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七度転生した大賢者、今世では剣士として無双します 〜魔法全盛の世界で剣を選んだ理由〜  作者: ねむのき 圓
3章 魔王軍進撃と失った英雄

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裏切りの血・・・壊れた英雄の絶望

### 討伐隊、レイモンドへ


 夜明けの角笛が鳴り響き、討伐隊は最後の進軍を開始した。空にはまだ、夜の残滓のように重い鉛色が張り付いている。俺は学生チームと共に、精鋭隊に続く本隊の中ほどを進んでいた。


(ガルは死にたがっている?俺の分析では、奴は**前回レイモンドでなにかがあった**討伐隊全体を道連れにする必要があるなにかが)


 俺の隣のスザクも、一切の私語をせず、武器を握りしめている。昨日伝えた「ガルを殺す」という覚悟は、彼の目の中で冷たい炎となって燃えていた。


 数時間後、レイモンドの街の残骸が視界に飛び込んできた。建物のほとんどが瓦礫と化し、黒い煙が立ち上っている。地獄の光景だった。


 先行していた精鋭ギルド部隊が、街の入り口で数百の魔物と接触した。魔物は予想通り、**鎧をまとった騎士の姿**をしており、その中央には、前回の討伐隊を壊滅させた**巨大な鎧の騎士魔物**が仁王立ちしていた。


 ガルの指示通り、精鋭隊は魔物の群れに突入し、距離を詰めたところで**待機**した。戦闘は始まったが、精鋭隊はただ防御に徹し、魔物を引きつけることだけに集中している。


 本隊は300メートルの間隔を空け、後続から続く。俺たち学生チームは、精鋭隊から約500メートル後方、本隊の先頭集団に位置していた。


(精鋭隊が限界を迎えるのは、あと5分。その瞬間、ガルは動く。奴が自爆する前に、精鋭隊を救うフリをして、奴の行動を阻害する)


 俺は学生チームの教師役である傀儡に、即座に指示を出した。


「全隊に緊急伝達。総司令官より指示変更。学生部隊は、精鋭隊の側面に回り込み、**後方援護の魔法陣を敷け**。キキ、メロ、スザク、行くぞ」


「了解!」メロが答える。


「フン」スザクは不敵に笑い、すでに武器を構えていた。


 俺たちは本隊の横を通り抜け、精鋭隊の側面へ向かう。そのとき、本隊の中央、精鋭ギルド部隊のエリアから、**強い魔力の脈動**を感じた。


(来たか!)


### 内部崩壊と狂気の露呈


 精鋭隊が鎧の騎士型魔物の攻撃で半壊し、ついに限界を迎えたその瞬間――


「**全隊、討伐隊を攻撃せよ!**」


 甲高い声が響き渡った。声の主は、総指揮官代理、**アラバマ**だ。


 本隊の中央にいたはずのアラバマとその周囲にいたギルド精鋭隊300名が、一斉に**味方である騎士団へ魔法を放った**。その魔法は、魔物との戦闘で疲弊していた騎士団の防御陣を容易く打ち砕き、一瞬で数百人の死傷者を出した。


 アラバマの体からは、これまで隠されていた**黒い闇の魔力**が噴き出していた。顔には狂気の笑みが浮かび、もはや人の顔ではなかった。


「フハハハ! 最高の舞台だ、ガル様!」アラバマが叫ぶ。


 討伐隊は、**完全にパニック**に陥った。前は強力な魔物、後ろは味方だったはずのギルド部隊による攻撃。騎士団は、誰が敵なのかわからず、同士討ちの混乱が始まった。


「なっ!?何が起きた?アラバマ!お前ぇぇぇ!」

おれは精鋭部隊の救出のために前線にきており中間位置での裏切りに対応ができなかった。

最初から中央にいれば対処ができただが、ガルの作戦は俺を前線に追いやる口実だった


 そして、その混乱の中心で、ガルが静かに馬を下りた。


「アラバマ、予定通りだ」ガルは静かに応える。


### 壊れた英雄の咆哮


 ガルは、精鋭隊と魔物の戦場、そして味方を攻撃するアラバマの間の中間地点に立った。


「これを見よ、バイオレット王国よ。これこそが、**真の救済**だ!」


 ガルは絶叫した。その瞬間、彼の体から**黒い渦**のような魔力が噴き出し、白い髪は一瞬で**漆黒の闇**に染まった。王が言っていた「違和感」が、**最悪の形で具現化**したのだ。


