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七度転生した大賢者、今世では剣士として無双します 〜魔法全盛の世界で剣を選んだ理由〜  作者: ねむのき 圓
5章 境界都市ヴォイドと偽りの神器

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ギルド依頼・・・境界都市ヴォイド

「……な、なにこれ。学園もすごかったけど、ギルドまでこんなに立派なの……!?」


 王都にある王国ギルド本部の前に立ち、ライカが口をあんぐりと開けて見上げている。ヴァーミリオンのような地方の街とは比べものにならない、白亜の石造りと緻密な彫刻。門を潜れば、そこには学園とはまた違う、鉄と魔法薬の匂いが混じった「実戦」の空気が漂っていた。


「そりゃ、ここは国中の金と依頼が集まる場所だからな。……ま、あの参謀の野郎がしっかり搾り取ってんだろうよ」


 ロロが不遜な態度で建物を眺める。一介の学生にしては不自然なほど上層部に詳しい物言いだが、ライカは建物の豪華さに圧倒されて気づかない。


「ロ、ロロくん、声が大きいです……。でも確かに、ここに来ると背筋が伸びますね。僕、あんまり荒事には自信がないんですけど」


 ヴィニーがいつものように弱腰で辺りをキョロキョロと伺っている。


「安心しろ。今日は難しい依頼を受けるつもりはない。……上の方から『人手が足りないから少しは手伝え』って言われてるからな、顔出し程度に適当な依頼を探すだけだ」


 俺はそう言って、豪華な受付カウンターへと向かった。  受付嬢に「4人で受けられる適当な依頼はないか?」と尋ねていると、横からふわりと、緊張感のない声が割り込んできた。


「おや……? 珍しい顔ぶれだねぇ。ルーシュ君に、そっちの二人は……確か同じクラスのロロ君とヴィニー君だっけ?」


 声の主は、受付カウンターの縁に肘をつき、ヘラヘラとした薄笑いを浮かべていた。


 学園2位 イリュウ だ。前衛組の大会で決勝を争った人物


 彼の手にはリンゴを弄んでおり、17歳という若さに似合わない、どこか達観したような、それでいてやる気のないオーラを放っている。だが、その腰に下げられた、複数の刃が組み合わさった**「合体剣」**だけは、不気味な存在感を放っていた。


「イリュウ……お前、ここで何してるんだ。学園の授業はどうした」


「あはは、ギルドが忙しいから当分こっちが優先かな。それより君たち、ちょうどいいところに来たね。今、ちょっと『特別』な依頼を受けていてさ。人手が足りなくて困ってたんだよ」


 イリュウは手に持っていたリンゴを放り投げ、空中でそれをキャッチすると、楽しそうに目を細めた。


「どうだい? 俺の手伝いをしてくれないかい? 受付で並んで、小銭稼ぎのドブさらい依頼を探すよりは、ずっと『気晴らし』になると思うよ」


 俺と、そしてロロの顔を交互に見ながら、イリュウは「何か」を察しているような、含みのある笑い方を崩さなかった。


「……『気晴らし』、ね。随分と自信たっぷりじゃないか」

 俺が少し目を細めて問い返すと、イリュウは肩をすくめてリンゴをかじった。


「そりゃあね。なんたって今回の依頼主はギルド上層部の直命。ターゲットは境界都市ヴォイドの闇オークションに出回る……**『呪われた神器』**の回収さ」


「神器だと……?」

 その言葉に、ロロが真っ先に反応した。王族として「神器」の価値と危うさを知っているからだろう。


「あはは、そんなに身構えないでよ。呪われてるって言っても、扱いを間違えなきゃ大丈夫……なはず。ただ、あそこの市場は王国の法が届かない場所だからね。すでに俺の仲間……**クシィ**が、先乗りして潜入調査を進めてる」


「クシィって、あの根暗っぽい人? 」

 ライカが不思議そうに首を傾げる。


「そう、一足先にヴォイドの『影』に溶け込んでる。でもさ、相手は闇ギルドの連中だ。回収の瞬間に派手な騒ぎになるのは目に見えてる。だから、腕の立つ……それでいて、もしもの時に『学生の悪ふざけ』で言い訳が立つ連中が欲しかったんだよね」


