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新大陸調査3

 チェナートの郊外から海まで伸びる運河。

 レオナルト達によって作られたその運河の上を、最新の船が進んでいく。

 一般的な帆船は、主に木で作られていて、要所要所を金属で補強する形となっているが、この船はほぼ金属製だった。

 木製にせよ、金属製にせよ、船の材料として用いる場合には腐食が課題となるが、ここは異世界であるため錆びない金属があり、それを使う事で腐食しない船体が作れる。

 腐食しないのであれば、対魔物を考えると、頑丈な金属製の方がよかったのだ。


 錆びない金属としては、日本にはなかった魔法金属とも呼べる神金(オリハルコン)などがあるが、さすがにそれを使って船を作ったのでは、お金がかかって仕方がない。

 そこで使われたのが、鉄をメインに霊銀(ミスリル)を少量混ぜた合金だ。


 ただ、霊銀(ミスリル)も希少な金属であり、簡単に手に入るものではない。

 更に、その霊銀(ミスリル)を使って鉄合金を作ることが出来るものは限られており、具体的には鍛冶を司る神である芸神ドラウヴェルか、魔術を使って様々な装備を作る研究をし、錬金術も研究していたシルヴェストルくらいだった。

 竜神にもなり、知力がとんでもない高さになっている事も生かし、シルヴェストルが設計・製造したのが、この最新の船だった。

 さらに、シルヴェストルが頑強、腐食防止、軽量化などの魔法陣を施している上に、魔力を供給するだけで推力が得られる魔道具が複数搭載された、まさに夢のような船だった。

 その船は、王であるレオナルトの姓から、シュテルンフェルト号と名付けられた。


 全長が150メートルほどと、通常の帆船の3倍程度の大きさになっているのも圧巻だ。

 その船体は、白く塗装された金属で出来ているともあって、チェナートを訪れていた見物客は圧巻されていた。

 この世界にはないコンクリートのような丈夫な石で出来た桟橋から、次々と積み込まれていく小麦や肉、家畜などの積み荷も、すごい量になっていた。


 そして、船に乗り込んでいくのは、船員だけではなく、北大陸の開発やその護衛に従事するための学者や労働者、冒険者たちだった。

 危険が伴うと募集要項には明記されていたが、それでも多くの人数が参加したのは、その船旅にレオナルトとマウラが同行するとが決まっていたことがある。

 ランメルスの王であり、勇者でもあり、魔王でもあるレオナルトと、黒緋姫とも呼ばれるレオナルトの妻の1人であるマウラ。

 その実力は大陸中に知れ渡っており、その安心感は抜群であったのだ。


 なお、レオナルトの妻であるあと2人、フェリシーユとアンナについては、国政を担当するためと身重であるため城に残ることが決まっている。


 そんな舩の出航を見送ると、シルヴェストルはそっとラバノ村の郊外へと転移した。

 今まで、船の建造やチェナートの運河の手伝いなどをしていて、まだラバノ村の方の港湾を作っていなかったのだ。


 村内でフィデル村長との間で、最終的な位置の検討を行う。

 超大型船舶が入れる港湾となると、かなりの大きさになるし、高波等の対策を実施も必要となる。

 生活を高波から守るためには大規模な消波堤や街と桟橋の間の堤防なども必要になるだろうが、どうしても景観が今と大きく異なってしまうし、水産資源への影響も出てくるだろう。

 ある程度は魔術で何とかなるだろうが、実際にどのような影響が出てくるかは、やってみないと分からないというのが正直なところだ。


 防潮のためには、海からではなく河から引き込んだ方がいいのだが、水深の確保が大変で、それを変えてしまう影響が読めないため、結局海の方に入り江を作ることになった。


 早速シルヴェストルは、入り江になる部分の土をどんどんと魔術で掘り下げていく。

 大型の貨物船が利用できる長大な岸壁と、小さな村の漁船が利用できるような桟橋をいくつか作っていく。

 岸壁部分は土砂を高密度に圧縮して、コンクリートどころではない頑丈さに仕上げ、それ以外の部分は、砂浜として仕上げていく。

 それらが完成すると、入り江と海の接続部分を少しずつ繋げて海水を入れていき、潮位が揃うと入り口部分を広げていく。

 波の影響を抑えつつ、入り江内の海水が澱まないように水流を確保するように、計算されている入り江は、実用性も防災も景観も、満足が出来るものだった。


 5日ほどでこの作業を終えると、入り江の入り口に塔を作り出した。

 この世界にはまだなかった灯台である。

 頑丈な石造りの灯台は、少しずつ高さを増していき、高さ30メートルほどの場所に強力に光る魔道具が設置された。

 魔力の供給は、わざわざ最上部まで行かなくても、1階部分で魔力を注ぐか、魔石を放り込めばいいようになっていた。

 もちろん、メンテナンスのために最上部までいく階段も設けられているが、観光スポットとなるように展望台も作られていた。

 このフィデルが、この先どの程度発展していくかは不明だが、この大陸の窓口となることは間違いないだろう。

 発展したときに、これくらいの遊びはあった方がいいのではないか、という謎の気遣いだった。


 これで港湾整備は最低限のものは準備が出来たので、岸壁から少し離れた所に、交易品を補完するための倉庫を石で造っていると、沖合にチェナートを出航した大型貨物船シュテルンフェルト号が見えてきた。

