最終局面・・・アーサーの戦い
驚愕:三隊長の強襲
ゴォオオオオオオン!
粉塵が舞い上がる中、スザクは瞬時に跳躍して爆撃を避けていた。無傷だ。
「やぁやぁ、スザク〜。前の続きやろうよ」
もう一人、イリュウがへらへらと姿を現す。
「すまない、防衛線が抜かれた」
スザクの取り巻きの精鋭2人も合流し、これで後衛の主力は勢揃いだ。学園ランキング1位、3位、4位、5位が顔を揃える。戦場は一気に最終局面に突入した。
「待て待て、状況がつかめん」
俺は予想外の援軍に思わず戸惑いを隠せない。
「ルーシュがこっちに魔法で飛んでいったって、メロくんに聞いて、みんなで強行突破してきたんだよっ」リリスが声を弾ませて答える。
「流石に全員でって訳にはいかなかったから、犠牲を払ってきてしまったがな」ジャックの顔には、苦渋の色が浮かんでいた。
その時、モニターが冷酷な数字を映し出す。ピコン。
前衛8人、後衛12人。
「多分、アーサーとメロが下で3人抑えている。さっさと大将を取って、終わりにしようじゃないか」
ジャックの猛烈な掛け声とともに、リリス、ロック、イリュウ、ジャックが一斉に襲いかかった。
後衛組も即座に魔法で迎え撃ち、距離を取ろうとする。
「おい、散れ!」
スザクの一言で、取り巻き3人を除く5人が一斉に山の下へ向かった。
(なるほど、アーサーとメロを潰せば、こっちは一気に5人。残りの後衛8人が逃げ切れば、勝利確定というわけか)
「ジャック、ここは任せる。俺は下の援護に行く」
「おう、行ってこい。美味しいところは俺たちに任せとけ。ただし、死ぬなよ」
「気をつけろ」
俺は再び跳躍し、山の下を目指して加速する。
突貫:孤軍奮闘の二人と、賢者の非情な作戦
後衛組が陣取っていた山脈の真下で、ギリギリの攻防を繰り広げていたのは、やはりアーサーとメロだった。
「ルーシュさんっ!」
「間に合った、大丈夫か?」
「ギリギリですよ! 最初からいなくなるんですから、焦りますよ。なんで本陣に単騎殴り込みに?」メロが息を切らして抗議する。
「単騎じゃねぇよ。デンも居ただろ」俺は笑いながら答える。
「デンはあそこでは戦力外です! それに、なんで連れて行ったんですか?」
「酷いなぁ。あいつ、まだ生存して上で戦ってるんだぞ。なんとなくだよ」
今にも『ひぃぃ助けてぇ』という声が聞こえてきそうだが、俺はデンの裏切りと後衛のルール違反については口をつぐんだ。その報いは、今からデン自身の力で受けてもらうつもりだ。
「8対3だ。どうする?」
「そうですね。アーサー先輩に突っ込んでもらって、覚醒してもらうのが先ですね」
「なに、さらっとやばいこと言わないでください! 覚醒する前に消えてなくなります!」
その時、魔法攻撃が土砂降りのように降り注いだ。下級魔法だが、7人からの集中砲火は流石に厄介だ。
「アーサー、お前の変身条件教えろ」
「はいっ。まず一定量まで《魔晄》を溜めます。これは敵の魔力を媒体にする青白い光で、攻撃・防御どちらでも発生します。攻撃は1m以内じゃないと出ません。防御はうまくこの篭手で防ぐ必要があります」
「よし、あとどれくらいで貯まる?」
「多分、あと2割です。でも下級魔法ばっかだと、まだまだかかりますが、上級なら1発でいけます」
「わかった。メロ、ついてこい」
「はい!」
「アーサー、俺らは5人引き連れる。それでわざと3人を無視するから、お前はその3人の攻撃を受けろ。多分、アーサー一人なら上級撃って決めてくるだろ。それを食らって覚醒しろ」
「ちょっと!? 防げないとかミスったらどうするんですか! 防がないといけないわけで、撃たれたらオッケーじゃないんですよ!」
