絶望の撤退・・・最強後衛との連携
### 賢者の誤算と後悔
「そうこないとな、こっちとて不完全燃焼なんだよぉ!」
その言葉と同時に、ものすごい魔量を放出するスザク。彼は一瞬でアラバマの攻撃範囲に踏み込み、**音速を超える魔法**で、アラバマに攻撃を放った。
「**煩わしい男を始末する**のも、私の役割でね!」
アラバマは待ち構えていたかのように、両の掌から黒い魔力の奔流を放つ。スザクの攻撃を受け流す。その黒い奔流は、スザクの放った魔法を呑み込み、**腐敗**させて霧散させた。
遅れてメロとキキが到着する。
「こいつだけでも倒せば多少は言い訳できますよね」メロも武器を構え、向き直る。その顔には恐怖よりも、**仲間を討たれた怒り**が勝っていた。メロもまた、アラバマの裏切りを許せない。
「ルーシュさん指示を」キキもやる気のようだ。回復役の彼女は、多くの負傷者を目の当たりにし、その怒りをアラバマにぶつける覚悟を決めていた。
「追っ手が来る。早めに決めないとこっちが危ない」
### 賢者チームの反撃
「キキ! メロをサポートしろ! 攻撃はスザクに任せ、お前たちは**防御と妨害**に集中しろ! アラバマの魔力は通常の魔法ではない。前線は俺だ!」
俺は即座に指示を出した。アラバマが放つのは、魔物の呪いが混ざった**腐敗の魔力**だ。広範囲に展開すれば、周囲の魔物残滓を呼び寄せ、アラバマの呪いを加速させる危険性がある。
「スザク! おれがこいつを抑える。おれのことは気にせず攻撃し続けろ」
「言われるまでもない! お前のお守りなんて、ごめんだからな!」
スザクは不敵に言い放ち、一歩後退した。彼の周囲の空間が歪み、**灼熱のマグマ**のような炎の魔力が収束していく。天才後衛職であるスザクの魔法は、発動が速く、威力は計り知れない。
「メロ! **加速**と**防御強化**を自分と俺に! その後、アラバマに肉薄する! 攻撃は俺が引き受ける。お前は**動きの補助と拘束**に専念しろ!」
「わ、わかりました! ルーシュさん、無茶しないでくださいね!」
メロは即座に補助魔法を展開。加速された俺とメロは、防御魔法を重ねた状態で、アラバマに向かって突進した。
「死に急ぎたいか!」
アラバマは鉄棍を取り出し、呪い魔力を纏わせて迎え撃つ。
「お前が俺に勝てるかよ!」
俺はアラバマの呪い魔力を帯びた鉄棍を、いつものように指を鳴らし、居合斬りで斬撃を飛ばし対処する。
**ドゴン!** という鈍い音と共に、俺の防御魔法が悲鳴を上げ始める。
「ルーシュさん、くそっ!」メロは俺の背後から、光の鎖をアラバマの腕に巻きつけようとする。
「煩わしい!」
アラバマは呪い魔力で鎖を腐敗させ、それを振り払う。だが、メロは怯まず、再び魔法でアラバマの足元を拘束しようと試みた。俺とメロの連携が、アラバマの動きを**一点に釘付けにする**。
### 天才の炎と賢者の分析
(アラバマの呪いは、確かに強烈だ。だが、俺たちの攻撃を**防御ではなく相殺**に頼っている。呪いによって再生力は高いが、魔法障壁の練度は高くない。そして、奴の体はすでに**炎のように熱い!**)
俺は空間魔法でアラバマの体表の魔力密度を計測する。呪いの魔力は、内部で激しく燃焼し、アラバマの肉体を限界まで高めている。**冷気を弱点**とする呪いではないが、**同系統の熱**で飽和させれば、再生を遅らせられるかもしれない。
「スザク! 準備はできたか!?」俺が叫んだ。
スザクは、両手を天に掲げ、空間に渦巻く炎の魔力を、一つの巨大な球体へと圧縮していた。その熱量は、周囲の空気を歪ませ、地面の石を溶かし始めるほどだ。
