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七度転生した大賢者、今世では剣士として無双します 〜魔法全盛の世界で剣を選んだ理由〜  作者: ねむのき 圓
2章 学園生活と前衛VS後衛

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優勝・・・前衛の絆

歓喜と困惑の試合後

 試合終了のホイッスルが鳴り響き、戦場は一瞬にして静寂に包まれた。勝利を知らせるアナウンスが響き渡るが、誰もがその結果に言葉を失っていた。


 前衛チームの勝利。それも、**生存者3名(ルーシュ、イリュウ、デン)**という、誰も予想しなかったメンバー構成での勝利だ。


 真っ先に立ち上がったのは、まだ魔力が回復しきっていないルーシュだった。


「イリュウ、立てるか?」


 イリュウは肩を借りながら笑う。「ああ、まさかデン君に助けられるとはな。ルーシュ、お前もなかなかの派手だったな」


「ま、結果が全てだ」


 その時、周囲から一斉に歓声が上がった。観客席にいた前衛組の生徒たちが、涙を流しながら叫んでいる。彼らにとって、この勝利は76対24という絶望的な序列を打ち破る、歴史的な出来事だった。


 だが、その歓声の中心にいたのは、ルーシュでもイリュウでもなかった。


「あいつ、まだ生きてやがったのか」ジャックが倒れた場所で、ロックが呆然と呟いた。


「ええ、数合わせの彼が、ですね」メロは冷静に眼鏡を押し上げた。


 主役は、リントに打ちのめされた後、ジャックの体力を回復させたまま、静かに意識を失っていたはずのデン君だった。


ヒーローインタビュー

 まもなく、試合を中継していた大型魔力スクリーンが、勝利者へのインタビュー画面に切り替わった。


 画面に映し出されたのは、ボロボロで泥まみれの服を着たルーシュとイリュウ、そしてその二人に挟まれた、顔面蒼白のデン君だった。


「わ、わたくし、ですか……?」


 インタビューアーの女性は興奮を隠せない様子でマイクを向けた。


「歴史的な勝利です! しかも、驚くべきことに、デン選手が最後まで生き残っていたことが、前衛チームの勝利を決定づけました! 今のお気持ちは!?」


 ルーシュはデン君の背中を軽く叩き、代わりに答えを促す。


「ひぃっ、あ、えっと……」デン君は震えながら、絞り出すように言った。


「あの、ぼくは、その、何もしていません。ぼくはあのとき、リント選手に殴られて、ほとんど気絶していて……たぶん、ジャックとルーシュが頑張っているのを見て、勝手に回復魔法が全力で発動しただけで……」


 正直すぎる答えに、観客席は一瞬静まり返った。


「いやいや、それが最高の貢献だぞ」ルーシュが笑う。


「リントの魔法を見破り、ジャックの回復に専念し、そして誰にも気づかれずに生き残る。これこそサポートの極意だろ」イリュウもそう言って微笑んだ。


「そうよ! 最後まで生き残ることが、サポートの最大の使命! デン選手、あなたは最高のヒーローです!」インタビュアーは、デン君の消極的な答えを最高の美談へと変換した。


 デン君は困惑しきった顔で、ただ立ち尽くすしかなかった。彼は確かに何もしていなかった。ただ、ジャックを抱えていた時に、回復魔法を最大出力で発動したまま意識を失い、運良く誰にも発見されなかっただけなのだ。


崩壊する学園の評価

 翌日、学園の空気は一変した。


 常識として固定されていた**「後衛至上主義」**が、今回の結果によって根底から揺らいでいた。


 これまで後衛組は、優秀な魔法使いが多いため学園内のランキング上位を独占し、「攻撃力が低い前衛は、後衛の盾であり、囮である」という評価を公然と示していた。


 しかし、蓋を開けてみればどうだ。


《絶対的な力の敗北》: 1位のスザク、3位のリカルナといったトップランカーが、前衛のチームワークと、警戒はしていたがルーシュの機転よって完全に打ち負かされた。

ルーシュという規格外の存在が現れ、従来の魔法戦のセオリーを全て破壊した。


《最弱の勝利》: そして何より、61位という最底辺のデン君が、誰にも気づかれずに勝利の生き証人として残ったという事実。


「ランキングなんて、全く意味がなかったんじゃないか」


 そんな噂が学園中に広まり始めた。力や魔法の序列ではなく、「戦い方」、「戦略」、そして**「チームワーク」**が、この世界で最も重要な要素であると、学生たちは思い知らされたのだ。


 特に、ランキング中位〜下位の、これまで自信を失っていた前衛組は、歓喜に震えていた。


「よし、次は私たちだ! ルーシュさんに続いて、私たちも自分たちの力を見せつけてやる!」


 この勝利は、前衛組の意識改革を引き起こし、学園全体のパワーバランスは、緩やかに、だが確実に崩壊を始めていた。


控え室での謝罪

 戦いを終え、治療を終えたメンバーたちが集まる控え室。ジャックは包帯だらけの身体を壁にもたせかけ、リリスはロックの肩にもたれて居眠りをしている。


 メロが静かに回復薬を飲み干すと、デン君が震えながら、ゆっくりと立ち上がった。


 彼の顔は、ヒーローインタビューの時よりも青ざめていた。彼はみんなに向かい、頭を深く下げた。


「皆さん……本当に、本当に、ごめんなさい」


 場が静まり返る。ジャックとリリスも、何が起こるかと目を覚ました。


「ぼくは……試合の前日、すべての作戦をリント選手に話してしまいました」


 その告白は、控え室の空気を凍らせた。


 ジャックは壁から離れ、立ち上がろうとした。その顔には怒りがにじんでいる。ロックは目を閉じ、メロはただ静かにデン君を見つめていた。


「リント選手に脅されて……いや、違います。自分が弱かっただけ立ち向かえない自分の弱さのせいで、全部話しました。どのメンバーが、どのタイミングで、どう動くのか……全部、後衛チームに筒抜けでした」


