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しかし、MPが足りない。~ 記憶持ちのリグノ君の地獄ハーレム ~  作者: 土家右玉
青髪の少女

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12/23

娘

とぼとぼと宿への帰り道を歩く。ヴィアは、あの後また歓楽街に戻ったのだろうか。


歩きながら、前世のことを思い出す。俺はまじめなサラリーマンだった。妻と娘が一人いて、人生は三十代後半までは順調だった。


だが四十代から雲行きが怪しくなる。妻が若い男と浮気し、大喧嘩の末に離婚。娘も妻の方に付いていった。


離婚後、元妻は浮気相手とは結局結婚せず、俺は馬鹿高い養育費を払いながら、当たり障りのない近況報告を受け続けていた。そこには毎度毎度、平穏な日常が丁寧に書かれていた。


仕事では、上司がパワハラで退職。その派閥に属していたと思われた俺もとばっちりを受けて仕事を外される。派閥なんて意識したこともないのに。


社内政治に負け、出世競争に負けた中年男の末路は悲惨だ。降職こそなかったものの、部下一人の閑職に回され、与えられる仕事は午前中に終わるような、やってもやらなくても誰も困らない雑務ばかり。年下の部下には舐められ、上司からは疎まれ、仲の良かった同僚からも距離を置かれた。


それでも仕事を続けたのは、生活と娘のためだ。仕送りを続ける必要があった。あの頃の生きる楽しみといえば、年に数回の面会で娘の成長を見られることくらいだった。


そんな日々が十年ほど続いたある日、偶然、元妻の悪い噂を耳にした。気は引けたが、確認のため探偵事務所に依頼した。嫌な予感がしていた、噂が間違いであってほしかった。


届いた調査結果は、俺を失望、いや、絶望させるには十分だった。


元妻が送ってきた近況報告のような平穏な日常はなかった。実際はカルト宗教にハマり、浮気相手とは別のろくでもない男と同居。生活費や養育費のほとんどをお布施とギャンブルにつぎ込む。娘は大学まで進んだが、借金返済のために水商売に手を出し、その手のビデオにも出演。大学も中退していた。


そして、俺はその事実を知った直後に死んだのだろう。その後の記憶がない。今でもその時の事を思い出すと胸を掻きむしりたくなる。五十歳の誕生日の日だった。


何が悪かったのかも分からない。そんな仕打ちを受けるようなことをした覚えはない。でも人生なんてそんなものかもしれない。不真面目に生きても幸せになることもあるし、まじめに生きても不幸になることもある。ただの事象だ。


・・・・・ヴィアの姿は妙に前世の娘と妙に重なる。容姿は似ていない、だが持っている雰囲気とあの瞳が似ている。だからこんな事を思い出すのだろう。記憶がチリチリと脳を焼く。


「あら、おかえりなさい。早いわね。」


「ただいま」

冒険者向けに用意された安宿の入り口を潜(くぐ)る。角ネズミを狩る予定だったがそんな気分になれない。


「相変わらず、辛気臭い顔をしてるわねぇ。」


「生まれつきこの顔だよ。マリアーナさん」


「お姉ちゃんでしょ。お姉ちゃん。」


「はぁ、マリ姉(ねぇ)」


いつも通りのやり取り。この日常も、あとどれくらい続くのだろう。


「用事がないなら、もう部屋に行きたいんだけど・・・・」

そこまで言いかけて、ふと思い当たる。マリ姉ならヴィアのことを何か知っているかもしれない。宿屋の主人のネットワークは侮れない。


「ちょっと聞きたいことがあるんだけど」


「何?お姉ちゃんに彼氏がいるか知りたいの?」

この人には独特のノリがある。付き合うにはコツがいる。


「いや、それも知りたいけど、一月ぐらい前に青髪の冒険者がこの街に来たと思うのだけど、女の剣士で・・・」


「ああ、ヴィアちゃん(・・・)の事ね。」


ヴィアちゃん?


「知ってるの?」


「知ってるも何も、リグノの部屋の隣に泊ってるわよ。」

個人情報保護など無かった・・・てか、隣に泊ってたのか。


「リグノはああいう娘が好みなの?お姉ちゃん許しませんからね」

プンプンと怒るふりをする。


「いや、好みというか・・・何か噂を聞いてないかなと」

ひょっとしたら、ヴィアの悩みを知っているかもしれない。


「あら、やっぱり気になるのね。」

マリ姉がうんうんと頷く。


気になる・・・そうなのだろう。やってることは完全にストーカーだな。いや単に前世の記憶に引きずられているだけか?命の恩人とかそういうのを置いといても、助けてやりたいと思ってしまう。


「それとも夜這いしようとしてるのかしら?」


「しないよっ!」


ヴィアのステータスなら返り討ちにされて終わりだ。


「でも、流石にお客のプライバシーまでは話せないわよ」

マリ姉がまじめな顔をする。ん?この感じ、何か事情を知ってる感じなのかな?正直、あまり期待していなかったんだけど。


「おねぇちゃ〜ん」

上目遣いで少し甘えた声を出してみる。


「うっ、ダメよ」

まあ、そうだよね。


「でもねぇ、忠告だけはしといてあげる。他人のね。関係ない不幸までリグノが背負う必要はないのよ。」

マリ姉が意味ありげに言う。


関係ない不幸か。マリ姉らしい言い回しだと思った。それがヴィアについて話せる限界という事なのだろう。


でも、その不幸の原因が金だけならなんとかしてやりたいと思うのも人情だ。前世で娘や元妻を不幸にしてしまった。単なる罪滅ぼしかもしれない。

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