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七度転生した大賢者、今世では剣士として無双します 〜魔法全盛の世界で剣を選んだ理由〜  作者: ねむのき 圓
10章 王【聖域】と魔王【混沌】

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王の危惧・・・聖域への導き

**夏前――。**


 湿った風が、夜の空気をまとわりつくような重さへと変えていた。

 窓の外は静まり返っている。

 だが、その静寂は嵐の前の静けさのように、不自然なほどに重い。


 眠りに落ちかけていたルーシュの意識を強引に引き戻したのは、肌を刺すような魔力の違和感。

 その源――。

 それは、同じ宿舎にいるヴィニーのはずだった。


 無視するという選択肢は、最初から存在しない。

 俺は音もなくベッドを抜け出し、夜の廊下を進む。

 冷たい床の感触と、やけに響く自分の足音。それが、これから始まる異変の前奏曲のように思えた。


 やがて、魔力の震源地に辿り着く。

 そこに立っていたのは、やはりヴィニーだった。

 だが、俺は一目でその異質さに気づく。

 空間が、歪んでいる。彼の周囲だけ、空気の密度が数倍にも跳ね上がっていた。


「……王様ですか?」


 この威圧感、この身に覚えのある重圧。


「――(わたし)だ」


 低く、地底から響くような落ち着いた声。

 ヴィニーの幼い体から放たれるにはあまりに不釣り合いな、王族の覇気。

 間違いなく、今俺の前にいるのはヴィニーの中に眠る「王の意識」そのものだった。


 王は夜の闇を見つめたまま、静かに口を開く。

「**『()()』**は……本来、安定していたはずの場所だ」


 言葉の一つ一つが、物理的な質量を持って鼓膜を叩く。

「だが最近――何かが違う。何かが、決定的に狂い始めている」


 わずかな沈黙。

「僅かだが**『()()』**に、ある程度干渉できるようになった……だが不安が、消えんのだ」


 その言葉と同時に、俺の肌がざらついた。目に見えない「世界の歪み」が、そこにある。


「見つけられるか。**『()()』**を」


 王の掌から、淡い魔力が溢れ出す。

「このままでは――わた……」


 言葉は、そこで断ち切られた。

 ふっ、と風が止む。

 ヴィニーの体が力なく揺れ、糸が切れた人形のように倒れ込む。


 俺は咄嗟にヴィニーの体を受け止め、静かに息を吐き出しながら、さっきの魔力の残滓を反芻した。

 ――ただ事じゃない。


「今の魔力は……大精霊アジールか?」


 一瞬だけ、王の掌から零れたあの光。

 王族特有の光魔法などという生易しいものではない。超級魔法【聖域】。

 それと…あの領域は――知っている。


 アジールかぁあいつも、呼んでおいそれと出てくるようなタマじゃない。

「……まったく。行くしかないようだな、【聖域】に」


 唯一残された、光の残滓という名の手がかり。

 向かうべき場所は、もう決まった。



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