「その後はまた2人で考える。ありがとな、アーサー」
「待って待って、早い早い、諦めんの早くないですか!?」
メロと俺は、いじられキャラのアーサーをからかいながら、思わず笑いをこぼしてしまった。王族だが、こういう場面では最高に頼りになる男だ。
「どっちにしろこの状況、お前頼みだ。覚醒したら暴れろよ」
そう言って、俺とメロは散らばっている5人を巧みに誘導し、アーサーから隔離した。
「さすが本陣に居た奴等だ。強いな。それに隠れているから、全然場所がわからん。後衛の特性をうまく使われてるな」
「そうですよ。攻撃してもしても、どこにもいないんすよ」メロが焦燥のため息をつく。
「じゃぁ後衛なら、どこから攻める?」
「見つかりにくい場所……上とかですね」
「そうだな。こいつら遠隔魔法使いがいる。攻撃場所を別のところから撃って、遠隔魔法であらぬ場所から攻撃し、居場所をわからなくしている」
「しかし、無意識だろうが、居場所から遠ざけている感じがあるな」
パチンッ。
俺は剣を構え、直感的に怪しい場所に鋭い斬撃を打ち込む。すると、突然攻撃の手が止まった。
やはり、後衛組には遠隔魔法使いがいた。敵は、使用した魔法を別の場所から放てる魔法陣をあらゆる場所に仕掛け、安全な場所から攻撃し、その魔法陣から攻撃しているように見せているのだ。魔法陣の数も多く、詠唱も早い。そして正確にこちらを追い詰める巧妙な布陣だった。
「おお、流石ですね」
「でも、避けられて場所を変えられた。避けられなくする必要があるな」
「メロ」
(ゴニョニョ)
俺は作戦を伝えた。
覚醒:燃える龍を食らう騎士
「なんなんだよこいつら、本当に学生かよ! 上級魔法とか、大人になってから使えよ!」
アーサーは愚痴をこぼす。
その時、アーサーの目の前に大きな燃える龍が咆哮と共に現れた。
「地味にかっこいい魔法だな、もう!」
逃げながら、アーサーはこの龍の攻撃を交わす。しかし、防ぐのが難しく、逃げるのが精一杯のようだった。燃える龍は15mほどの巨体で、まるで蛇のように追いかけてくる。アーサーはスキを見て殴りかかるが、龍の熱で近づけず、ダメージを与えられない。
「こんなん、変身してから戦う魔法だって! なんで変身するためにこれと戦ってるんだよ、おかしい!」
アーサーの独り言が響く。無茶振りされているが、助けが来ないことも知っている。
「一か八かだ。おれが先かお前が先か、勝負だ!」
アーサーは走り出し、木々を使って10mほど駆け登った。そして、大きくジャンプする。龍は真下から追いかけてきており、アーサーを喰らおうと大口を開けていた。
「いくぞ! チャージ・ギア・ブルー!」
そう詠唱すると、右手いっぱいに青白い光が集まった。そのまま真下に向かって、龍の口の中に渾身の拳を力いっぱいに振りかざした。
ズガァァン!
龍の口の中でもがくアーサー。龍を半分ほど殴った時点で青白い光は消え失せ、意識が飛びそうになった。
「耐えろ、俺!」
龍の魔法による魔力爆発で、覚醒するまでの時間、この攻撃を耐え抜かなければならない。ここで消えるわけにはいかないと、彼は限界まで我慢した。
直後、龍の体内から青白い光が爆発的に放たれ、巨大な龍を内側から完全に消し飛ばした。
爆心地に立っていたのは、あの時の白い羽根を展開した騎士の鎧をまとったアーサーだった。最初から全開なのだろう、彼は3人の後衛を探して、狂ったように周囲を見渡す。
「おまえら、俺を食ったな……覚悟しとけ。ギア!」
そう叫ぶと、彼は隠れている後衛組の場所へ、音速で突っ込んでいった。




