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七度転生した大賢者、今世では剣士として無双します 〜魔法全盛の世界で剣を選んだ理由〜  作者: ねむのき 圓
10章 王【聖域】と魔王【混沌】

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魔族激突・・・魔導の王冠

「ガ、ガ、ガゼルさん、下がっ、てください……っ」

気弱な細い声を絞り出しながら、セズは聖域の神器を抱えるガゼルを背に、前方に立ちふさがった。

対峙するのは魔族のなり損ない、醜悪な姿をした「魔物」の群れ。

だが、世界から「出来損ない」と蔑まれるその存在こそ、彼にとっては絶好の獲物だった。


「……この醜悪な外見。やはり神の失敗作でしょ…」

絶望すら感じさせる冷めた呟き。セズがその指先で空間に漂う「魔術のほころび」に干渉した瞬間、魔物たちの肉体は弾ける様に崩壊し、血肉となって散らばる。


「あーん、おいしぃっ!!」

場にそぐわない明るい声が響く。人形師ピチが、魔物を食らい尽くす異形の人形を次々と生成していた。食った相手の能力を一時的にコピーし、魔力まで奪い取る無尽蔵の捕食者。


「お腹すいたぁ……。もっと美味しそうなのがいれば良かったんだけど」

彼女の全身に浮き出た「口」が、魔物たちをむしゃむしゃと文字通り蹂躙していく。


そして、その中心に立つ男、マティアス。

彼の周囲には不可視の隔絶領域が展開されており、侵入したあらゆる事象を無へと帰していた。その魔法を知る者は、この場に一人としていない。


「なかなかやる……。闇組織の頂点と謳われるだけのことはあるな」

王直属の一族、ガリアーノが業を煮やして動き出す。

「あちら(イザベラ)も派手にやっておる。我も本気を見せるとしよう」

練り上げられた極大の炎が、高密度の球体となって放たれた。目にも留まらぬ速さで着弾したそれは、大地を瞬時に融解させ、マティアスたちの足元を地獄のようなマグマの海へと変えた。


「えぇ……これ、反則じゃん……」

変わり果てた凄惨な光景に、セズが心底嫌そうに顔をしかめる。


「セズ、干渉できる?」

ピチの問いに、セズは力なく首を振った。


「わかんないけど……この魔法、ボールなのかマグマなのか中途半端。絶対、構成段階での『失敗作』だよ」


直後、彼の顔面に直撃コースで炎弾が飛来する。

「わぁ、びっくりした」

直撃したかと思われた瞬間、炎弾はセズの鼻先でただの煙へと霧散した。


「なんだ、やれるじゃない。なら盾役は任せたよ!」


ピチが笑いながら地獄の戦場を駆け出す。

「デカいおっさん! うっとうしいんだよ!」


無数の人形でガリアーノを包囲する。魔法が生成される瞬間の「予備魔力」を食い漁った人形たちが、マグマの爆弾となって次々と弾けた。


「面白い能力だ。だが、こちらの魔法に干渉してくるとはずるいと思わんか?」

灼熱の暴風を浴びながらも、炎の使い手ガリアーノは無傷。彼が大きく腕を振り下ろすと、ピチの足場が再び激噴するマグマへと変貌する。


「何がずるいよ! あんたのバカみたいな攻撃の方がよほど不愉快だよ!」

ピチは人形をクッション代わりに敷き詰め、辛うじて足場を確保する。


「魔法で地形を変える……その程度の域か。世界そのものに干渉する力こそ、超級魔法と呼ばれる所以だ」

いつの間にかガリアーノの背後に、死神の如くマティアスが立っていた。


「何が超級だ! そんなもの、御伽話だろうが!」

気配に反応し、反射的に裏拳を叩き込もうとしたガリアーノの視界が、突如として真っ暗に塗りつぶされた。


(何が起きた……? 我の声が聞こえぬ。いや、そもそも感覚がない。立っているのか、浮いているのか……存在しているのかさえ分からぬ。これは……死か? 何も感じない……これが…………【虚無】か)


「ぐはぁっ!!」

現実に戻されたガリアーノが、内臓をぶちまけるような勢いで吐血した。

「あれ? 生きてる。すごーい」

ピチが、ガリアーノを無慈悲に見下ろす。


(何が起きた! あの男か……あいつはやばい!)


ガリアーノは本能的な恐怖に駆られ、魔物の背後へと逃げ去る。だが、逃げ場はない。再び視界が闇に沈む。

「やめろ!! やめてくれ! もういい、ここは嫌だ!!」

何もない空間への恐怖に精神を焼かれ、全身の毛細血管が弾け飛んだガリアーノが地に伏した。


「馬鹿ね。敵の術中にハマってどうするのよ」

不意に現れたイザベラが、ガリアーノの頬を鋭く叩き上げた。


「はぁ、はぁ……何が、起きた……」

己の手を確認するが、血など一滴も流れていない。ガリアーノは自身の五感が無事であることに安堵し、荒い息を吐いた。


「脳に直接来るタイプね。脳筋のあんたにはおあつらえ向きね」


イザベラはガリアーノを立たせ、冷徹に敵を見据える。

「すまない、立て直しす。そっちは?」


「失敗。でもゼフォロスが頑張ってるから、はこっちでしょ」

イザベラの視線の先には、ガゼルが握りしめる神器があった。


「この女、魔族にしては手強いな」

マティアスが、イザベラの知略を脅威と認識し、目を細める。


「そうよ。力任せに突っ込むだけの魔族の時代は終わり。これからは頭も使っていかないとねっ!」

放たれる無数の鎖と、使い捨ての魔物たち。


ピチは飛んでくる魔物を一口

「ひゃう! これ、おいちくない……」

と嫌悪感を表して回避に回る。

だが、圧倒的な物量に逃げ場が削られていく。


「こいつも呪詛魔法だ……。魔力そのものに毒がある。ピチとは相性が悪いよ……」

セズが前に割って入る。

彼に肉薄した魔物たちは次々に消滅するが、魔力を纏った「鎖」だけは彼の防御網を抜けてくる。


「なんで……? 欠点がない……!?」

鎖の動きには一分の無駄もなく、魔術構成に「ほころび」が見当たらない。

術師としての技量が格段に違うのだ。


「もぉ、かっこよく決めたと思ったらすぐこれ。ダメダメなんだから」

ピチの人形たちが、セズを狙う鎖を必死に捌く。


「……下がれ。私が出る」

「「マティアス様!」」


マティアスが静かに杖を振るう。

それだけで、猛威を振るっていた鎖は生命力を失った蛇のように、力なく地面に落ち、ただの鉄塊へと戻った。


「小賢しい男だね」

魔法が無効化されるのを見るや、イザベラは潔く距離を取った。


「もう行けるぞ。どうする?」

合流したガリアーノが問う。


「ふふ、もう仕込みは終わったよ」

イザベラの唇が、不気味な弧を描いた。

その瞬間、

地面に散らばった「鎖」がかすかに動くのだった。


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