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七度転生した大賢者、今世では剣士として無双します 〜魔法全盛の世界で剣を選んだ理由〜  作者: ねむのき 圓
3章 魔王軍進撃と失った英雄

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崩壊の序曲・・・敗北した最強

### ギルド会議室の停滞


 前衛VS後衛の模擬戦から一ヶ月。


 学園内は変わった。後衛組の傲慢さは影を潜め、前衛組の地位は向上した。だが、それは新たな混乱を生んだだけだった。


(戦い方がわからない、か。そりゃそうだ)


 長年の序列で染み付いた戦略と意識は、一戦で変わるほど浅くない。ルーシュが賢者の文献や過去の戦術を授業に追加しても、現場の任務は逆に悪い結果として返ってきていた。


 ギルドマスターたちが集まる会議室で、総指揮官代理の**アラバマ**が、長い体を折り曲げるようにして、発言した。


「ん〜賢者殿。この現状どうするおつもりで?」


(俺のせいだとでも言いたいか、ノッポ)


「あんなイベントしてしまったせいでみんな混乱しているよなぁ。俺のせいでこうなったのはわかったし実践でなんとかしたいけど何千回実践するんだよって話だよな」


「信じがたい話ですが、各国の集まりでこの件を報告しました。ご存知の通り、どの国もこの戦略には後ろ向きですね」


 政治・外交担当の**バージニア**がニヤリと笑う。


「大きな戦いにでもなればまた違った結果が得られそうなものですが、犠牲の伴う戦争というのもしたくないですし」


 騎士団統括の**カロライナ**が、前衛軍の現状にため息をつく。


「そんな物騒なこと口にするべきではありません」


 唯一の女性、宗教《レイラン教》の**ミズーリ**が叱った。


「そういえば賢者様。最初に武器を探してほしいとのことでしたが、やはり私達の方で保管していることが確認されました」


 ミズーリの言葉に、俺は身を乗り出した。


「おっ、それでそれで?」


「いくら私の権限でも賢者様の遺品を持ち出すことが不可能でした。この件に関しては王の指示がない限り難しいという判断です」


「マジか……今度見せてもらえるかな?」


(今すぐではないにしても、魔王を封印するにも討伐するにも、あれは必須アイテムだ)


「学生が見れるようなものではなくルーシュさんを連れて行くことは無理です。でも……」ミズーリが言葉を濁らせる。


「でも?」俺は聞き返した。


「いえ、なんでもございません」ミズーリはそう言って出ていってしまった。


(何だ? 理由ありか?)


「ともかく今後もこのまま前衛と後衛の連携を基本として続けていく方向でよろしいですかな?」アラバマが言う。


「時間かかるのは仕方がない。ちょっとづつでも広げていこう」


(納得はいかんが、地道に進むしか無い)


 このときはまだ悠長に考えていた。あんな事が起こるとは誰も思わずに。


### 予期せぬ帰還


 俺は一旦学園のことは置いといて、魔王の動向を探っていた。闇夜以来、もう半年が経過している。


(手詰まりだ)


 魔王どころか、最初の**「ヴァージュの森」**の魔物以来、魔王の気配のある魔物が現れていない。グランドマスター・ガル率いる討伐部隊が各地で善戦し、魔物を抑えているのもわかっているが、王のことも一切進展がない。


「俺も討伐部隊で前線に行きたいなぁ。勝手に動くかな、どうしよ」


 何も掴めない状況に、俺は思い切って単独行動に出るしかないと考えていた。


 その時、**大きな角笛**が鳴った。


(討伐隊の帰還の合図……だが、今日帰る予定はなかったはずだ)


「何かあったか?」


 俺は思考を中断し、急いで王国に戻ることにした。


 案の定、王国では緊急会議がもう開かれていた。


「流石に勘はいいようですね」


 アラバマが言う。


「何があった?」俺は訪ねた。


 奥から声が聞こえる。


「たった今呼びに行くところでしたよ。賢者様」


 **妙に威圧感のある声。** グランドマスター、**ガル**だった。


「この件に関しましては私から報告させていただきます」


 ガルは、自身と部隊が北を目指した経緯、そして半月かかった拠点での**魔物の進軍停止**という異変について語り始めた。


 偵察隊が二隊、そして誰も帰ってこない。


「私が直に見に行くと、30km離れた場所で1体でした。たった1体の魔物がそこに居座っていたのです」


 その魔物のせいで、魔物も人間も片っ端から餌食になり、進軍が止まっていたという。


「私はこの状況が危険だと気づき、すぐに討伐に向かいましたが、向こうはそれよりも早くこちらに向かって攻撃を仕掛けてきたのです。今までであんなに早く強い魔物は見たことがなかった。消耗が激しく、私がいたにも関わらず討伐できなかった」


 **世界最強**と言われる男の声は、疲労で弱々しかった。


「何だそれ? どういうことだ?」


 俺がガルに近づき尋ねると、異様な光景が目に入った。


 そう、ガルが**ボロボロだったのだ。**


「見ての通りだ。失敗した。私がいながらだ。笑えるだろ?」


(まさか、ガルがここまで……)


 誰もが世界最強の敗北に恐怖の色を浮かべていた。


「なんとか離脱はできた。さっきも言ったがあの魔物がいる場所からある程度の範囲から出ると追いかけてこなかった。あのまま着いてきていたら全滅もあった」


 治療を受けながらガルが言う。最初に向かった二パーティー以外は、ガルのおかげで全員生存で戻ったらしい。


「それで? 今後は?」俺は戻ってきた経緯と今後を聞いた。


「一つ言えることは、あの魔物の索敵範囲が徐々に伸びていること。魔物の死骸を見ればすぐに分かった。それが時間なのか、殺した数なのか、気まぐれなのかはわからない。魔物が来なくなって10日、私共が急いで戻ってきた10日、合わせて20日以上は距離を伸ばしている。この10日でどこまで伸びたかはわからない」


「早急に手を打つしか無いか。周りの村や街は?」


「近い箇所から避難はさせている。レイモンドという街が一番大きくて、それまでになんとかしないと危険という状況だ」


 その時、会議室の扉が勢いよく開いた。


「ガル様!!」


 誰も通すなと言われていた会議室に、一人の衛兵が慌ただしく入ってきた。


 俺はすぐさま、その場から気配を消した。


「ガル様、伝令兵から大至急と!……」


 衛兵は息を切らし、恐怖に顔を歪ませて叫んだ。


「**レイモンドが落ちました。全滅です!**」


 慌ただしかった会議室は、一瞬で氷ついた。


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