ヴァーミリオン王国編 終幕・・・新たな仲間
### 言葉を失った奇跡
本当に魔物が襲っていたのかというほどまでに、ヴァーミリオン王国は元通りの姿を取り戻していた。
瓦礫は消え、城壁の傷は癒え、王妃様の容態もすっかり回復した。全国民が驚愕し、言葉を失って空を仰ぐ。この修復は、単なる回復魔法ではない。
**時空魔法**。世界を変える力を秘めた、禁断の魔法だ。
「俺がどんなに望んでも得られない魔法の一つ」
ライカが幼少期に無意識に行っていた**『時間戻し』**。そして、俺だけが使える【転生魔法】。魔法は万能ではない。死者は蘇らないし、いくら時間を戻そうが世界線は戻らない。だが、世界に干渉はできる。その強大な力ゆえに、クロノスは誰にもこの魔法を教えることはないし、おれとも契約する気はないのだろう。悪いやつじゃないので仕方ないと思っている。
しかし、そのおかげで我々の成果は完璧だった。ライカも孤児院の友達と少し打ち解けたようで、本当に良かった。
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### リック王の決断と、帰還の途
バイオレット校の面々がリック王の要望通りの成果を残し、3ヶ月に及ぶ長期留学は終わりを迎えた。
「とうとうお別れかぁ」と、ロロが長い留学を振り返る。
リリスはいつものココナッツジュースを飲みながら
「これもう飲めないのかなぁ?」と残念そうだ。
ヴィニーが「お土産とか流通ルート検討しましょう」とリリスと話している。
その傍ら、アーサーがおれを問い詰める。
「で、今回も大袈裟にしましたけど、あの城壁や傷までも癒えるという軌跡、あれは何で、どう対処したんですか?」
「ははっ・・・」おれはリック王に言われたことを思い出す。
騒ぎを聞きつけ帰ってきたリック王も驚いていた。
「これまた賢者様には驚かされますな。時空魔法ですか?」
私は不甲斐ない結果に謝ったが、リック王は寛大だった。
「結果は上々。ライカの件も含めれば予想以上の成果ですよ」
そして、おれが経緯を言いづらそうにしているのに気がついて、彼はこう言ってくれた。
「なにか事情があるのでしょう。賢者様の活躍で間違いないのですから私どもは聞きません」
「良いんですか?どう説明するつもりで?」
「**レイラン教の奇跡**とでもしておきますよ」とリック王は微笑む。
「ここは信者が多いですし、こういう噂が広まれば賢者様にも利点があると思いますので」
「賢者の奇跡だとよ」とおれはアーサーに伝えた。
嘘はいっていない。
「全くまた1人で無茶するんですから」と呆れるアーサー。
この3ヶ月で、バイオレット王国とヴァーミリオン王国の技術交流は大きく進んだ。模擬戦会場の建設も決まり、「これでここももっと強くなるぞ」とおれは魔王討伐へ着々と進むこの世界に希望を描いた。
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### 旅の邪魔者、そして隠された血筋
「なぁんで!帰りも徒歩なんだよルーシュ!!」
ロロの悲鳴が響く。馬車はお土産やら王国への荷物で満載だ。護衛はアーサーとヴィニー。
「なんでおれはこっちなんだよヴィニーお前変われ」とロロが迫る
ヴィニーは「ええぇ今更ですか?もう準備しましたよ~」と嫌そうな顔。
「お前長い学園生活で立場を忘れたようだな」
ロロが睨むと、ヴィニーは「ギクッ」と表情が固まる。
「はいはい喧嘩はそこまで。ロロも護衛で良かったけどね。この**お邪魔虫っ**」とリリスもおれ達徒歩組だ。
「ルーシュおれこんな空気で帰るのやだぁ」とロロは久しぶりの弱気モードだ。
「さて10日間ゆっくりと帰るとしますか!」とおれが1歩目を歩き出した、その時。
「置いていくつもり?」
後ろから声がした。ロロは絶望的な顔で後ろに立っている**ライカ**に言った。
「なんでお前がいるんだよ・・・」
「もう吹っ切れたし、あのままあっちにいても気まずいだけよ」
そういうライカはそそくさと歩いていく。
「あなた達も最初はごめんね。まぁ仕方ないって思ってくれてるからこれくらいでいいわね?」
「なんでこんな偉そうなんだよ」とロロがツッコミを入れると
ライカは立ち止まり、改めて全員に向き直った。
「改めてよろしく。**ライカ・リーベルト**よ。よろしく」
「ん?リーベルト??」おれは思わず聞き直した。
「そうよ。言わなかったっけ?」
「い、いや聞いてない・・・」
「なにか?」
不思議そうな顔をするライカ
「自分の祖先のこと知ってるのか?」
「ううん知らない。有名人?」と答える。
「いや別に・・・」おれは呆気にとられた。
**リーベルト**。
大精霊クロノスを探しているときに出会った南の辺境の地出身の**大魔道士ホルス・リーベルト**。時空魔法を学んだおれの師だ。転生魔法を完成させたのも彼がいたからこそ。名前を聞くまで忘れていたが、ライカはまさかその血筋なのか。
「全くクロノスめ。お前というやつは」
どこかでバカにして笑ってるんだろう。
「なんか言った?」ライカは俺の独り言を聞き返してきた。
「今後とも宜しく、**ライカ**」
「また邪魔者が増えた・・・」落胆するリリス。
こうしてヴァーミリオン王国の発展に協力したおれ達は、新たな同行者を加え、**魔王討伐という大いなる目標**に向かって、さらに大きく成長していくことになる。
ザッ・・・
離れた後方で、微かな足音が響いた。
「誰がレイラン教の奇跡で納得するんだよ。バイオレット学園の【ルーシュ】・・・こいつ一癖ありそうだな」
静かに笑う声が、旅立つ一行の背中に向かって囁かれた。
ヴァーミリオン王国編 完




