↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
しかし、MPが足りない。~ 記憶持ちのリグノ君の地獄ハーレム ~  作者: 土家右玉
青髪の少女

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

15/23

妹

宿屋へ向かう道を、ヴィアと並んで歩く。いや、正確には、ヴィアの後ろを俺がトコトコついていく形だ。


事件の後、詐欺師どもを衛兵に引き渡し、事情聴取まで終えた頃には夕方を過ぎていた。さすがに今からダンジョンに潜る気力はない。ヴィアも同じだろう。


ヴィアがちらりとこちらを見る。何ついて来てんだコイツ?みたいな感じだな。俺の宿もこっちなんだよ。


「なんで金が必要なんだ?」

それも十億セルスなんて・・・後ろからなんとなく声をかける。


「・・・男嫌い」

ヴィアがチラリとこちらを振り返りながら言う。質問への答えにはなっていない。だが会話を拒絶する事への答えにはなっている。


「いいけどさ」

多少は打ち解けたと思ったんだけどな。


「騙(だま)す事しか考えてない。」

ヴィアが付け足すように言った。今日の事なのか、それとも別の事なのか。


宿に着くと、マリ姉が俺たちを見て微笑(ほほえ)んだ。


「あら、おかえりなさい。珍しい組み合わせね。」


「ただいま」

「ただいま、マリ姉(ね)ぇ」

それぞれ挨拶を返す。


「マリアーナさん、妹の様子は?」

ヴィアが尋ねる。


「・・・いつも通りよ。」

マリ姉が答えた。


「妹?」

俺が反応すると、マリ姉はヴィアの方を見た。言っていいか確認しているのだろう。


「どうでもいい。」

ヴィアが投げやりに言う。

「知っても知らなくても意味がない。」


つまり、関係ないからすっこんでろ!そういうことだ。


「・・・・」


「リグノ、それからヴィアちゃん。たまには、お姉ちゃんのお茶に付き合ってくれないかしら」

マリ姉が、短い沈黙の後、手を打ちながら言った。


「なんで・・」

「遠慮する。」


「あら、いいのかしら?リグノにもヴィアちゃんにも色々便宜を図ってるんだけど。お姉ちゃんは非常に悲しい。私なんてもういらないって事ね。ああ、残念、無念」

“よよよ”と、わざとらしく泣き真似をする。面倒くさい。


--------------------------


結局、脅迫に屈した俺たちはマリ姉の部屋に入った。そういえばここに入るのは初めてだ。


壁に恐ろしい悪魔の面が飾ってあるとか、床に人骨が転がっているとか、そんなことはなく普通の部屋だ。リナは隣で寝ているらしい。後でほっぺをプニプニしておこう。


「何があったのかしら?」

マリ姉がお茶を置きながら聞く。


「別に。詐欺に遭いそうだったのを助けただけだよ。」


「詐欺?」

俺は事情を説明した。


「ふーん。それで、なんでこんな険悪な雰囲気になるのかしら?」

それはこっちが聞きたい。助けたつもりなんだが、ヴィアは“頼んでない”と言いそうだけど。


「まぁいいわ。ところでリグノは、どこまで知ってるのかしら?」


「金が必要ってことだけ」

短く答える。


「そう」


「ヴィアちゃん、リグノに話してもいいかしら?」


「話しても意味がない。でも、マリアーナさんが話したいなら話せばいい。隠しているつもりもない。」

ヴィアが口を開く。


「本当にそう思ってるのかしら?」


「・・・」


「どうでもいいと思ってるなら、どうしてリグノの前で“妹の様子”なんて聞いたのかしら?」

マリ姉、容赦ない。


「本当は知ってほしかったのでしょう?」


「違う。全部どうでもいいと思ったから・・・だから。・・・聖水も無駄。全部どうでもいい。どうせ全部無駄になる。全部面倒くさい。」

ヴィアの心の奥が少しだけ見えた。真顔なのに泣いているように見える。何かに耐えている。だから周りを見る余裕がなく、刺々(とげとげ)しい態度になる。


破滅願望を抱きつつ。でも、どこかで助けてほしいとも思っている。そんな矛盾を抱えた感情。


「はぁ、まあいいわ。リグノはどうなのかしら、知りたいのかしら?」

マリ姉(ねぇ)が俺に聞く。本当(・・)に知りたいのか、という質問だろう。


「教えて欲しい。」

俺ははっきりと言った。単なる野次馬根性ではない。知っても何もできないかもしれない。でも何も知らずにすべてが終わるよりも、知って終わる方が良いと思った。偽善だろう。


ヴィアがチラリとこちらを見た。


この眼を見るたびに、前世の記憶がフラッシュバックする。ヴィアは自分の娘ではない。重ねるのは間違っている。だけど・・・これは前世の俺が忘れて来た宿題なのかもしれない。本当にそう考えている。


「私はね、本当はリグノにはあまり関わって欲しくないと思っているの。リグノがヴィアちゃんを心配しているように、私はリグノを心配している。」


「マリ姉(ねぇ)・・・」

姉が弟を心配するような感じなのだろうか?


「でも、リグノなら、ヴィアちゃんの支えになれるんじゃないかとも思っている。」


「・・・」


「だから、これは私の我儘です」


マリ姉は一呼吸置いて言った。


「ヴィアちゃんの妹ね。“呪われている”の」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。