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七度転生した大賢者、今世では剣士として無双します 〜魔法全盛の世界で剣を選んだ理由〜  作者: ねむのき 圓
9章 入学式と他種族

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受け継がれる意志・・・エルフの決断

海風が、砂と潮の香りを運ぶ。波の音が耳に優しく響き、空は澄み渡っていた。


 向かうのは、共に戦ったエルフたちの眠る場所。

 転生のたびに訪れてきた墓地だ。1500年もの時を経ても、その場所だけは変わらずそこにあった。


 何度も繰り返してきた戦いと別れ。

 そして――確かに共に生きた時間。


 手を合わせる。目を閉じ、深く息を吸い込む。

 風が、頬を撫でた。


「すまなかった……来るのが遅れた」

 1500年。

 その時間が、あまりにも大きすぎることを、今さらながら実感する。


「賢者様……大丈夫です」

 静かに声をかけてきたのは、セレスティアだった。


「どういうことだ?」

 俺は立ち上がり、彼女の方を見る。


「私たちは寿命が長いです。貴方と一番長く関わった先代が……手紙を残しています。さっき、ひいお祖父様から受け取りました」

 差し出された一枚の紙。


 そこには、街の発展と世界の変化、そして――エルカスの想いが綴られていた。


『いつ戻ってくるかは知らんが、お前といた時間が一番楽しかった。迷惑をかけられたことも含めてな。

 だが、お前が来ないはずがない。どうせまた、遅くなったと謝りに来るんだろう。

 魔王の復活は必然だ。

 その時は、もちろん手を貸す。

 エルフは――大賢者ルーシュ、お前と共にある』

 ……あいつの顔が、浮かぶ。

 1500年という時間が過ぎているが、俺にとっては、ほんの数年前の出来事。


「……全くらしくないことを書きやがって」

 苦笑が漏れる。


「ありがとう。……1500年が、少しだけ近く感じた」

 手紙を返そうとすると、セレスティアは首を振った。


「それは貴方のものです。先代が、貴方に宛てたものですから」


「……そうか」

 俺はそれを懐にしまう。


「戻ろうか。話がある」


「はい!」


 歩きながら、俺はエルフの文化や過去の話を口にした。

 知っているはずの知識。変わらず残っている習慣。


 それらが、少しだけ心を軽くする。


---


 王城。


「手紙、確かに受け取った」

 会議の場で、俺はそう告げた。


「俺がいるということは……当然、魔王も復活している。ただ今回は、状況が違う」

 俺は、転生と魔王復活の因果――自分が引き金になっている可能性を、隠さず話した。


「……これからも、手を貸してほしい」

 頭を下げる。


しかし転生が原因で魔王が復活した事実は簡単には受け入れられない。

「それでは、今までの戦いは無駄だったのではないか?」

 一人のエルフが口を開く。


「……だが、魔族に苦しめられてきたのは我らも同じだ」

 意見は割れる。


「やめろ。先代の意思だ」

 セレスティアの父、王が静かに言う。


「大賢者ルーシュと共に戦う。それが、私たちエルフの遺志だ」


「しかし、それは事実を知らなかった時の話、過去です――」


「違う」

 王は遮った。


「この街も、この技術も、この魔法も……ルーシュ様がいたからこそだ。我らが人間と手を取り合えたのも、その影響が大きい」

 空気が、変わる。


「ホッホッホ……私は信じますぞ」

 長老が、ゆっくりと前に出る。


「長老……」

皆が視線を送る。


「王族の決定としよう。大賢者ルーシュを受け入れる」

 場が静まり返った。



「それで?ただの墓参りではなかろう、何用で来た?」

 長老が問う。


「ありがとうございます」

 俺は一歩前に出る。


「今の人間の戦いは、魔法至上主義です。前衛は逃げ、後衛が後ろから一方的に攻撃する」

 静かに、だが確実に言葉を置いていく。


「その結果、前衛が主流の他種族との関係は悪化している」

 視線を王へ向ける。


「だから俺は、賢者であることを隠し、“前衛の価値”を取り戻そうとしている」

 一拍置く。


「――学園で、共に学んでほしい」

 空気が張り詰める。


「他種族の必要性、協力関係の回復……それがなければ、魔王は倒せない」

 記憶の奥が疼く。


「俺が会った最初の王、エルレイも、前回共に戦ったエルカスも……俺は忘れていない」

 真っ直ぐに言い切る。


「だから――もう一度、共に戦ってほしい」


しかし帰ってきた言葉は残酷だった。

「難しいな……」

 王は眉を寄せる。


「人間は長年、我らを差別してきた。その現状で学園に送るなど――」


「なんで?」

 セレスティアが遮る。


「セレスティア……?」


「いつも言ってるでしょ。私たちの方が強いって。なら、見せればいいじゃない」

 無邪気に、だが強く言い切る。


「お前は王族だぞ――」


「私も行こう」

 横から声が入る。

 中性的な顔立ちの青年――。


「エルフィお前まで!」


「兄様も?」


「どうせ止めても無駄でしょう」

 側近が小さく呟く。


「……長老」

 王が視線を向ける。


「ホッホッホ、良いではないか」


 深いため息。

「……分かった。あと護衛を三名付ける。人選はエルフィ、お前に任せる」


「ありがとうございます、父上」


「ねぇ、賢者様」

 セレスティアが一歩前に出る。


「さっきの結界、びっくりしたけど……本当に強いの?」

 挑発的な笑み。

「私とやろ?」


「無礼だぞ、セレスティア」

 エルフィが制する。

 だが――その奥にある闘気は隠しきれていない。


「いや、ちょうどいい」

 俺は一歩踏み出す。

「安心してもらうためにもな」


 視線をエルフィへ向ける。

「お前もやるだろ?」

 静かに、だが確信を持って言う。


 ――エルフ最強の血筋と、大賢者。

 次の瞬間、その場の空気が“戦場”へと変わった。



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