魔力接合(マナ・リンク)・・・賢者の盲点
一日中歩き回ったが、結局何も掴めなかった。
部屋に戻ると、ヴィニーとロロが並んで魔法の勉強をしていた。
「なあ……俺、どうしたらいいと思う?俺でも分からないことがあるなんて、自分でも笑っちゃうけどさ」
「賢者様が分からないものに、私たちに何ができるんですか?」
今日のヴィニーは少し冷たい。
だが、彼らが机に広げている資料の魔力の流れが、ふと目に留まった。
「それ、変わった魔力の動かし方だな」
「基礎のおさらいですよ。進級試験では必須ですから。これの応用で、実力以上のことができるんです。前衛VS後衛の時、ルーシュさんに隠れて攻撃してた連中がいたでしょう?」
俺は首を傾げる。
「いい連携だとは思ったけど……」
「まさか……」
ロロとヴィニーが顔を見合わせる。
ロロが実験台になるように、指先に三つの火の玉を浮かべた。
「今、何をしてるように見える?」
「魔力を流して威力を調整し、術式の書き換えと発動タイミングを……。三つとも性質が違うな。まあ、この程度なら……」
俺もパチンと指を鳴らし、全く同じものを複製してみせる。
「……やべぇ。これを指先一つでするのかよ」
ロロが嫌味っぽく呟く。
「え、これくらい簡単だろ?」
「簡単です、僕たちでも作れます。でも……『僕たち(・・・)』で、なんです。一人じゃなく、複数人で。これが現代魔法の基本――**《魔力接合》**ですよ」
「この程度なら一人でもできるんだけど不安定になったりもっと規模が大きくなると…。だから他者と魔力を結合し、複雑な術式の演算を分担する。優秀な奴が揃えば、一人では不可能な大魔術が使えるってことだ。生まれたての子供でも親が繋げて自然と覚える、基本中の基本なんだが……」
衝撃だった。俺は、あらゆる術式を一人で、完璧にこなすことだけを突き詰めてきた。
だが、この時代は**「個」ではなく「接続」**を前提に魔法を組み上げているのもあるのか。
「お、俺にもやってみてくれ」
「分かりました、接続しますよ。落ち着いてくださいね……。――わぁ!!」
ヴィニーが急に叫び声を上げた。
「どうした!?」
「ルーシュさん、やばいです……。魔力が緻密すぎて、つなげる場所がありません」
「俺にもやらせろ! ……まじか、本当に弾かれる。壁だ、これ。あまりにも精密すぎて、こちらの魔力が絡みに行くスペースが全くない」
ロロとヴィニーが呆然と俺を見る。
「魔力を糸のように絡みつけに行くイメージなんですけどルーシュさんのは細すぎて壁みたいになっています」
どうやら、俺の魔力が繊細すぎて、「他者の介入」という不純物を受け付けない構造になっているらしい。
「俺から絡み行くからやり方教えてくれ」
ロロとヴィニーが止まる
「えっと・・・生まれた時からできることだから、説明しろって言われても難しいな……。学者の文献でもあるんじゃないか?」
「あるんでしょうけど……分かりません」
ヴィニーに苦笑され、俺はそのままベッドへふて寝するように倒れ込んだ。
天井を見つめながら、俺はニヤリと笑った。
面白い。完璧だと思っていた俺の魔法に、まだ知らない「形」があったとは。