 イリュウはヘラヘラ笑いながら、俺たちの顔を順に覗き込む。


「どうする? ロロ君にヴィニー君。退屈な学園生活に戻って上級魔法の講義を受けるか、それとも俺と一緒に、本物の『裏の世界』を覗きに行くか」


 ロロとヴィニーが顔を見合わせる。ヴィニーの顔は真っ青だが、ロロの瞳には、リスクを承知の上での好戦的な光が宿っていた。


「……ふん、いいぜ。ドブさらいよりはマシそうだ。ルーシュ、行くんだろ?」


「ああ。放っておくとお前らが何しでかすか分からないからな」

 俺はため息混じりに答えたが、内心では「呪われた神器」という言葉に引っかかっていた。賢者の遺品か、それともそれ以上に厄介な代物か。


「決まりだね! さすが、話が早くて助かるよ」

 イリュウは満足げに合体剣の柄を叩いた。


「じゃあ、出発は一時間後。各自、必要な装備と……それから『学生に見えないような変装』の準備をしておいてよ。ヴォイドは、お行儀のいい子供が歩く場所じゃないからね」



 **境界都市ヴォイド・潜入

「……ねぇ、ルーシュ君。これ、何の集まりだっけ?」  イリュウがいつものヘラヘラ顔を少し引きつらせて、俺に耳打ちする。俺も無言で頷くしかなかった。


 目の前には、あまりにも「場違い」な三人が並んでいた。


 まず、ロロ。

「なんだよ、動きやすさ重視だ。文句あるか?」  本人は胸を張っているが、どう見ても近所のガキ大将が裏山に遊びに行くような、子供っぽすぎる軽装だ。短パンに安っぽい革のベスト。隠しきれない育ちの良さが、逆に「無理して庶民の子供を演じている」感を強調している。


 次に、ヴィニー。

「い、いつもの正装が一番落ち着くというか……ギルドの依頼なら礼儀も必要かと……」  王国の紋章がバッチリ入った高級な正装。これから闇市場へ潜入するのに「私は王国の関係者です」と看板を背負って歩くようなものだ。


 そして、ライカ。

  「せっかくのオークションなんだから、気合入れなきゃと思って!」  どこから持ってきたのか、ひらひらのフリルが幾重にも重なった豪華なドレス。どこからどう見ても、これから夜会にでも出席するお嬢様である。気合が空回りしすぎて、逆に一番目立っている。


「……お前らなぁ」  俺は、地味な色合いの動きやすい旅装束――潜入の鉄則を押さえた格好――で、深くため息をついた。


「イリュウ、悪い。俺が教育しとくべきだった」

  「あはは、面白いからいいけどさ。ロロ君は遠足だし、ヴィニー君は『捕まえてください』って言ってるようなもんだし。ライカちゃん……それ、走る気ないよね?」


 結局、俺とイリュウで「闇市の客」に見えるよう、無理やり着替えさせた。

 ロロは少し大人びたマントを着せ、ヴィニーは紋章を隠すためにボロボロのローブを羽織らせ、ライカはドレスを脱がせて簡素な町娘の服に。


 だが、問題はそこでは終わらなかった。


 **境界都市の門

 馬車を飛ばし、数時間。 ようやく辿り着いた境界都市ヴォイドの入り口。高くそびえる錆びついた鉄門の前には、筋骨隆々の門番たちが目を光らせていた。


「次。……おい、待て。お前らはダメだ」  門番が、ぶっきらぼうにロロとライカを指さす。


「はぁ!? なんでだよ!」  ロロが声を荒らげる。


「ここは『大人の社交場』だ。ガキが迷い込む場所じゃねぇんだよ。……ボウズとチビっ子は、親のところに帰ってミルクでも飲んでな」


「だ、誰がチビっ子だっ!!」

「私はチビじゃありませんっ!」


 二人が必死に抗議するが、もともと幼い見た目に、着替えさせた結果、実年齢より幼く見えてしまった」。マントを着たロロは服に着られている感満載だし、町娘風のライカはただの子供だ。


「……あはは、ルーシュ君。これ、潜入以前の問題だね」  イリュウが腹を抱えて笑い出す。


「笑い事じゃないぞ」  結局、門番との押し問答の末、これ以上騒ぎを大きくするわけにもいかず、俺たちは二手に分かれることになった。


「……分かったよ、行けばいいんだろ! 行けば!」  

 プライドを傷つけられたロロが、ライカを連れてぷいっと背を向けた。

「門から少し離れた『中間の街』で待機してろ。勝手に動くなよ」  

 俺の言葉に、二人は不貞腐れた様子で人混みの奥へと消えていった。


「いきなり退場。……まぁいいよ、あの二人なら中間街で大人しくしてるでしょ」

 イリュウはそう言って、再びヘラヘラとした表情に戻る。だが、その目はすでに入り口の門番を通り越し、都市の深淵――潜伏中のクシィたちがいる場所を見据えていた。


「さて、ルーシュ君にヴィニー君。ここからは『向こう側()』たちの時間だ。……行こうか」


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