最速の初陣……野生の咆哮
「さぁて始まりました! 異例中の異例、学園新入生同士によるクリスタルシージ特設マッチ!」
魔法増幅器を通した声がスタジアムに響き渡る。実況は、来季の運営内定を勝ち取ったという実力派、デンだ。
「まさか去年の前衛のランキング戦の実況が目に留まって就職を決めてたなんてな」
観客席で腕を組むのは、前衛組のロックだ。隣のジャックも感心したように頷く。
「戦いだけでなく、そういった適性も見られているとはな。……しかし、問題はあっちだ」
視線の先には、不本意ながらもフィールドに立つルーシュたちの姿があった。
「なんでルーシュも参加してるのよっ。新入生じゃないでしょ!」
ぷりぷりと怒りながらも、どこか心配そうに見つめるのは13歳になったリリスだ。少し大人びたものの、その愛らしさは変わらない。
「なんか他種族が入学試験を受けた理由にあの人一枚噛んでるそうです。それで庇ったら巻き込まれたみたいな」
どこから仕入れた情報なのかメロは勝手なことをする俺に呆れている。
「どんなツテだよ」
ジャックが言うと
一同は揃って
「「さぁ・・・」」
一同の反応は、もはや諦めに近かった。
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「本日は、ジュリアス選手の発案による『他種族親善試合』! 交流を深めたいという彼の高潔な心遣いにより実現しました!」
デンの実況が、歪められた事実を美談として観客に振りまく。
「……何が親善よ。喧嘩を売ってきたのはあっちじゃない」
セレスティアが不快そうに唇を噛む。
「構わん。こうなった以上、この場を利用して存分に暴れてやるさ」
リザードマンのザルガは、既に闘志を研ぎ澄ませていた。
「完敗した他種族は、恥を晒して田舎に帰った……。そんなシナリオを用意しているのでしょう。浅はかですね」
エルフィは冷徹に敵の意図を断じる。
「今朝他の仲間も送り出してくれたんだ。負けられんよ」
バルカスが重厚な斧を構え、覚悟を決める。
「さあ、ヴァイオレット王国RVR学園、他種族生の初陣だ。いくぞ」
ルーシュの号令と共に、開戦のホーンが激しく鳴り響いた。
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ピィィィィィィィィィィィィィィ!
「予定通りだ。A地点から三人で行け。俺はBとCを掻き回す」
ジュリアスは勝利を確信し、冷酷な笑みを浮かべる。
「分かってる。お前こそ一人で負けて帰って来るなよ」
軽口を叩き合い、ジュリアスの仲間たちは最短ルートを突き進む。
「場所は分かっているんだ。真っ先にクリスタルを割り、潜伏して、ノコノコやってくる連中を仕留めるぞ」
運営から不正に得た位置情報を頼りに、彼らはA地点へと躍り出た。
だが、そこに待っていたのは――。
「……なぜだ。クリスタルがない!? 一番近い地点だぞ、ジュリアスのミスか?」
「いや、違う。台座が砕けている……もう割られているんだ!」
「馬鹿な、早すぎる……っ!」
その時、逃げ場のない森林フィールドに、物理的な重圧を伴う「殺気」が満ちた。
**ゾクッ!!**
背後に立つのは、リザードマンのザルガ。
大気を震わせるほどの威圧感。逆光を背負ったその姿は、伝説の竜を彷彿とさせるほどに巨大に見えた。
「何だ……この化け物は……」
卑劣な策を弄した三人の足が、恐怖で地面に縫い付けられた。