「フン。待たせやがって! **雑魚掃除に、最高の魔法**を使ってやる!」
スザクが放ったのは、**真紅のマグマ**そのもののような、圧縮された炎の塊だった。
「**殲滅術式――マグマ・テンペスト**!」
アラバマは、その膨大な熱量を前に、顔色を変えた。呪いの魔力で必死に防御障壁を張り巡らせるが、その規模はスザクの魔法には及ばない。
「キキ! **スザクを護れ!** 反動に備えろ!」俺は指示を飛ばす。
「はい!」キキは素早くスザクの周囲に何重もの防御魔法を展開した。
マグマの奔流は、俺とメロが退避する間もなく、**アラバマを直撃した**。
**「グオオオオオオッ!」**
アラバマの絶叫が響き渡る。マグマは呪いの黒い魔力を焼き尽くし、アラバマの巨体を包み込んだ。呪いによる再生力も、マグマの絶対的な熱量には追い付かない。肉が溶け、黒い血が蒸発していく。
### 賢者のフィニッシュとアラバマの最期
マグマが収束したとき、アラバマは全身が炭化し、かろうじて立っている状態だった。呪いの魔力はほとんど消え失せ、彼から発せられるのは、**微弱な魔物の残滓**だけだ。
「メロ! 今だ、**拘束**!」
「了解!」
メロは最後の魔力を振り絞り、アラバマの四肢を完璧に光の鎖で拘束した。アラバマは、最早鎖を腐敗させる力すら残っていない。
「スザク! **最後だ。全てを終わらせろ!**」
スザクはマグマを放った反動で息切れしていたが、再び両手に魔力を集中させた。今度は、一点に集中させた**純粋な熱線**。
「**死ね、裏切り者!**」
極限まで収束された熱線は、アラバマの胸を貫き、彼を背後の瓦礫へと吹き飛ばした。
**ドスッ**、という鈍い音と共に、アラバマの体から、**呪いの黒いオーラ**が一気に抜け落ちていく。彼の狂気に満ちた表情は消え、代わりに**空虚な、元の顔**に戻った。
「…賢者様……私たちは…疑ってました…あなたのことを…信用できなかった……」
アラバマは、意識を失う直前、ガルと同じように途切れ途切れの言葉を呟いた。その言葉は、俺にだけ届いた。急に現れた俺のことを信用できなかったこと2人でこうするしか方法がないと、あがいていたことが容易に読み取れた。ガルが最期に残した**「王国の根に」**という警告、アラバマもまた、**呪いの拡大を防ぐため**尽力していたのか。
アラバマは、そのまま崩れ落ち、動かなくなった。
アラバマが倒れたことで、周囲の追撃部隊の動きが完全に止まった。彼らの体から漏れ出ていた黒い呪いの魔力も、急激に弱まっている。彼らは、**中枢**を失った**ただの傀儡**に戻りつつある。
(アラバマは倒した。ガルから託された真実、そしてアラバマの最期の言葉……呪いの根源は王都、あるいは王族そのものにまで及んでいる)
俺はスザクたちに駆け寄った。
「キキ、すぐに全員の回復。メロはアラバマの遺体から呪いのサンプルを採取しろ」
「呪いは、想像以上に深く、早く広まっている。俺たちは、ガルが命を懸けて守ろうとした**「王国の根」**の真実を、王に伝えなければならない」
俺は、アラバマの遺体を前にして、今後の行動を指示しようとした。しかしスザクと俺に割って入ってきたのは、アラバマのもとに向かったメロだった。
「どうしたメロ!」
声をかけながら振り向くと、そこにはガルが立っていた。全身の傷は癒え、漆黒の髪と瞳は、以前よりも深く、おぞましい光を放っている。その隣には、先ほどまで魔力が空っぽになったと思われたアラバマが、まるで糸が切れた人形のように立っていた。