 ガルは、**鎧の騎士魔物**に向かって突進した。最強と謳われた力が味方に降り注ぐ


 魔物の横に並び討伐隊と敵対体制を取るガル



### 賢者の撤退命令とスザクの挑戦


「ルーシュ、どうする!」スザクが俺を振り返る。その顔には、**怒り**と、**裏切られたことへの悔しさ**が浮かんでいた。


「撤退だ。全隊に聞こえるように叫べ。この戦場は既に**壊滅**している!」


 俺はスザクを止め、大声で魔法の増幅器を使った。


「**騎士団、ギルド部隊! 全員、戦場を離脱せよ! 総司令官ガルは、裏切った! 状況はレイモンド陥落!**」


 俺の声は戦場全体に響き渡り、混乱している兵士たちに、**「誰が敵か」**を明確に示した。


 騎士団の一部は、この情報を元に、アラバマ率いる裏切り者たちへ攻撃を集中させ始めた。しかし、アラバマ部隊の戦力は強く、騎士団は劣勢に立たされている。


「行くぞ、スザク!」


「待て! 俺は、あの男を……」スザクはガルを討つため、漆黒の渦に向かおうとする。


「止めろ、スザク! お前の実力でも、今のガルとアラバマ、そして魔物を同時に相手にすることはできない! **死ぬのは、奴の望み通りだ!**」


 俺はスザクの腕を強く掴んだ。その瞬間、ガルと鎧の騎士魔物が激突した衝撃波が、俺たちを襲った。


「キキ! 防御魔法最大!」


 キキの精一杯の魔法によって、俺たち学生チームは何とか吹き飛ばされるのを防いだ。


「くそっ!」スザクは地面を叩きつけた。悔しさに歯を食いしばっている。


(このままでは、全滅だ。俺がガルを止めるには、何が必要だ? 今、手持ちの手段では、奴を殺すことも救うこともできない!)


「メロ! キキ! 負傷した騎士団員を回収し、撤退する! **レイモンドは放棄する!**」


 俺は、レイモンドの街が、**敵によって乗っ取られ、討伐隊が完全に敗北した**ことを宣言し、生き残りを集めての**凄絶な撤退戦**を開始した。


---


### 絶望の淵で


 俺たちが精一杯の速度で撤退を開始して数分後、戦場の中心で、ガルの魔力が**急激に減衰する**のを感じた。


 俺が振り返ると、黒い魔力の渦の中から、ガルが騎士の魔物の土手っ腹に大きな穴を開けていた。


「**賢者よ……聞け……**」


 ガルの声は、喉を血で濡らし、途切れ途切れだったが、俺の耳にはっきりと届いた。


「**知っているだろ空白の五年……あの魔物に呪われた……奴の血が……俺を支配した……**」


 その言葉は、俺の全ての分析を覆した。狂気ではなく、**呪い**。死にたがっていたのは、**乗っ取られることへの最後の抵抗**だった。


「もう殆どが乗っ取られていた前回レイモンドに訪れたときに…

 王にすまなかったと助けらえなかったこと謝ってくれ」


 ガルの視線が、アラバマとその部隊、そしてレイモンドの街全体に向けられた。


「**呪いは……王国の、根に……賢者よ……リリスを……**」


 それが、ガルが最後に発した言葉だった。彼の体から、完全に魔力と生気が抜け落ち、彼は魔物と瓦礫の上に崩れ落ちた。


 俺は立ち止まり、その場から動けなかった。


(奴は……最後の最後まで、英雄だったというのか。俺は、その真実に気づけず、奴を「狂った男」として切り捨てようとした……)


 俺は深く息を吸い込み、**賢者としての自分の判断の限界**と、**ガルの悲劇**を胸に刻んだ。背後から、裏切り者のアラバマ部隊が追撃してくる気配が迫っていた。


「スザク、メロ、キキ! 全速力だ! ここから離れるぞ!」


 俺は立ち止まり、ガルが崩れ落ちた場所へ一瞥した後、逃げるしかなかった。レイモンドの地は、完全に魔物と裏切り者の手に落ちたのだ。


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