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七度転生した大賢者、今世では剣士として無双します 〜魔法全盛の世界で剣を選んだ理由〜  作者: ねむのき 圓
6章 城塞都市ピューターと超級物質魔法

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小さな希望・・・大きな約束

 街を襲った未曾有の危機は去った。

 事態は「ヴォイド」の時ほど壊滅的ではなかったが、それでも近年稀に見る「魔力暴走」として王国の公式記録に刻まれることになるだろう。

偽神器の存在やマティアスの影を隠蔽しつつ、裏で糸を引く者たちへの警戒を強める――。

そんな政治的な喧騒を他所に、俺は一人、静まり返ったガゼルの工房にいた。


 そこでは、煤で汚れた手で健気に片付けをする少年がいた。

「……おじいちゃん」

 テオが、主を失った作業台を撫でる。


「用意はできたか、テオ」 「えっ、あ、うん……!」


「お前はこれからヴァイオレット学園で学ぶことになる。あそこは寮もあるし、仲間もいる。俺もそこで学んでいるからな。ずっと傍にはいられないが……寂しくは、ないはずだ」


「うん、大丈夫。馴染めるように頑張るよ。……でも、ルーシュ。あの時、あのマティアスに『賢者』って呼ばれてたよね?」


 テオの真っ直ぐな瞳に見つめられ、俺は苦笑してその頭に手を置いた。

「内緒の話だぞ。……テオ、お前の知ってるこいつ、『マテリアル』は大精霊だ。こう見えて、世界に数体しかいないとんでもない奴なんだ。んで、こいつらが暴走しないように何千年も見張ってきたのが俺。何千年も転生を繰り返して生きているのが俺。……つまり、お察しの通り。俺が、かの有名な『賢者』だ」


「ええ……! なんか変わった人だとは思ってたけど、本当に賢者様なんだ。おじいちゃんがボロボロの本を持ってたよ。『この人だけが魔法のすべてを知っていた。架空の人物だという説もあるが、実在すると私は信じている』ってね」


「買いかぶりすぎだ。俺だって、まだまだ魔法を知りたい。こいつら大精霊のことだって、ほんの一部しか理解できていないんだ。こいつらが魔法の始祖で、魔力の根源。世界があるから大精霊がいるのか、大精霊がいるから世界ができたのか……ものすごい複雑な話なんだぞ? 」

 おどけて見せると、テオは不思議そうに首を傾げた。


「じゃあ、マテリアルに聞いたらいいじゃん」


「そう思うだろ? だが誰も教えてくれないし、こいつらときたら『知らない』の一点張りなんだよ」


『本当なんだもん! 気づいたらなんか居たし、自分だって何者なのかよく分かってないけど何をしないのかは分かっていた感じ。

今となってはルーシュしか精霊語を話せないし……おいらたちはルーシュに遊んでもらわないと、暇すぎて死んじゃうんだよ!』

 マテリアルが、ツクヨミと同様に数千年放置されていた不満をぶちまける。


「話せないって……僕とは?」


『テオはね、おいらの魔力に限りなく近いんだ。だから精霊語じゃなくて、心で直接会話してるようなもの。……おいら、こんなこと生まれて初めてだったんだ。嬉しくて、嬉しくて!』


「だからあんな大暴走になったんだろ。大人しくしろって言っただろ」

 俺が横から釘を刺すと、マテリアルは俺の周りをぷいと飛び回る。


『なら、ルーシュがいなくならなければ良かったんだ!ぶぅぶぅ』


「それは俺だって不本意なんだから仕方ないだろ!」


 そんな俺たちの言い合いを見て、テオが吹き出した。

「あはははは! 賢者様に大精霊……どんなに凄い人たちでも、僕たちと一緒なんだね」

 テオはこれまでの沈鬱な表情を吹き飛ばすように、声をあげて大笑いした。

俺とマテリアルは顔を見合わせ、つられて小さく笑った。



 帰り道。夕闇が迫る街外れで、俺は立ち止まった。

「テオ。……ここで、マテリアルとはお別れだ」


「え?なんで?そんなの嫌だ!」


「今回はテオの魔力に反応したマテリアルが悪い。だが、大精霊を物理的に動かすほどの魔力と素質……こんなことは、俺の長い人生でも初めてだった。テオ、お前は特別なんだ。だからこそ、基礎から学ばなければお前自身が危ない。マテリアルには一度、元の場所へ帰ってもらう」


『ごめんね、テオ。おいら、テオとの時間、大好きだったよ』


「そんなこと言わないでよ……!」

 テオの大きな瞳から、大粒の涙が溢れ出した。


『会えないわけじゃないから。ピンチの時や、テオがもっともっと大人になって、おいらが必要になれば……きっと、また』


「もっともっと頑張るから! マテリアルが会いたくなるような、立派な大人になるからぁ!」

 泣きじゃくりながら叫ぶテオの言葉に、マテリアルもまた、寂しげに、けれど誇らしげに光を増した。


『うん、分かってるよ。おいらが認めた人間なんだもん。自信を持って学んでね。……ありがとう、テオ』

 光の粒子が溶けるように、マテリアルは自身の精霊空間へと帰っていった。


 その場に座り込み、しばらく動けないほど泣き続けたテオ。

 俺は何も言わず、ただその背中が落ち着くのを待った。

 やがて泣き疲れて眠ってしまった小さな体を背負い、俺は静かに歩き出す。


「……世界を変えるのは、いつだってこういう純粋な涙なんだろうな」


 背中の温もりを感じながら、俺は一路、ヴァイオレット王国へと戻った。


6章 城塞都市ピューターと超級物質魔法 ~完~

第6章・完結にあたって

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

これにて、第6章「機械都市ピューター編」は完結となります。


今章は、かつての友・レオの面影を残す街を舞台に、ルーシュが「現代魔法の進化と歪み」に直面するエピソードとなりました。


今回も登場した宿敵マティアス。彼はルーシュの知る「魔法」をシステム的に書き換え、賢者の余裕を揺さぶる強敵として立ちはだかりました。そして、そんな激動の中で出会った少年テオ。彼と大精霊マテリアルの別れのシーンは、書きながらも胸に迫るものがありました。


マティアスが残した「闇が深くなる」というセリフ

そしてルーシュがテオに託した「優しさのある魔法」。

これらは、物語の今後を左右する大きな鍵となっていきます。


次章、第7章からは舞台を再びヴァイオレット王立学園へと戻します。

待ち受けているのは、1年間の集大成となる**「特別進級試験」**。


成長したスザクやリカルナたち既存の選抜メンバーと、ルーシュが連れ帰った「規格外の新人」テオやライカ。

彼らが混ざり合うことで、学園の勢力図はどう塗り替えられるのか。 そして、ルーシュが目指す「前衛の模範」としての真の力が、ついに試験という公の場で試されることになります。


さらに、南の国から訪れた優秀すぎる王リックの動向や、ヴィニーの中に眠るダリル王の行方など、王国に渦巻く謎も加速していきます。


第7章も、どうぞお楽しみに! 感想や評価をいただけますと、執筆の大きな励みになります

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