表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
61/61

新大陸調査4

 ランメルス大陸の北にある新大陸。

 その森の上空を、銀色に輝く巨大な竜が悠然と飛んで行く。


 ランメルス大陸との交易の窓口として急速に整備がされていくラバノ村から、西にある山脈に向かって飛び立った竜神シルヴェストルである。


 いつまでも新大陸では呼び名に困るな、等と考えながらも、人のいる集落がないか気配感知を働かせながらゆったりと飛んで行く。

 眼下には森が広がっており、多数の魔物の気配が感じられるが、上空を飛ぶシルヴェストルに攻撃する術がないのか、それとも実力差を察して怯えているのか分からなないが、何かが起きる様子はにない。


 もっとも、ラバノ村で得られた情報では、山脈のあたりにあるドワーフの村までは人が住んでいる様子はなさそうなので、気配感知をしているのも念のため程度だ。


 山脈へと近づいてきた頃、気配感知に初めての気配を感じる。

 獣人に近い気配だが、少し異なっているが、問題はその周囲に多数の魔物の気配があることだろう。


 その気配に向かって急降下すると、地上近くまで来たところで、シルヴェストルが咆哮を放つ。

 幽闇竜戦以降、たまに使っていた咆哮だがいつの間にかスキルとして登録されていたのだ。


 シルヴェストルが覚えているのは、『咆哮<麻痺>』と『咆哮(威圧)』の2種類だが、今回は威圧の方を放つ。

 獣人に近い気配は、恐らく人だと思われるため、麻痺させてしまうと面倒だからだ。


 地上にいた、ずんぐりとした体格の人の周囲を取り囲んでたのは、フォレストウルフとマウンテンウルフの群れだった。

 そのウルフ達は、咆哮に込められた威圧によって恐怖に支配されてしまい、動けないでいる。

 動けないウルフ達に、上空から光の矢が降り注ぐと、頭を一撃で貫かれて一撃で息絶えてしまう。


 ウルフと同じく恐怖によって動けなくなっていた男は、状況が掴めないでいるが、目の前のウルフ達が次々と倒れていくのを見て、とりあえず助かったことを理解する。

 フォレストウルフだけであれば、群れで襲い掛かって来ても対処できるのだが、マウンテンウルフまでいるとなると、無事に帰る事は絶望的な状況だったのだ。


 安堵したのも束の間で、強力な魔物であるマウンテンウルフまでなぜ倒されているのかに気付いてしまい、恐る恐る上空を見上げてみると、そこには巨大な銀竜がいた。


 上空で軽く羽ばたきながらホバリングしている銀竜は、とんでもない大きさであり、それ以上の存在感を放っている。


「お前は山脈にあるというドワーフの集落の者か。」


 竜から問い掛けられた声は、力強いものの穏やかなものだった。


「あ、ああ。ドワーフの里のもんだ。あんたが助けてくれたのか?」


 竜と話している。

 そのことに驚きながらも、すんなりと答えることができた。


「魔物から逃げているようだったのでな。余計なお世話だったろうか。」

「いや、諦めかけていたところだったんで、正直すごく助かった。」


 改めて周囲を見渡すと、50匹程度のウルフの死体が転がっている。


「邪魔した訳ではないのなら良かった。他の魔物が寄ってこないうちに片付けたいのだがいいだろうか。」

「あんたが倒した魔物だ。俺が口を出す事じゃないし、好きにしてくれ。」


 竜が地上に降りてくると、ウルフの死体が次々と消えていく。


「改めて助けてくれてありがとう。俺はドワーフの里のルボルだ。」

「我は竜神シルヴェストルと言う。ドワーフの里まで案内を頼めないだろうか。」

「竜神様だったか。どうりで強いはずだ。ドワーフの里へは、芸神ドラウヴェル様のところへ?」

「ドラウヴェルはここにいたのか。最近連絡が取れないとアスシアルフが困っていたから助かる。」


 アスシアルフは創造神だが、全知でも全能でもない。