 デン君は声を詰まらせた。「ジャックパーティーやリリスちゃんのパーティーが、序盤で狙い撃ちされたのも、ルーシュが一度戦術を崩さざるを得なかったのも、全部、ぼくのせいです。ぼくが、ぼくがチームをバラバラにするきっかけを作ってしまったんです……」


 彼は深く頭を下げ、身体を震わせた。この勝利の興奮も、彼にとってはただの罪悪感を増幅させるだけだった。


 静かに聞いていたルーシュは、デン君の前に進み出た。


 ジャックが口を開きかけたが、ルーシュは静かに手を上げた。


「……そうか」ルーシュは静かに言った。その声には、驚きと、自分自身への苛立ちが混じっていた。


「リントが事前に、お前を脅していたことには気づかなかった。模擬戦という気の緩みがあった。スザクの動向にばかり気を取られて、脇が甘かったのは、俺の落ち度だ」


 ルーシュは自らのミスを認めた。その正直さに、メンバーたちは息を飲んだ。


「だがな、デン」ルーシュは再び顔を上げさせた。その目には、強い光が宿っている。


「お前が情報を漏らしたせいで、俺たちは序盤、完全に劣勢になった。それは事実だ。だが、お前の回復魔法の希少性は、その劣勢を覆すための、最も重要な保険でもあった」


 ルーシュは淡々と語る。「お前は、最も臆病で、一番格下だ。だからこそ、リントはお前が情報を漏らした後、お前の存在自体を、完全に無価値なものとして見捨てた。それが奴らの慢心だ」


「メロの作戦と、全員の奮闘。そして、お前が誰にも気づかれずに倒れていたこと。お前の行動のすべてが、結果的にリントの油断と傲慢さを最大限に引き出すための、最高のエサになったんだよ」


 ルーシュはデン君の頭を、ポン、と軽く叩いた。


「お前は謝る必要なんてどこにもない。俺はお前の臆病さも、弱さも、すべて承知の上で、この勝利のために、お前の回復魔法の希少性のゆえの油断を利用した。お前が仲間を危険に晒した分、その倍以上の価値を、お前はチームにもたらしたんだ」


 ジャックは腕を組み、ニヤリと笑った。「なるほどな。裏切り者も、使い方によっては最強の駒ってわけか。まあ、ルーシュが気づいていなかったとしても、結果的に勝ったんだ。水に流すぜ、デン。次はしっかり立てよ」


 デン君の目から、大粒の涙がこぼれ落ちた。それは、自分の過失をリーダーに認めさせつつも、その過失さえも勝利の糧に変えてくれた、絶対的な信頼とリーダーシップに対する感謝の涙だった。


勝利の祝宴は肉の山で

「さて、話は終わりだ」ルーシュは手をパンと叩いた。


「怪我人ばかりだし、疲れているのはわかるが、今日は祝勝会だ。学園のカフェテリアなんて、ダサい場所でやるつもりはない」


 リリスが目を輝かせた。「わーい! どこへ行くの? 高級レストラン?」


「いや、違う」ルーシュは不敵に笑う。


「俺たちが勝ったんだ。勝者が欲しいものを手に入れる。そうだろう?」


 ルーシュは懐から、一枚の紙を取り出した。それは、学園の敷地の最深部にある、許可なく立ち入れないはずの「特別食材保管庫」への入庫許可証だった。


「どこでこんなものを……」メロが驚きを隠せない。


「最大の偉業だ、大抵のものは手に入るんだよ。さて、皆に聞く」


 ルーシュはそう言って、改めて仲間たちを見渡した。ボロボロだが、その目には確かな勝利の光が宿っている。


「学園最強の勝利の祝宴に、前回はイタリアンだったし~?」


「肉!」ジャックが即答する。


「肉!」リリスが目を爛々と輝かせる。


「私はフルーツと、最新の魔法書が……」メロが言いかけると、ルーシュはメロを遮った。


「却下! 勝利には、肉だ。それも、この世界で最も美味しく、最も希少な肉だ。」


 ルーシュはデン君に向かって手を差し出した。


「デン、お前は最高のヒーローだ。お前の好きなように肉を食え。さあ、行くぞ! 学園のルールを破る、最高の肉パーティー会場へ!」


 デン君は、恐る恐る立ち上がった。彼の心の中の罪悪感は、ルーシュの言葉によって救われていた。それ以上に、最高の仲間たちと勝ち取った勝利の喜びが、彼を満たしていた。


 ボロボロの前衛チームのメンバーたちは、新しい時代を築くための第一歩として、夜の学園を、肉の山を目指して歩き出した。


前衛 VS 後衛 編

  ~完~

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