 約10日間の航海だが、無事に乗り越えられたようで、遠目に見る限りでは船体に傷などもない。


 入港のため大きく速度を落とした船が、ゆっくりと入り江に入ってくる。

 タグボートはないので、レオナルトが魔術で細かいコントロールをしているようだ。

 無事に接岸してアンカーが落とされると、まずは人が降りてきた。


 フィデル村長らが出迎えたのは、レオナルト王とマウラ、そしてその2人に付いてきた文官たちだ。

 レオナルトについてきた騎士団の騎士達は、警備をしていた者たちと挨拶を交わしている。

 これも、事前の調整により、ラバノ村もソリア村も、レオナルトの統治下に入ることで大筋合意しているからだ。

 現地で顔を合わせてからでないと、詰められない事項もあるため、正式な手続きはまだであるが、実効上は既に統治下にあると言っていい状態だった。


 船から降りた冒険者たちは、さっそく同行していたギルド職員の指示により、新しい冒険者ギルドの会館を作る作業に取り掛かっていた。

 さすがに手慣れているのか、職員の指示で高価なマジックバッグから次々と製材済みの木材やら石材を取り出して、建物を作っていく。

 異なる国に行っても、冒険者ギルドの構造がほとんど変わらないのは、このような会館の建築ノウハウの集積結果なのだろう。


 次に荷物が少しずつ降ろさされてくるが、シルヴェストルが作ったばかりの倉庫に運ばれていく。

 その倉庫には、文官たちが早速羊皮紙や木で作られた仮のラベルを付けていき、素材の種類に応じて入れる倉庫が指定されていく。

 家畜類は、いったん村の方へと運ばれていった。


「何事もなく着いたようで何よりだな。」


 少し落ち着いたらしいレオナルトとマウラに(ねぎら)いの声をかける。


「大変だったんだからな、これでも。」

「海の魔物がたくさん出ましたけど、どれも美味しかったんですよ。」


 レオナルトは苦労したらしく文句を言ってくるが、マウラはそれも含めて楽しんでいたようだ。

 定番とも言えるクラーケンのような魔物が出てきたようだが、烏賊(いか)ではなく(たこ)だったようで、タコ焼きや酢の物等として味わってきたようだ。

 残念ながら、刺身で食べるには生臭かったようだが、火を通す事で臭いが消えて美味しく食べられる素材になるようだ。

 他にも、空だけではなく水中でも活動できるワイバーンや、太刀魚(たちうお)どころか名剣並みの切れ味を持つ刀剣のようなブレードフィッシュの群れにあうなど、イベントが盛りだくさんだったようだ。


 ただ、戦闘を楽しむだけのマウラと、船に一切傷を付けたくないレオナルトでは、心労の具合が異なっているだけなのだ。


 他に、乗組員らにも意見を聞き、トイレの数が足りないとか、厨房をもう少し大きくしてほしいと言った改善点を集めて、それらを参考にシュテルンフェルト号の改修工事を実施していく。

 出た意見は内装に関するものばかりで、推力装置や対魔物兵器については、問題はなさそうだった。


 その夜、寝る必要がないマウラと連携し、ラバノ~ソリア間の街道整備を開始した。

 ソリアに転移したシルヴェストルが、田畑を避けて村の街道の入り口になる場所で、空高くに光球を打ち上げると、ラバノに残っているマウラがそれに向けて一直線となる道の目印を付けていく。

 目印と言っても、光球に向かってまっすぐ飛びながら、地面に向かって風の刃を撃ち続け、目印になる溝を掘っているだけだ。


 それが終わると、ラバノに転移で戻り、街道を作り始める。

 すれ違いができるように片側一車線で、幅は5メートルほど。

 車線は少し盛り上がった場所に用意され、石のように固められている。

 その車線から、それぞれ5メートル程度の距離で伐採がされている。

 森の木々から魔物や盗賊が飛び出してきても、対応するための時間があるように、道路と森の間にそれだけの距離が設けられているのだ。


 最初の1キロ程度はシルヴェストルが道路を作り、残りは国の作業員や魔法使い、依頼を受けた冒険者達に任せることにする。

 全てやってしまうと、彼らの職を奪う事になってしまうし、シルヴェストルにはまだまだ調査したい事が残っていたからだ。


 シルヴェストルは、カカオとコーヒー、そして鉱山の鉱石を探すために西の山脈へと飛びだった。


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