 ドラウヴェルのように、ふらりとどこかに行って連絡も寄越さないと、どこで何をしているのか分からないのだ。


「1年ほど前に戻ってきて、それからずっと里の近くに籠って何かしてるけど、また黙って出てきたんだ。」

「よくあるのか?」

(たま)に、創造神様や他の神様にお願いされたことを思い出すのか、慌てて飛び出して行く事があるな。しばらくすると、また戻ってきて引き籠ることの繰り返しだ。」

「なるほど、常習犯なのだな。ドラウヴェルは後でいいので、里の長に挨拶したいのだが。」

「分かった、ついてきてくれ。」


 ルボルの後についていくが、ドワーフのずんぐりとした体格の割に素早い。

 森の中の木々を縫うように進んでいくので、低空飛行をしながらそれについてく。


 森が途切れて山肌に代わる際に、ドワーフの里はあった。

 山肌をくり抜いた洞穴と石造りの家でできた村だった。


「オトマル爺を呼んでくれ。竜神様が来たぞ。」


 先に到着したルボルが里に向かって叫んでいるので、近くに降り立って待つことにする。

 やがて、里の中から関羽のように長いひげを蓄えたドワーフが出てくる。

 ルボルはオトマル爺と呼んでいたが、どう見てもお爺さんには見えないガチムチの筋肉の塊だった。


「騒がせて済まないな。竜神のシルヴェストルと言う。ドワーフの里の長か?」

「長をやらされておりますオトマルと言います。ようこそいらっしゃった。」

「やらされている?」

「里には、最も筋肉が素晴らしいものが長をすべし、というよく分からない言い伝えがありましてな。それで向いておらんと思っとるんですが、儂が長をやっとる訳です。」

「お、おう。大変なのだな。」


 あまりに謎な長の決定ルールにシルヴェストルは、どもってしまった。

 揉め事があった場合に、肉体言語での会話で解決をするためだろうか。


「それで、今回はどのような用件で?」

「この大陸と、南にあるランメルス大陸で交易が始まってな。この里で霊銀(ミスリル)とコーヒー豆が取れると聞いて、交易ができないかと思って相談に来たのだ。」

「そのような人間の些事(さじ)のために竜神様が態々(わざわざ)ご自分で?」

「まあ、そうだな。元々はアスシアルフの思い付きと我儘(わがまま)だが。」


 芸神ドラウヴェルがいるという里の長だからか、その一言で色々と察したようで、少し憐れむような表情をされたが、すぐに真顔に戻る。


「では、里の中でお話しでもしましょうか。」

「済まぬな。」


 シルヴェストルは人化して、オトマルについて里の中に入っていく。

 オトマルの説明によると、鉱山もコーヒーの栽培場も、少し山を登った所にあるらしい。

 そこで採れたものの一部を、森を抜けてラバノまで売りに行っているのだそうだ。

 当然森を抜けるのは危険なので、ルボルのようなものが、魔物を討伐したり追い払ったりしているようだ。

 それでもやはり、荷物を持って森を抜けるのはかなり危険で、荷を運ぶのは時間もお金もかかるし、そもそもその荷運びを受ける者も少なかった。


 森を切り開いて街道を通せることを伝えると、是非にと頼まれたので、帰る際に整備しておくことにする。


 安全に荷を運べるのであれば、交易そのものはドワーフの里としても望んでいることのようだ。


 里長であるオトマルとの話はまとまったので、ドラウヴェルの所に顔を出しておくことにする。

 アスシアルフも探していたし、知った以上は声をかけておかないとまずいだろう。


 里を出てすぐのところに、ドラウヴェルの工房はあった。

 石造りの平屋建てで、煙突から煙が出ているので今も鍛冶をしているのだろう。


 扉を開けて中に入ると、奥に工房へつながる扉がある。

 扉は閉まっているが、既にこの部屋も熱気が籠っている。

 奥の扉を開けて工房に入ると、ものすごい熱気に包まれる。


「温度が下がる。早く入って扉を閉めてくれ。」


 槌を打つカンカンという音が響く中、ドラウヴェルが大声で叫んできたので、慌てて扉を閉める。


