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【シリウス・ユリア編】星風の国物語~呼び笛の向こうへ~  作者: 月森みのり


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第三十四話 祝杯 


 武闘大会から、一週間ほど過ぎた頃。

 レオニスの私室では、夜風がカーテンを揺らしていた。

 壁際の燭台には火が灯り、書棚に並ぶ背表紙と、窓際に置かれた小さな机を淡く照らす。


 部屋の中央には、低いテーブルを挟んでソファーが二つ置かれていた。

 レオニスは片側のソファーに腰を下ろし、向かいにはシリウスが座っていた。


「お前と飲むのも、久しぶりな気がするな。しばらく控えていたんだろう?」


 瓶の栓を開けて琥珀色の酒をグラスに注ぎながら、レオニスは口元を緩ませた。


「まあな。体にいいものでもないだろ」


「真面目だなあ、お前は」


 レオニスは肩を揺らして笑い、シリウスへ目を向ける。

 上着はソファーの背に放られ、白いシャツの襟元には包帯がのぞいていた。


「体はもういいのか」


「問題ないさ」


 シリウスは目を伏せて頷く。


「そうか」


 レオニスも軽く頷き返した。

 テーブルの上には、酒の注がれたグラスが二つ。

 その一つがシリウスの前に置かれる。


「三連覇、おめでとう」


 レオニスは自分の分のグラスを手に取り、琥珀色の液体を軽く揺らした。

 シリウスも手を伸ばし、グラスを軽く掲げる。


「ああ、ありがとう」


 二つのグラスが触れ合い、小さな音が室内に響いた。

 酒を口に含む。

 芳醇な熱が喉元をかすかに焼き、果実の香りが鼻に抜けた。


「……リアの件だが、上層部の合意が取れた」


 シリウスはそう言って、グラスをテーブルへ置く。


「そうか」


「正式な辞令は、リアの怪我が回復してからになる」


「楽しみだな」


 レオニスは目を細めて笑った。

 窓の外で、木々の枝が風に揺れている。

 レオニスはしばらく黙って酒を口にしたあと、グラスを揺らした。


「ユリアの件も、話はまとまったぞ」


 シリウスの手が止まった。


「正式な辞令は、リアと同じ頃になるだろう」


 シリウスは一度瞬きをし、小さく息を吐いた。


「そうか。丁度良かったな。顔見知りが近くにいる方が、お互いに気楽だろう」


 レオニスは答えず、シリウスに目を向けた。

 シリウスは背もたれに身を預け、片腕をソファーの肘掛けに置いて窓の外を眺めている。


「……お前は、これで良かったのか」


 シリウスはすぐには答えなかった。

 グラスを持ち上げ、酒を口に含む。

 目を伏せて、ゆっくりと飲み下した。


「……良いさ。俺もあいつも、自分で選んだんだ」


 レオニスはしばらくシリウスの顔を見つめていたが、やがて小さく頷いた。


「……そうか」


 それ以上、問いかけることはなかった。

 レオニスはグラスを傾け、シリウスも酒瓶へ手を伸ばした。

 燭台の火が揺れ、二人の影が壁の上でかすかに動いた。


お読みいただき、ありがとうございます。

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次回もお楽しみに!!


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