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新たな王

 神界から転移した先は、元いた場所、つまり魔神と精霊神が戦った場所だった。

 そこには、溢水竜ミュルグレスがそのまま残っている。


『これはどうしたのじゃ? 閃光竜が銀色に輝いているように見えるのじゃ。』

『創造神より、竜神の任を受けたんだよ。』

『なんと。確かに久しくおらなんだ竜神なのじゃ。隣のハイエルフも精霊神になっているのじゃ。』

「フォリナリス様が転生されたので、その後任を拝しましたわ。」

『とりあえず、王国軍と魔族領軍の方に行こうか。白の眷属達は城に戻ってもらって構わない。助かった。』


 そう言うと、白竜達を閃光城に転移させていく。

 白竜を送り終わると、リズとミュルグレスを伴って戦場に移動する。

 戦闘は既に終わっているようで、魔族領軍はフェリシーユ達に投降して大人しくしていた。


『そちらも無事に終わったようだな。』

「シルヴェストル様ですか? お姿が変わっているようですが。」

「銀色になっているけど、光の竜王じゃなくなったのか?」

『俺は竜神に、リズは精霊神になった。』

「神になったとか、さらりと言われてもな。」


 レオナルトは、どうしたものかと頭を掻いている。


『気にするな。それよりレオナルト。お前は創造神より正式に勇者として認められたぞ。良かったな。』

「えっ。それ嬉しくないんだけど?」


 嫌そうな顔をしているが、なってしまったものは仕方ないのである。


『嬉しいとか嬉しくないとかの問題ではない。ここから先は、お前たち人間が頑張らねばならんのだ。魔都に凱旋するぞ。両軍とも隊列を整えよ。』


 シルの指示が出ると、王国軍、魔族領軍ともに魔都テスカーラに進行できるよう隊列を整える。


『レオナルト、フェリシーユ、ブリュナール。お前たち3人が先頭に立て。』


 有無を言わせず、隊列の先頭に立たせると、すぐ近くの魔都まで移動する。


 竜神シルヴェルト、精霊神エリザベト、溢水竜ミュルグレス、英雄レオナルト、聖女フェリシーユ、近衛騎士ブリュナール、王国軍、魔族領軍の順にゆっくりと魔都テスカーラに入っていく。

 城の前で隊列を整えると、シルは宣言する。


『我が名は竜神シルヴェルト。精霊神エリザベト、溢水竜ミュルグレスの立ち合いの元、ここに魔族領に対し創造神アスシアルフの命を伝える。』


 周りに集まっている魔族領の民衆が、創造神の名とそこに2柱の神がいることに驚いている。

 中には、平伏しているものもいる。


『先代の魔族の王ジュリアーノは名君であったが、後年はイザイアの呪いにより苦しめられ、その力を発揮することができないでいた。そして、呪いで命を落とした。その間、イザイアは重い税で民衆を苦しめ、自らは集めていた税を使い、贅沢な生活を楽しんでいた。』


 自分たちの生活が苦しかったのが、ジュリアーノ王ではなく宰相のイザイアによるものだと、民衆は初めて知らされた。


『その魔族領宰相イザイアは、堕ちた魔神により操られていたため、魔族とエルフの子であり勇者かつ魔王であるレオナルトにより討たれた。また、それを助けていた堕ちた闇の竜王、幽闇竜ダインスレイフは我とエリザベト、ミュルグレスにより討たれた。』


 自分たちを苦しめていたイザイアが討たれたと聞き、民衆は歓声をあげる。


『神である我やエリザベト、竜王であるミュルグレスは、世を乱さぬ限りは関与せぬ。ここから先は、勇者レオナルトを王と仰ぎ、それを支える聖女フェリシーユとともに、其方(そなた)ら魔族の皆で国を繁栄させよ。』


