装備更新
頭を抱え摩りながら、フェリシーユ王女が説明をし、シルとリズがそれを補足していく。
「戦争だけでも大変な事なのに、魔神が関係しているのか。」
「ジュリアーノ王には精霊を付けてきたので、暫くは大丈夫だろう。しかし、もって1年と言うところらしい。」
話しにくいだろうと言う事で、人化して青年の姿になったシルが答える。
人化した途端にリズがくっついてきた。
他国とはいえ王の前なので、少し自重して欲しいものだが、シルもリズには甘い上に内心嬉しいので何も言えない。
「知っていると思うが、竜王は人の世の争いには関与しない。世界を乱すと言える程のことではないのでな。」
「ああ、伝承でそれは聞いている。」
「しかし、魔神が関係している可能性がある以上、放っておく訳にも行かん。という事で、3人を俺のもとで徹底的に鍛え上げようかと思っているがどうだろうか。勿論死なないギリギリまでにするが。」
フェリシーユとレオナルトが、ギョッとした顔でこちらに顔を向ける。
あれ、鍛えると言ったよな? と不思議に思っているが、死なないギリギリなどと聞いていない、と2人は目で訴えている。
「それは有難いが、王国はその恩をどうやれば返せるのやら。」
「俺もリズも、財にも地位にも名誉にも興味はない。いざ魔神との戦いとなった時に、何かしら支援をお願いしたいのだ。」
「堕ちた神が動くともなれば、王国も無縁ではいられません。支援するのは当然だろう。それでは恩を返すことには・・・。」
「王は国民を守る者、違うか?」
「その通りだが。」
「であれば、竜王は世界を守る者。そのために必要なことをするだけだ。」
「なるほど。それぞれがお互いにすべき事をするのみだ、と。」
2人のおっさん、シルの方は見た目が若くなっているが、ガシッといい笑顔で握手をしている。
周囲はそのノリについて行けず、取り残されている。
そこに、空気を読まずにイケメン王子が、果敢に食い込んでいく。
「フェリよりも男の私がやるべきでは。」
「王位を継ぐべき者には、別にすべきことがあるはずだろう。」
「シルヴェストル殿の言う通りだ。お前は王太子としてここでやる事がある。気持ちは分かるが、ここは弁えよ。」
「はい、分かりました。フェリ、頼むよ。」
「はい、お兄様。お任せください!」
フェリシーユは右手で自分の胸をドンと叩くと、それに噎せていた。
もう慣れてきたのか、シルはそれを放置しながら話しを続ける。
「軍の強化のために、貯め込んだ魔物素材を譲ろうと思うんだが、解体できる場所はあるかな。」
シルのその一言で、王が物資管理の担当を呼び、解体場まで案内させる。
そこにシルが魔族領内で集めてきた素材を積み上げていく。
その中には、フェリシーユ達を襲撃した魔物の死体も含まれていた。
また、ついでに鋼や霊銀、神金、金剛鉄等の金属も在庫の半分ほど出しておく。
「これだけの素材を・・・。」
「またどうせすぐに貯まるものだ。気にせず使ってくれ。」
「有り難く使わせてもらおう。」
「装備だけではなく、兵の調錬も忘れずにな。」
「それは勿論。」
代わりに、貴重な香辛料等をもらい、5人で閃光城に戻ってきた。
◇ ◇ ◇
「さて、鍛える前にお前らに渡しておくものかある。」
そう言うと、シルは3人の前に装備品を取り出す。
フェリシーユには、白いドレスのようなローブに金の板金あしらわれた防具、それに聖杖エイルテインだ。
そのローブは、北欧神話にあるワルキューレをイメージしたものだ。
「フェリシーユには、聖女に相応しい装備で考えてみた。見た目を考えたのはリズだから変ではないだろう。魔力、知力が上がる効果を付けてある。杖は迷宮で拾ったものだが、回復効果が大きく上がるものだ。」
「可愛らしいのに、大きな魔力を感じます。杖は、凄いとしか言えないですね。」
