表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/61

堅土竜

 銀次の探索は、問題なく進んでいた。

 魔物には頻繁に遭遇するものの、苦戦するような相手はおらず、順調に狩ることができていた。

 遭遇するのは、ほとんど今までに狩ってきた相手だが、コウモリの中に毒をもつポイズンバットが紛れており、【毒耐性】を覚えることができた。

 また、レッサーパラライズリザードの肉を食べ続けたおかげか、【麻痺耐性】は【麻痺無効】に進化していた。

 それに戦闘を繰り返すことで、スムーズに魔術を発動することができるようになり、消費魔力も低くなっているようだった。


 レベルは狩る魔物の強さ的に限界なのか、ほとんど上がらなくなっていたが。


 名前: ???(知立 銀次)

 種族: 竜幼生

 位階: 16

 魔力: 2,105

 腕力: 360

 体力: 427

 俊敏: 29

 知力: 366

 精神: 349


 そんな銀次が上層を探索していた時、凄まじいまでに強力だが威圧感はない、そんな気配を感知していた。

 警戒しながらも進んでいく銀次だが、突然右横から咆哮が叩きつけられる。


 前方の大きな気配に気を取られ、地中に潜っていた気配に気付くことができなかったのだ。

 慌てて鑑定をすると、地竜ランドドラゴンでレベルは42と表示される。

 体は大きく、全長は3mほどだろうか。

 その体は茶色く大きな硬そうな鱗に覆われている。

 竜という割には翼がないようだ。


 地竜はこちらを威嚇しているようだが、同じ竜種なのでなんとか話せないか試みる。


「キューキュキュ!(あのーお話することはできますか)」

「グルアアアア!」


 通じていないのか、咆哮で返される。

 と、地竜の前に一瞬で魔法陣が描かれると足元がせり上がってくる。

 バックステップで回避すると、目の前には地面から石でできた大きな槍が生えていた。

 恐らく魔法で攻撃してきたと思われるが、その速さも大きさも今までの魔物とは桁違いと言ってよかった。

 着地して体制を整える間もなく、地竜の方から無数の石の槍が飛来する。

 かわし切れないと判断し、最も発動が早い真空の刃を生成し、槍を撃ち落としていく。

 しかし、レベルと経験の差か、地竜の石槍の数は多く全てをしのぎ切ることはできない。

 真空の刃で迎撃しつつ、漏れた石槍はかわすようにしているが、その飛来速度は速くかわし切れずに少しずつ掠るように被弾していく。

 掠った程度とはいえ、遥かにレベルの高い相手からの魔法であり、鱗は剥がれ血を流しはじめている。


 わずかに出来た隙に、硬い石壁を一気に作り出し、自身に回復をかけるが、傷が癒える前に石壁は破壊され、再度石槍の雨に晒される。

 真空の刃で対応しつつ、たまに地竜の上から雷撃を落としてみるが、まったく効いている様子はない。

 また、光を収束してレーザーを放ってみるものの、これはうまく石槍を射線上に集めて無効化されている。


(光速のレーザーに対応できるってどんな反応なのさ)


