表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
七度転生した大賢者、今世では剣士として無双します 〜魔法全盛の世界で剣を選んだ理由〜  作者: ねむのき 圓
9章 入学式と他種族

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
100/116

ウィンクルール・・・エルフ

「海か……転生して初めて見たな」


 潮騒の香りが漂う海岸沿いを、俺はエルフの街を目指して歩いていた。

 この種族は海に近い場所に街を築く習性がある。主な産業は漁業だ。やがて、海沿いに石造りの壮大な街並みが見えてくる。津波にも耐えうる頑強な構造。排水機能までも緻密に計算されている。

 ――おバカな種族などと一般的には揶揄されているが、そんな言葉は到底当てはまらない。


「変わらんなぁ、ここは。ヴァイオレット王国動乱の時代から……街自体は、随分と大きくなったかな」

 王都を擁するエルフ屈指の街『ウィンクルール』は、俺の記憶にある姿よりも遥かに拡張されていた。


「変な人間が近づいていると報告を受けたが……何だ、この弱そうなガキは」

 エルフは目、耳、鼻が鋭い種族だ。早々と俺の接近を察知し、警戒態勢を敷いていたらしい。


「そうやってノコノコと出てきちゃうとこが……おバカって言われる理由じゃないのか?」

 俺は周囲の気配に向け、あえて投げかける。


「ほら、お嬢様……黙っててと言ったのに」

 当然、側近の言葉も丸聞こえだ。


「ええい、何用で来た!」

 飛び出してきたエルフの女性。人間では到底たどり着けないであろう、透き通るような美貌に溢れている。エルフの中でも特に整った顔立ちだ。


「その整った顔つき……王族か?」

 俺は一瞬でその正体を推察する。


「ふんっ、 そんな世界一可愛いなど言い慣れてるわ。その程度でなにか出ると思うな!」

 彼女は高らかに胸を張る。そんなことは一言も言っていないのだが。


「エルカスという名のエルフが、存在したはずだが?」

 俺は彼女の困惑を無視し、問いを重ねた。


「なぜ……? 私のご先祖様にいたような……」

 彼女は拍子抜けするほど素直に語り始める。


「流石に亡くなっているか。俺はルーシュ。レイシュルト・ヴィ・ルーシュ。……祖父か、父親にでも話を通してくれるか?」

 俺は本名を告げ、彼女の判断を促した。


「じいや……どうするの?」


「じいが聞いてまいります」


 側近はその場を離れた。俺は石畳に腰を下ろして待つことにした。


「人間なんて珍しい……ギルドの討伐依頼で顔を出すくらいなのに。何しに来たの?」

 暇になったのか、エルフの女性は話しかけてくる。


「ルーシュだよ。ちょっと……昔話をしたくてな」


「私はセレスティア。……昔話もなにも、寿命の長い私たちに、人間と語り合えるような話なんてあるのかしら?」

 セレスティアと名乗った彼女は、不思議そうに首を傾げた。


 すると、一人の年老いたエルフがゆっくりと歩いてくる。

「これはこれは……本当のようだ。珍しい客人だな」


「ひいお祖父様……そんなに出歩いて大丈夫なの?」

 セレスティアは駆け寄り、支えようとする。


「大丈夫だよ。たまには外の空気でも……ゴホッ、ゴホッ」

 老いた体には、この冷たい潮風は酷なようだった。


「ルーシュさん、行きましょうか……」

 年老いたエルフが歩き出す。


「ひいお祖父様……いいの?」

 セレスティアが耳打ちをする。


「本物か確かめる。気にせず着いてきなさい」


 セレスティアは驚愕の表情を浮かべる。しばらく、波の音だけが無言で流れる。


「ねぇねぇ……結界…本当にいいの? 死んじゃうよ、あの人」

 聞こえない程度の囁き。

 セレスティアはビクビクと肩を震わせ、覚悟を決めたように目をつぶって歩き始めた。


「変わらないな、ここも」

 俺は静かに呟く。


「ひゃぁ!? なんで……生きてるの!?」

 セレスティアは思わず後ずさり、目を大きく見開いた。


 老人は静かに足を止めた。

「流石ですね……賢者様」

 年老いたエルフは、その場で深々と頭を垂れた。


「け、賢者様……?」

 セレスティアは言葉の意味を理解できず、呆然と繰り返す。


「外敵よけの結界、触れたものを焼き切る……物騒な魔法だよな。エルフの基礎魔法から、俺が編み出したんだ。ここまで精密な網目状の結界は、エルフの特性でしか生み出せなかった。……なかなか、いい経験だった」


 俺は何もなかったかのように、結界の境界を跨いで進む。

 空気が焼ける匂いすら、起きなかった。


「結界を通る際、同じ特性の魔法を使わない者は焼き切られる。……これができる人間は、歴史上たった一人しかおらん」


 老人は震える手でセレスティアに説明した。


「マジ……?名前だけで、この人のことを試したの? 怖……」

 セレスティアは、我がひいお祖父様の大胆すぎる行動に恐怖を露わにする。


「前回戦わせていただいたエルフの、来孫に当たります。この娘は9代目の子孫になります」


 600年の寿命を以てしても、1500年という月日は、9代もの血の系譜を流していた。


「流石にひと目見て確信を得るには至りませんでしたが……聞いていた魔力と、寸分違わぬものでした。信じられませんが……ホッホッホ」

 老人は穏やかに笑う。

 エルフは魔力の一人ひとりの特性を感じ取れる唯一の種族だ。


「では、我が城へお越しください」

 年老いたエルフが促す。


「いや、墓参りが先だな。転生のたびに来ているんだ。エルフは……また会えたな、と話せる唯一の戦友だったからね」


 俺は、かつて強敵を共に封印した友の元へと向かうことにした。

 200年周期だった転生。エルフの長い寿命は俺の孤独を少しは和らげてくれていた。

 しかし今回の1500年は大きな時間だった。


「そうですか。……では、セレスティア、お供しなさい」


「はい、承知いたしました!」

 セレスティアは先ほどまでの困惑を消し去り、背筋をビシッと正した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