 自分たちを救った英雄が王となる事、神より国を皆で支えよと託された事で、民衆は再度湧き上がる。

 フェリシーユは顔を真っ赤にしているが、レオナルトは言われた事を理解していないようだ。


「あの、私はシャルワリエの王女ですが、勝手に魔族領に嫁いでもいいのでしょうか。」

『ランベール王とは話がついている。戦争に勝利した暁には、魔族領の王レオナルトに嫁ぐことをな。』


 レオナルトも、ようやく言われた事に気付き、同じく顔を真っ赤にしている。

 勇者と聖女の初々しい婚約が成立したことで、民衆は囃し立てる。


『ジュリアーノの血を分けた者は、ここにいるか?』


 シルが尋ねると、一人の女の子が前に出る。

 魔族の凛とした美少女だ。


「はい、私がジュリアーノの娘、アンナマリア・アウティエリです。」

『其方には酷かも知れぬが、この国の再建を手伝ってくれぬか。』

「父ジュリアーノの目指した国の姿、それをレオナルト様が実現してくださるのであれば、喜んで。」

『では頼む。宰相、政策顧問、第二妃、どのような形でも構わんので、レオナルトとフェリシーユと相談してくれ。』

「竜神様の命、確かに承りました。」

『これは命令ではない。お願いだ。レオナルトと理想が合わぬようであれば、別に(たもと)を分かっても構わない。』

「畏まりました。」


 アンナマリアは、綺麗な所作でレオナルトに対し臣下の礼をする。


不束者(ふつつかもの)ではありますが、よろしくお願いいたします。」

「えっと、もしかしてアンナ?」

「やはり気付いていなかったんですね。しかし、意外な形での再会になりましたね。」

「あら、知り合いだったの? 私はフェリシーユです。いい国にできるよう、一緒に頑張りましょうね。」

「はい、フェリシーユ様と一緒にレオナルト様のお力になれるよう頑張ります。」


 フェリシーユに小突かれていたレオナルトだが、フェリシーユとアンナマリアの間に一瞬火花が散ったように見えてたじろぐ。

 気のせいであって欲しいと願うばかりだ。


『では、細かい事は任せる。我等はこれで引き上げる。』


 そうシルが伝えたところで、王国軍の伝令が駆け込んでくる。


「フェリシーユ殿下、陛下より伝令です。帝国軍が王国に対して進軍を開始したとの事です。」

「なに、本当か?」

「はっ、帝国軍は騎士を中心に約2万の軍で、現在は国境を目指しているとの事。」

「ようやくこっちが片付いたのにな。」

「だからこそ、でしょうね。漁夫の利を狙ったのでしょう。」


 レオナルトが愚痴るが、フェリシーユはそれを当然として受け取っている。


「他に言付かっていることはありますか。」

「ランベール陛下とクロード殿下でどうにかするので、フェリシーユ殿下は自身の責を全うせよとのことです。しかし、兵はほとんど王国に残しているとは言え、帝国軍は大軍ですのでどうなるかは。」

「アンナマリア、悪いけどこの国をしばらく任せていいかな。イザイアに与していたものの洗い出しと捕縛、そして戴冠式の準備でいい。すぐに戻る。」

「はい、準備をしてレオナルト様のお帰りをお待ちしています。」

「フェリシーユ、魔族領はシャルワリエ王国と不戦条約と軍事同盟の締結を申し出る。ランベール王に取次ぎを頼めるか。」

「はい、分かりました。陛下に取次ぎます。」


 創造神によりスキルを付与されて、レオナルトも色々と政治的な見方ができるようになっているようだ。


『やれやれ、戻ろうと思ったが、ここにいる王国軍兵とお前らを王国まで送るとしようか。』

「シル、お願いしていいかな。竜神様にこんなことを頼むのは申し訳ないけど。」

『お前とはどうあろうとも友のつもりだ。構わんよ。リズ、ミュルグレス、もう少し付き合ってくれるか?』

「私は構いませんよ。今のところ精霊神の仕事はなさそうですし。」

『妾も構わんのじゃ。良い暇つぶしなのじゃ。』

『戦争を暇つぶしとか言わないでくれ。』


 シルが苦笑するが、ミュルグレスは気にしていないようだ。


『では、アンナマリアよ。早速色々とレオナルトから押し付けられてすまんが、しばらく頼む。王国軍は帰還するぞ。』


 シルはそう言うと、転移を発動させる。

 王国軍の騎士と魔法使いを含め、王都シャルデまで一斉に転移する。


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