レオナルトには黒い革鎧に黒い竜鱗を重ねたスケイルアーマーだ。
金の線が随所に走っているのは、神金で補強されているからだ。
武器は、青竜刀を大きくしたような曲刀型の大剣と直刀型の大剣、少し大きめの片手剣も直刀型と片刃の曲刀が2本ずつ。
「レオナルトは機動性を活かすよう、革鎧に竜鱗を纏わせた上に神金で魔力も通しやすくしてある。腕力と俊敏が上がるな。武器はいいものが思い付かなかったので、色々と作ってみた。俺のような日本刀でもいいぞ。」
そう言うとシルは、自分の愛用の蒼い大太刀を取り出して見せる。
「何とも綺麗な剣ですが、見ない形をしていますね。」
「これは俺の趣味だな。レオナルトなら見覚えがあると思う。リクエストがあれば聞くぞ。」
「片手剣で慣れてるから直刀型の片手剣かな。もう少し細い方がいいかな。」
「では、こんな感じかな。」
シルが言われた片手剣を手に取ると、少し刀身が細くなる。
目の前で道具も何もなく剣の刀身の幅を調節しだすのにギョッとするが、すぐに立ち直ったのは慣れてきたのだろうか。
剣を受け取ると、レオナルトは感触を確かめるようにそれを振ってみる。
「うん、いい感じだよ。」
「では、その剣で二刀流な。」
「なんで? やったことないよ?」
「その方がなんかカッコいいだろう?」
はぁ?と呆れているレオナルトを他所に、もう一本の片手剣も同じ大きさに調節する。
「得意な属性はなんだ?」
「火と雷だけど。」
「では火と雷を付与しておこう。」
「えっ?」
シルが再び手に取ると、魔力で魔法陣を絵描き、それを刀身に沈めて行く。
その刀身は、1本が赤に、もう1本が紫に色を帯びる。
「魔力を通してみろ。」
「そんなのやったことないけど。」
「では、後で練習だな。今回は手本を見せてやろう。」
紫色の1本をリズに渡すと、2人はそれぞれ刀身に魔力を通す。
赤い剣は燃える炎を纏い、紫の剣はバチバチとスパークしだす。
無論、持っている柄にはそれが及んでいない。
「リズ、行くぞ。」
「剣は得意じゃないんですけど。」
そう言うリズもスッと隙きのない構えをとる。
特に合図もなく、同時に2人が斬り掛かり、何合も切り結ぶ。
得意ではない、と言ったリズの剣速も常人には見えないレベルになっている。
切り結ぶ度に、炎と電撃が二人の周囲に舞い散る。
2人が距離を取ると、魔力を止めたのか炎と電撃が消える。
「ほれ、これを使いこなしてみせろ。」
そう言うと剣を鞘に納め、テーブルに置く。
レオナルトは諦めた表情をしていた。
「次はブリュナールだな。」
シルが取り出したのは、青地に金の線が走る板金鎧だ。
堅い金剛鉄をベースにして神金を随所に使う事で、防御力と魔法耐性を両立させている。
それに、同じく青地に金の入った逆三角形の盾、ヒーターシールドと、青い金属の八角の棍棒、金砕棒が取り出された。
日本人であるレオナルトからすれば、正に鬼が持っている金棒だ。
丸くなっている持ち手の先が少し太くなり八角形になっており、そこにスパイクが付いている。
「腕力も体力も高いブリュナールの特性を活かせるように、考えてみた。」
「騎士が剣も槍も持たないのは、変な感じがするのであります。」
「剣もいいが、鈍器もいいものだぞ。斬り結んでも斬れ味が落ちないからな。どうしても盾役は武器で攻撃を受けることも多く、それで斬れ味が落ちてしまう。」
「確かに、それは良さそうであります。」
「それじゃ、サイズを調整するから着てみてくれ。」
男女で部屋を別れて装備してみたが、ほとんど直すところはなかった。
なお、ついでにリズの装備も新しくしてあり、白のローブにシルの白い鱗と神金で補強されているものだ。
こちらは天使をイメージして作られている。
「魔力の操作を覚える必要があるが、その前にある程度まで位階を上げておこうか。」
シルがニヤリとして、その後ろでリズが呆れていた。




