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七度転生した大賢者、今世では剣士として無双します 〜魔法全盛の世界で剣を選んだ理由〜  作者: ねむのき 圓
10章 王【聖域】と魔王【混沌】

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失われた神器・・・魔導の影

「……ルーシュ」

 説明を終えた俺に、セレスティアがおずおずと話しかける。

「その……神器を失くした理由、アジールに心当たりはないの?」


 俺は、お茶の準備をしているアジールを問い詰める。

『あるわけないでしょ! ここは私の聖域よ? 泥棒なんて入り込めるはずがないわ!』

 背後に隠れていたアジールが、顔だけ出して必死に抗議する。


『なら、誰かが持ち出したということだ。……アジール、ここを出入りできるのは誰だ?』


『大精霊なら、みんなできるわよ。ここは私が作ったけれど、私専用というわけではないもの。……そういえば、エレちゃん【虚無】なんか「静かでいいわね」ってたまに寝てるし、プルちゃん【煉獄】も「ここはパンが冷めなくていいわ」なんて言って、掃除もしないで散らかしながらダラダラしてるし……』

 事も無げに言うアジールの言葉に、俺は眩暈を覚えた。


『犯人がいるとすれば、大精霊の中……か?』

 俺は最悪の想像を口にする。大精霊が神器を人間界へ持ち出す理由。それは、世界の均衡を根底から揺るがす禁忌だ。


「……テオ。何か分かるか? マテリアルの加護を持つお前なら、何らかの気配を感じ取れるかもしれない」

 俺は、静かに茶を飲んでいた少年に目をやる。


「……ううん。でも、ここの魔力……どこかで感じたことがあるような気がする」

 テオはカップを置き、真っ直ぐに俺を見つめた。


「……神器の魔力、思い出せるか?」


「……ダメ、わかんない。何かヒントがあれば……」


 俺はアジールに、神器の魔力を再現できるか聞いてみる。

『え、ええ……。形も魔力も、真似くらいならできるわよ。……こんな感じの』

 アジールが空間をなぞると、そこに白銀の光で形作られた虚像が現れた。

 それは、複雑な術式がびっしりと刻まれた、禍々しくも美しい「壺」だった。


「…………あ」

 その虚像を見た瞬間、テオの瞳が大きく見開かれた。


「どうしたの? テオ」

 セレスティアが心配そうに覗き込む。


「……これ、お祖父ちゃんが持ってたやつだ。様子がおかしくなった頃から、ずっと部屋にあった気がする……」


「…………なんだと?」

 テオの祖父、ガゼル。ピューターで神器の研究をしていた偏屈な男。今は【魔導の王冠】に誘われ、マティアスと共にいるはずだ。


「……テオ。お前のお祖父ちゃんは、それをどこで手に入れた?」


「……それは、わからない」

 テオは力なく首を振った。


 テオの言葉が、俺の中でバラバラだったパズルのピースを激しくはめ込んでいく。

(テオとガゼル、そして神器……。偶然の出来事などではない。まさか、最初からマティアスが仕組んでいたのか? だが、神器の出どころが不明だ。なぜ奴がそれを持っている?)


「……ルーシュ? どういうこと?」

 セレスティアが、震える声で尋ねる。


「……数百年前に紛失した神器は、大精霊の手によって、マティアスの元へ持ち出されたんだ。そんな長い年月を保管し続けられる奴は、あいつしかいない。……テオがいたとしても、ガゼルの神器に対するあの異常な執着心は、不自然だったんだ」

 俺は静かに立ち上がった。


「……ガゼルを使い、テオの失敗作を材料にして、この『壊れた神器』を直させていたのか? その過程で神器に魅入られたガゼルが暴走し……その狂気に目をつけたマティアスが奴を勧誘した。……そう考えれば、すべて辻褄が合う」

 転生して一年。俺は自分の力の回復ばかりを考えていた。だが、マティアスは1500年という時間を使い、着実に「何か」を計画していたんだ。


「何がしたい、マティアス……。クソっ、戻るぞ、セレスティア!」

 俺は白銀の大地を踏み締め、一刻も早く戻るべく背を向けた。


『ちょっとぉ! 勝手に来て勝手に帰っていくぅ!!』

 一人取り残されたアジールは、嵐のように去っていく俺たちの後ろ姿を、ただ見送るしかなかった。


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