賢者の帰還・・・現代魔法の違和感
テオの入寮手続きを済ませ、軽く別れを告げた俺は、ようやく自分の部屋へと戻ってきた。
ピューターでの一件は、俺の中に一つの「棘」を残していた。
「マティアス……。あの魔力操作をたった一人で、しかも俺を上回る精度で。ありえない話じゃないが、数千年の空白で魔法は俺の知らない形へ進化したのか?」
自室の扉を開けると、ヴィニーとロロが出迎えた。
「お疲れ様でした! 大変だったみたいですね」 「うまいこと行ったのか?」
俺は二人に、ピューターで起きた「偽神器」と「マティアス」の真実を簡潔に話した。
話終えると、ロロが呆れたようにため息をつく。
「……賢者様でも謎なんてあるんだな。魔法に関しては世界最強なんだろ?」
「自負はあるさ。だが、この時代の魔法はどこか俺の知る理から外れている気がする。誰が、いつから、後衛主軸のシステムに変えたのか……」
「そこまで考えると気が遠くなりそうですね」
ヴィニーが苦笑するが、俺の焦燥感は消えない。
「そろそろ進級試験だ。不本意だが、あいつに聞いてくるか」
翌朝。俺は学園とギルドの両方を統括し、今や王国で最も多忙な男の一人となったアラバマの書斎を訪ねた。
「何か用ですか? 賢者様」
山積みの書類の陰から、不機嫌そうな声が響く。
「そう邪険にするな。進級試験の内容と、近代魔術の定義を確認したくてな」
「学生らしく大人しくしておいてください。試験は入学試験の延長……学力と魔力の確認ですよ。この学園に残る者は皆、落ちぶれるほど暇ではないので、基本的には全員進級しますがね」
「それは分かっている。だが最近、近代魔術というものが気になっていてな。境目はどこにある?」
「……そんなことを聞かれても、私共にも不明ですよ。そんな暇があるなら、外を見て回ったらどうです?」
忙殺されているアラバマに追い出され、俺は渋々学園内を散歩することにした。
「違う! その程度で何ができる、基礎からやり直せ!」
轟音と共に熱気が襲う。訓練場では、学園序列1位のスザクが模擬戦の真っ最中だった。
後衛チームを率いる彼の指揮は、冷徹で、かつ異常なほど効率的だ。
「何だ、暇つぶしか?」
スザクがこちらを見ずに放った《ファイアーボール》を、俺は慌てて回避する。
「今ファイヤーボールは……見慣れない術式だな」
「ふざけているのか? 基本中の基本だろ。俺たちを煽りに来たのか?」
スザクの瞳に宿る真剣な殺気を感じ、俺は早々にその場を後にした。
「……はぁ、俺ってこんなに嫌われてたのか」
トボトボと歩いていると、ロロとすれ違った。
「何だよ朝から元気のないやつだな」
「お前もおれのこと嫌いか?」
「はぁ?何だその質問?嫌いに決まってるだろお前のせいでここにいるんだからな」
衝撃が走る
身分は隠しているがこの国の王子で賢者と知る少ない同世代(見た目は)
「おれは嫌われて生きてたんだな・・・」
おれは見るからに凹んだ
「そんなに凹むな。偉そうなおっさんが学生と仲良くしてる方が気持ち悪いだろ。……どうしても気になるなら、俺たちと後衛組の授業でも受けたらどうだ? 前衛が知らない『基礎』に手がかりがあるかもよ」
「基礎かぁ、なんか文句言いそうだしパスするわ」
「そういうとこだよ」
ロロは笑って去っていった




