら右腕を上げる。


「そう。まったく無茶をして」


マリ姉が俺の頬(ほほ)を両手でつかみ、ムニムニする。


「いひゃい」

抗議しても止めてくれない。


「お姉ちゃんと約束したわよね。無茶しないって」


「約束した」


「でもリグノは無茶をした。私との約束なんてどうでもいいと思ったの?」


「そ・・・」


そんなことはないと言おうとして、口をつぐむ。代わりに出たのは別の言葉だった。


「ごめんなさい」


「うん、分かってるならいいわ」


やっと頬が解放された、と思ったら、急に抱きつかれた。


「よかった・・・無事で・・・」

泣かれた。心がズキリとする。


マリ姉が落ち着くまで十分近くかかった。ここまで心配してくれる人がいることを喜ぶべきなのだろう。実際、死んでいてもおかしくなかった。むしろ生き残れた方が運が良かった。


「あ、そうだ」


洞窟外に脱出する前、ポータルを塞いでいた邪魔なスライムを薙(な)ぎ払ったらレベルアップした。余裕がなくてステータスを確認できていなかった。


冒険者カードを取り出す。MPが7まで増えていればヴィアの妹を助けられる。

まずレベルを見る。"11"の表示。問題なく上がっている。問題はMPだ。


意を決して表示を確認する。


/////////////////////////////////////////////

アルト(16) 男

レベル:11


魔力:3/3

ちから:26

かしこさ:9999+

きようさ:34

―  魔法 214  ―

/////////////////////////////////////////////


魔力(MP)は”3”のまま。


『ダメだったか』


ちからときようさが少し上がっただけ。

いや、元々期待値は低かった。1レベルで最大MPが"4"も上がるなんて、才能のある冒険者でも滅多にない。


呆然とする俺を見て、マリ姉が慰(なぐさ)めてくれる。でも、いっそ罵(ののし)られた方が気が楽だ。


無能のリグノは、結局どこまでいっても無能なのだ。


「これも無駄になったわね。でも、その方が良かったのかしら」

マリ姉が二冊の本を取り出す。


「カース」と「アンチカース」を習得するための魔法書だ。たぶん教会から強引に借りたのだろう。入手には苦労したはずだ。申し訳ない気分になる。


全てがうまくいかない。全てが空回りする。木のコップをギュッと握りしめる。前世で読んだ小説の主人公のような転生者なら、こんな問題あっという間に解決できたのだろう。だが、俺にはその力はない。


「・・・」


「ヴィアちゃんにも謝らないと」


「作戦の事言ったの?」


「言ったわ」


無駄に期待させて傷つけるだけだろう。


「なんで・・・」

糾弾しそうになったが思い留まる。マリ姉は意味もなく人を傷つけるようなことはしない。


「リグノが洞窟に行ってから三日くらいかしら。ヴィアちゃんの生活が荒れだしたの」


「荒れだした?」


「暴れるとかじゃないのだけど、食事や水をあまり取ってなさそうで。呪いのことを聞いた途端、リグノがいなくなったでしょう?裏切られたと思ったんじゃないかしら。」


ああ、ヴィアの視点からはそう見えたのか。


「マリ姉の勘違いじゃないの?」


妹の状態を考えれば、情緒が不安定になっても仕方ない。ヴィアがそこまで俺を意識していたとは思えない。


「ううん。なんとなくだけどね、分かるの。妹が呪われてからずっと一人で耐えてきたのでしょう。表には出さないけど、誰かを頼りたいって思っていても不思議じゃないわ。」


「それで、言ったのか」


マリ姉なりに考えた末の結論なのだろう。なら俺に文句を言う資格はない。心配をかけたのは俺も同じだ。この人が一番苦しいのかもしれない。


「それに、ヴィアちゃんがね、洞窟の入り口で倒れていたリグノを運んでくれたのよ」


「ヴィアが?」


「話を聞いたあとね。妹の面倒を見ているとき以外は、ずっと洞窟の入り口に張り付いていたみたい。肩と脚の傷もヴィアちゃんが治療したのよ。随分心配してたみたい。」


あまり想像できない。それにしてもヴィアは回復魔法も使えるのか。若いしステータスの伸びも良い。将来は名のある冒険者になるのだろう。


「ヴィアちゃん、多分ね、感情の発散がすごく下手なの。言葉で自分の気持ちを伝えるのも。だから極端な方向に行ってしまう」


マリ姉(ねぇ)の言いたいことは分かる。本当に苦しい時、泣いたり笑ったり怒ったりしない。無表情、無気力になる。そういうタイプなのかもしれない。


「ヴィアの妹の様子は?」

マリ姉は首をふるふると振った。


「終呪紋(しゅうじゅもん)が現れたわ。もって後、五日。」


それは、死刑宣告に近いだろう。

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