「見ない顔だな。どこの誰だ?」


 ドラウヴェルはシルヴェストルの方を見向きもしていないのに、そう声をかけてくる。


「竜神のシルヴェストルだ。偶々(たまたま)この里に来たので挨拶をしておこうと思ってな。それと、アスシアルフが連絡が取れなくて困っていたぞ。」


 鍛造を続けていたドラウヴェルだが、アスシアルフの名が出ると、その体をビクッと震わせる。


「新しく竜神になったんだったか。ところで、アスカの嬢ちゃんは、その、怒ってたか?」


 そのガッシリとした体つきには似合わない、怯えるような仕草でアスシアルフの様子を確認してくる。


「いや、怒ってはなかったぞ。本当に困って言うようだったから、顔くらいは出しておいた方がいいと思うが。」


 その一言でほっとしたようだ。


「今手掛けてるのが、あと2日ほどかかるんだが、3日後に神域まで送ってくれないか。転移はどうも苦手でな。」

「別にそれくらい構わないぞ。3日後だな。」

「ああ、すまんが頼む。それと、お主なかなかいい剣を持っているな。」


 前に造った大太刀のことだろうか。

 アイテムストレージの中にあるのに、どうやって察知したのだろうか。


「この太刀のことか?」


 アイテムストレージから、蒼い大太刀を取り出してドラウヴェルに見せる。


「おお、これだ。見せてもらってもいいか?」

「ああ、構わないが。」


 大太刀を渡すと、ドラウヴェルは見入っている。

 さっきまで鍛造していた手が止まっているが、大丈夫なのだろうか?


「これは誰が?」


 誰がこれを打ったのか?ということだろう。」


「これは鋳造でも鍛造でもない。俺が魔術で造ったものだ。」

「魔術でか・・・」


 それを聞くとドラウヴェルは考え込んでしまう。


「鋳造と比べると、強度もしなりも桁違いだが、この造りで鍛造をするのは無理がある。俺でも一ヶ月かけてできるかどうかというところか。」


 大太刀を眺めながらブツブツと(つぶやく)く様は、完全にアブナイ人だがそっとしておこう。


 やがてドラウヴェルが彼岸(あちら)から帰ってきたのか、確認してくる。


「お主自身は鍛冶ができるのか? 鍛造に関する知識もあるようだが。」

「知識だけで、鍛冶をした事はない。だから、魔術で結果だけを再現できないか試してみた結果がそれだ。」

「なるほど、鍛造の結果だけを魔術で再現か。数打ちを作るならそれもアリか。」


 また考え込みそうになるが、すぐに我に返り、大太刀を返してくる。


「ありがとう。参考になった。」

「よく分からないが、何かの役に立てたのなら何よりだ。それでは3日後に迎えに来る。」

「ああ、すまないが頼む。」


 そう言うと、ドラウヴェルはまた鍛冶を再開する。


 ドラウヴェルの工房を出ると、オトマルと約束した街道整備をやってしまう事にする。

 ラバノまでは距離もあるし、森は魔物も多いので、この街道はシルヴェストルが整備してしまうことにする。


 ラバノ・ソリア間の街道のように、まずはラバノに向かって真っすぐに進みながら、木を伐採していく。

 幅を広めにとりながら、風魔術で木を切り倒すと、すぐにストレージに収納していく。


 それが終わると、土魔術で地面を掘り起こして切り株や大きな石を取り除いていき、馬車の通る車道や、排水用の水路を、土を固めて作っていく。


 一通り終わらせると、ドラウヴェルと約束した日になっていたので、ラバノ村のフィデル村長に、ドワーフの里への街道を通したこと、商人や冒険者を向かわせて欲しいことを伝えると、ドワーフの里へ戻る。

 そのままドラウヴェルを連れて、アスシアルフのいる神域へ転移すると、数日ぶりに再会した妻エリザベトといちゃいちゃしだす。


 震えるドラウヴェルを連れて、アスシアルフがどこかに行ったことを、2人とも気にしないようにするために。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