終焉の地……鏡合わせの敗北
「……なんだか、拠点が遠すぎないか?」
ジュリアスチームの一人が、焦燥を堪えきれずに零した。
「……索敵を避けて回り道をしているんだ。当然だろう」
ジュリアスは内心の動揺を打ち消すように吐き捨てる。
(何かがおかしい。迷ったか? いや、そんなはずはない!)
「敵に出会わないだけ幸運だと思え。……見えたぞ!」
ようやく視界に捉えた「他種族の拠点」に、ジュリアスは安堵の溜息を漏らす。
時間をかけすぎたが、ここまで来ればこっちのものだ。
「この時間帯に全員で攻めてくるとは思うまい。気づいてから戻っても手遅れだ」
「五人揃っている俺たちが圧倒的に有利……。なんとかなったな」
メンバーの顔に、卑屈な勝ち誇りの中の安堵が広がる。
「守りはあの雑魚剣士一人だ。魔法を叩き込んで退場させろ。キングクリスタルを粉砕して、この茶番を終わらせるぞ!」
ジュリアスが吠える。
「やられっぱなしだったからな。少しは花を持たせてやったと思えば、退学という結末も慈悲深く聞こえるだろうよ」
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「……そろそろかな」
拠点の前に立つルーシュが独り言ち、パチンと指を鳴らした。
直後、ジュリアスの放った雷魔法が虚空で相殺される。
続けざまに飛来するチーム全員の総攻撃。だが、ルーシュは抜刀術の構えを崩さず、リズムを刻むように指を鳴らし続けた。
【パチンッ、パチンッ!】
鳴り響く音と共に、ジュリアスたちの渾身の魔術が、目に見えぬ「斬撃」によって次々と霧散していく。
「なっ、何だよ!? なぜ魔法が斬られているんだ!」
「……こいつ、本当にただの剣士か!?」
「攻めろ! 攻め続けろ!」
ジュリアスは叫ぶが、その声は上擦っていた。
(なぜ攻撃が通らない。逃げ回るだけの前衛が、一体何をした!?)
「くそぉぉぉぉ!!」
「……なんて、か細い悲鳴かしら?」
嘲笑と共に、セレスティアが風を切り裂きジュリアスを強襲する。
「またお前か!」
死に物狂いで回避するジュリアス。だが、そこへ――。
「今度は、私が相手をしよう」
冷徹な声と共にエルフィが姿を現し、至近距離から光の矢を番える。
「お前は、ルーシュの援護に行け」
ザルガとバルカスも、飢えた獣のような笑みを浮かべて合流した。
「こっちは四対二だ。今度は俺もいる!」
守備担当だったメンバーがジュリアス以外のメンバーに加勢に入るが、ザルガたちは気にも止めず攻めてくる。
「邪魔だ、俺の獲物だぞ!」
「うるさい、俺の方が近い!」
もはや戦闘ではなく、獲物の奪い合い。ジュリアスたちは、その圧倒的な「格」の差に、もはや防御に徹することすら叶わない。
「……ルーシュ! だからこの化け物チーム、嫌って言ったのよ! 私の分が残ってないじゃない!」
戻ってきたセレスティアが、頬を膨らませてルーシュに詰め寄る。
「まあそう言うな。お前の魔法が必要だったんだから、作戦通りだろ?」
おれもすることがないので観戦にまわっている。
「……ふん。まあ、あの絶望する顔が見られるなら、少しは許してあげるわ」
セレスティアは小悪魔のように唇を舐め、獲物を追い詰める仲間たちを見守った。
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「ジュリアス! 戦闘では勝てない、クリスタルを狙え!」
ザルガたちの猛攻に耐えかねたメンバーがジュリアスの加勢に動く。
その一瞬の隙――。
ジュリアスは溜めていた全魔力を放出。エルフィが放った牽制の矢を潜り抜け、クリスタルへと肉薄した。
「これで……終わりだぁぁぁ!」
渾身の一撃が、青く輝くキングクリスタルに叩き込まれる。
それと同時に追手に阻まれ、退場させられるジュリアスメンバーたち
メキメキ……パリンッ!!
「……あーあ、壊れちゃった」
セレスティアの脱力した声が響く。
ピィィィィィィィィィィィィィィ!
「最後はやはりこの男!ジュリアスが決めたぁぁぁ!!」
実況の声共にホイッスルが鳴り響く。
「勝った! 勝ったぞ!!」
ジュリアスは歓喜の声を上げ、勝利の余韻に浸ろうとした。
だが、リスポーン地点から戻ってきたメンバーたちの顔に、歓喜はない。
「勝ったぞ、お前たち! ……ん?」
ジュリアスは、背筋が凍るような違和感を覚えた。
「なぜだ……。なぜ、リスポーン地点がここなんだ?」
彼らが今、息を切らして立っている場所。
そこには、自分たちが粉砕したはずの――**『ジュリアスチームの拠点マーク』**が刻まれたキングクリスタルの残骸があった。
「な……何だ? どうなっている……?」
「ジュリアス……おい、ジュリアス!」
崩れ落ちる仲間たち。
彼らが十数分かけて必死に走り、守り手を蹴散らし、ようやく破壊した「敵のキングクリスタル」……。
それは、最初から最後まで、一度も動くことのなかった**自分たちの拠点**だった。
「…………嘘だ…………」
歓喜は瞬時にして極北の絶望へと塗り替えられ、スタジアムにジュリアスの力ない声だけが虚しく響いた。




