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しかし、MPが足りない。~ 記憶持ちのリグノ君の地獄ハーレム ~  作者: 土家右玉
青髪の少女

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呪い

『呪い、か』

心の中で俺はつぶやく。


“呪い”というのは、死に向かう病でもあり、魔法でもある。対象に“カース”という魔法を掛けることで成立する。成功率は高くないし、条件も面倒だ。さらに、呪っている間は利子のように魔力を吸われ続ける。そして、この魔法は少し特殊な扱いをされている。


呪いを解く方法はいくつかある。

1.アンチカースという魔法で解呪する

2.呪いをかけた術者を殺す

3.他人に呪いを移す

4.呪われた対象が死ぬ


魔法で解呪できるなら簡単だと思うかもしれない。だが、アンチカースはテミス教の教会専用魔法で、教会専属の魔法師しか使ってはならないとされている。つまり、呪いを解くには教会に依頼するしかない。


ヴィアが「十億セルス必要」と言ったのは、妹の呪いを解くために教会から提示された“お布施(・・・)”の額なのだろう。


魔法一回唱えるのに十億セルスなんて馬鹿げている。だが、日本でも高額医療費が払えずに死んでいく人間は大量にいた。もっと貧しい国なら、数百円の注射代が払えずに死ぬ。


アンチカースは習得に長い年月を要し、解呪者の能力が低いと呪いが跳ね返るリスクもある。技術の安売りはしない。十億と言われれば、納得するしかない。


まあ、本当のところは教会の権威を保つための一つの手段なのだろう。くだらない。


俺はカースもアンチカースも覚えていない。そもそも呪いは完成に時間がかかるし、これは“人”が“人”へ掛ける魔法だ。モンスター相手の冒険者には無縁だ。もちろん教会専用だから覚えてはいけないというのもある。


ヴィアの妹がなぜ呪われたのかは分からないが、多分伝染されたのだろう。派閥争いで他の貴族を呪う、政争で他国の要人を呪う。上ではよくある話だ。だけど、これ、無意味なんだよな。

貴族や要人からすれば十億セルスは払えない額ではない。金がなくても、ヴィアの妹のような都合のいい平民をさらって呪い写しをすればいい。


要は単なる上同士の嫌がらせだ。巻き込まれる平民はたまったものじゃない。教会がお布施欲しさに貴族を呪っているなんて噂もあるくらいだ。


「呪いはあとどのくらいで完成するの?」

ヴィアが妹の様子を見に行くと言って立ち去った後、俺はマリ姉に尋ねた。自分で聞いていて残酷な質問だと思う。


「二週間はまだ持つと思う」


マリ姉も色々調べたのだろう。

二週間・・・それ以上は、いつ死んでもおかしくないということだ。存外、時間がない。


ヴィアもマリ姉も、心の底では諦めているのかもしれない。さっきマリ姉は俺に「ヴィアを支えてほしい」と言った。“助けてほしい”ではなく、“支えてほしい”。それはつまり、妹が亡くなった後のことを指している。


現実的だ。

全てを見届けた上で、ヴィアがやけを起こさないように見守る。それだけのことだ。だが、それでいいのかという思いもある。


頭の中に、恐ろしく細いが、一つの構想が浮かんだ。


問題は二つある。


一つ目は、俺がアンチカースを覚えていないこと。だが、俺の“かしこさ”なら、二週間あれば習得できる。自信はある。魔法書さえ手に入れば、なんとかなる算段は強い。


問題は二つ目だ。冒険者カードを見る。


魔力量(MP):3/3


MPが足りない。


アンチカースはMPを“7”消費する。

MPが“3”しかない俺では、逆立ちしても唱えられない。


しかし、それは“今の段階”での話だ。レベルが上がればMPが増える可能性はある。洞窟に籠れば、二週間以内に次のレベルに到達できるかもしれない。


二週間以内にレベルを上げ、最大MPを増やす。そして"アンチカース"を覚え、ヴィアの妹を解呪する。


絶望的なほど薄い。以前ヴィアのことを「想定が甘い」と言ったが、俺も似たようなものだな。


「マリ姉、お願いがある。」

後悔はしたくない。

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