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七度転生した大賢者、今世では剣士として無双します 〜魔法全盛の世界で剣を選んだ理由〜  作者: ねむのき 圓
8章 勇者と勇者

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ギルドマスター任命式・・・実力差

ヴァイオレット王国の中心、白亜の広場は異様な静寂に包まれていた。

国を挙げての任命式。お祭り騒ぎこそないが、その空気の密度は民衆の注目と期待で、肌がヒリつくほどに濃かった。


パレードを終え宮殿にて正式に任命される。

本来なら玉座に座る国王から授けられるべき称号。だが、王・ダリル不在の今、その代行を務めるのは王子のロロ。脇を固めるのは、現ギルドマスターの四人と預言者、そして同盟国ヴァーミリオンの王・リック。歴史に刻まれるべき豪華な面々が、一人の女性を凝視していた。


「汝、イリノイ」


ロロが王剣を高く掲げた。跪くイリノイの頭上に、その神々しい輝きが降り注ぐ。


「その身を盾とし、その智を剣とし、王国の安寧のために全てを捧げる覚悟はあるか。王の代理として、我、ロロ・ヴァイオレットがここに宣言する。汝をヴァイオレット王国ギルドマスターに任ずる。ひとたびその任に就いたからには、私欲を捨て、身を切り捨ててでも王国の民を、そしてその誇りを守り抜け。――その忠誠に、神の加護と王国の名誉があらんことを」


イリノイはゆっくりと面を上げた。その瞳には、野心と使命感が混ざり合った独特の熱が宿っている。


「ギルドマスターの一人として、ヴァイオレット王国に**心身**を捧げ、最後まで忠誠を尽くすことを誓います」


乾いた拍手が広場に響く。しかし、それは祝祭の終わりではなく、真の「儀式」の始まりに過ぎなかった。


「では、ここからが最重要事項です」


アリゾナが冷徹に切り出した。イリノイが怪訝そうに眉を寄せる。


「なにか?」


「ギルドマスターの言動一つで国はひっくり返る。貴方を信頼した上での重責だが……イリノイ。君は、国民を欺くことさえ職務だと理解できるか?」


「……どういう意味です。国の腐敗に手を貸せと?」


「そうではない」

アリゾナの眼光が鋭さを増す。

「レイモンドで起きた悲劇に知っているだろ?その後世界が滅びそうになった事件、ヴォイドにピューターこの絶望を阻止した者がいる」


「ヴォイド…あれば不完全な偽神器による暴走、ピューターは偶然が重なった事故、幸い犠牲者が少なかった案件との報告でしたよね?」


「実際はあの街一つ一つが世界を消しさる力が影響していた。その中心にいた人物がいる。レイモンドでも1人で魔族の進撃を止めた」


「ガル様以上の力の持ち主とでもいいたいのですか?」


「イリノイ…おまえは察しが早くていい。しかしすべてを話すのは流石にお前でも処理しきれないだろう。目的は魔王を討つ!」

アリゾナの言葉に力が入る


「魔王…そんな国の存続でもいっぱいのはずなのに魔王などとそんな根拠のない話は!」


「それができる人物がいる。忘れられた存在賢者だ」


「賢者?そんなおとぎ話をどうやって信じるのですか?」


「ここにいる」

俺はようやく口を開いた。

長い前置きだった


「だれだ?」

振り返ったイリノイの目に映ったのは、一人の学生。訓練場で鼻で笑ったはずの、あの少年だった。


「ちょっとばかし転生にズレが生じて、1500年経ってしまった。魔王が復活したのもその影響だが、まぁ、それは置いとくとしよう」


淡々と、だが抗いようのない圧を孕んで俺は歩を進める。


「今の王国、各所の綻び、すべては魔王が描いたシナリオだ。機能不全のギルドを立て直し、世界最強の組織を作る。それがお前の役目だ。先日……話してみたが、お前でいいと確信したよ。全会一致でお前の名が挙がった理由がわかった」


「…………ふざけないで。そんな訳のわからない自称賢者を、私が認めると思うのですか! なぜ皆が納得しているの!?」


「私どもも、最初は疑いました」

アリゾナが静かに告げる。

「ですが、あのガル様はひと目で確信なさったのですよ」


「それでも認められない! 勝負しなさい、賢者! 私が得意とする『補助術式の精密展開』で、あなたの化けの皮を剥いであげる!」


イリノイが吠える。同時に、彼の周囲に魔力が渦巻いた。

展開された術式は、まさに芸術品だった。一分の隙もなく、緻密に編み込まれた幾何学模様。その密度、輝き、魔法の美しさにおいて、イリノイは間違いなく現代の頂点の一人だった。


「いいね。その得意分野で勝負を仕掛ける度胸。言い訳ばかりのアリゾナにはできない芸当だ」


「なんで私が巻き込まれるんですか……」


アリゾナのぼやきを無視し、俺は指先を動かす。

だが、そこに現れたのは、どこか歪で、スカスカに見えるほど簡素な術式だった。


「その程度で、私の精度を越えるつもりか!」


イリノイは集中力を極限まで高め、すべてを飲み込もうとする巨大な術式を組み上げる。だが、ルーシュの瞳は憐れみさえ含んで彼を見ていた。


「魔法とは、魔術とは何か。……それを極められる者はこの世にいない。だがな、魔法の全ては俺だ。極限まで磨き、真理を求めた。俺は魔法を愛しているんだよ」


パチン、と。

俺が指を鳴らした瞬間、イリノイの術式が書き換えられた。


イリノイの強大な魔法が、内側から弾け、霧散する。

俺が書換えた光は一瞬だが国中に影響を与える。絶望的なまでの実力差を見せつけた。

結果は――イリノイの完敗だった。


「な、ぜ……。私の術式の方が、精度も密度も上のはず……! なぜ、そんな『荒削り』な魔法に!」


膝をつくイリノイを見下ろし、俺は静かに語りかける。


「イリノイ。お前が『荒削り』と言った部分は、あえて崩してある。例えば、一人の傷を治すと同時に、その飛散した魔力で周囲の味方にも微細な回復効果が出るようにしてある。少ない魔力で大勢を救う。……もちろん、お前が言うように『荒削り』なら効果は薄れる。だからこそ、肝心な部分には、精密な術式を刻んである。誰が補助対象は1人と決めた?強大な補助なら全員にかければいいじゃないか?そういった常識を壊すのが魔法じゃないのか?」


俺は術式の残滓を霧散させ、動揺するイリノイの目を真っ直ぐに見据えた。


「お前の術式は綺麗だ。でも、綺麗すぎて遊びがない。予定外のことが起きた時、その美しさが仇になって対応が遅れる。……自分でも、薄々気づいているんじゃないのか?」


イリノイは言葉を失った。亡きアリゾナを守れなかったあの日、自分の完璧なはずの術式が「想定外」に対応できなかった瞬間の記憶が蘇る。

イリノイの肩が震える。


「ギルドマスターは終着点じゃない。お前達全員が進化し続けなければ、下の者はついてこないぞ」


そこまで言うと、俺は肩の力を抜いた。


「あとは報告書とか見るなり、アリゾナから聞いてくれ」


疲れた…

最後にかっこつけたものの、現代の高度な魔法に干渉するのは、俺といえど相当な神経を削る作業だった。俺はアリゾナに丸投げし、足早に去っていく。


だが、去り際に見たイリノイの顔。そこにはもう、根拠のない傲慢さは消えていた。

こいつなら大丈夫だ。俺はそう確信し、ようやく深く息を吐いた。


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