 銀次は徐々に追い込まれてていることに、かなり焦っていた。

 本来であれば、遥かに格上の魔物相手に、ここまで善戦できていること自体が奇跡に近いのであるが、死んでしまっては意味がない。

 もってあと数分。

 銀次が覚悟を決めつつある時、洞窟の奥から咆哮が響き渡る。


「グアアアア!」


 途端に、地竜は大人しくなり、地に伏せる。

 満身創痍になりながらも、なんとか危機を脱したようなので、銀次もその場にへたり込む。


『眷属が(はや)って迷惑をかけてすまぬな、小さき竜よ。』


 洞窟の奥から、ではなく頭の中に直接声が響く。

 念話とかテレパシーとかいうものであろうか。


『話したい事もある。まずは此方(こちら)へ参られよ。』


 どうしたものかと動きかねていると、向こうからこちらへ来いと声を掛けられる。

 行くしかあるまい、と傷を癒しつつ奥へ進んでいく。


 道中には、何匹か戦ったのと同じ地竜がいたが、襲い掛かってくることはなく大人しく伏せている。

 洞窟は徐々に広くなり、途中から岩場ではなく切りりだした石を積んだりした人工のもの、云わば神殿のような造りになる。

 その奥に大きな2枚の岩でできた扉があるが、観音開きに開かれている。


 その奥には、大きな竜が待っていた。


『先ほどはすまなかったな。俺は堅土竜(けんどりゅう)カリバーン。お前は閃光竜(せんこうりゅう)クラウ・ソラスであっているか?』


 この大きな竜はカリバーンと言うらしい。

 ゲームでよく出てくる聖剣エクスカリバーの別名、または鍛える前の剣の名前だ。

 そしてお前の名か、と問われたクラウ・ソラスも光の剣として有名な剣だ。


「キュ、キュキュ!(違う、クラウ・ソラスと言う名ではない)」


 と答えるが、伝わっていないようだ。


『ふむ。念話もできぬか。少し見させてもらうぞ。』


 カリバーンが近くに寄り見つめてくるが、その大きさ故にすごい迫力である。

 大きさは15mくらいはあるであろうか。

 地竜同様の茶色い鱗は、地竜よりも大きく更に堅そうで、背中には体躯の割には小さいが翼もある。


『クラウ・ソラスの奴めが、転生に失敗しおったか。それとも転生も許されずに滅ぼされたか。いずれにせよ、お前にはそのあたりを説明する必要がありそうだな。異なる世界より訪れて、この世界の事もよく知るまい。』


 カリバーンが驚愕の事実を告げる。

 ここはやはりゲームの中などではなく、異世界であると言うのだ。

 いや、まだこれが事実かどうかは分からない。

 カリバーンが事実を知らなかったり、勘違いしている可能性もあるのだ。


 告げられたことに驚き放心していると、カリバーンが心配して声をかけてくる。


『やはり何も知らされておらぬか。しかし、そろそろ念話で話すことはできんか? やり方を理解しそうな頃合いだと思うが。』


 カリバーンからは、やはり念話で話しかけられていたようだ。

 それをカリバーンから告げられると、それをきっかけにしたようにスキル【念話】を覚えた。

 やり方が分からないが、こんな感じだろうか、と脳内でカリバーンに語り掛ける。


『これで通じていますか。』

『おお、できるようになったか。それは良かった。してお前の名を教えてくれぬか。鑑定して見ても読めぬ文字で書かれておってな。』


 先ほど見つめられたのは、鑑定をしていたためのようだ。

 異世界の名前であれば、読めないのは致し方ないだろう。


『知立銀次といいます。銀次、またはギンと呼んで頂ければと。』

『分かった、ギンと呼ばせてもらおう。俺の事はカリバーンでいいぞ。ただ、一通り説明した後にまた話すが、名前は変えておいたほうがよいかも知れぬな。』

『それは異世界から来たもの、と分かるのがよくないからでしょうか。』

『うむ、その通りだ。しかし話し方が固いな。もう少し緩く話せぬか? 幼いとは言えお前は俺と同格の存在だ。』

『すみません、仕事柄この話し方に慣れてしまっていて。・・・それじゃ、こんな感じでいいかな?』

『それで問題ない。では、少し話そうか。長くなるだろうが許せ。』


 カリバーンはこの世界と銀次の置かれた立場について説明を始める。

 この世界はランメルスと言い、創造神アスシアルフが想像したものだそうだ。

 世界に7つの属性、即ち火土風水雷光闇の属性をそれぞれ司る竜王がおり、カリバーンはそのうちの土を司る竜王だそうだ。

 しかし、50年程前から光を司る竜王、閃光竜クラウ・ソラスの気配が感じられなくなったらしく、転生に入ったのではないかと他の竜王は考えていたのだが、一向に転生したクラウ・ソラスが現れないので、転生に失敗したのではないかと(いぶか)しんでいたのだそうさ。

 竜王は、生殖により子孫を残すことが出来ない代わりに、予め卵を産んでおき、死が訪れた場合には、いずれかの卵の中に生まれ変わることで、魂を繋いでいるのだそうだ。

 なお、人化という手段を使えば、人との間に子を成すことも可能だが、カリバーンは試したこともないそうだ。

 転生に失敗した場合、つまり転生をすることもできずに滅ぼされた場合、すべての記憶や知識を失い、まっさらな竜の幼生として生を受けることになる。

 そうなった場合、竜王として覚醒する事が遅れ、何度も繰り返し滅ぼされる破目に陥ることもあり、そうすると何百年も竜王が欠ける事になる。


 そんな状況に、恐らく閃光竜が陥っており、そのうちの1つの卵に異世界の銀次の魂が入り込み、竜王の幼生として生を受けたのだろう、と言うことだった。

 そして、銀次の魂が異世界に導かれて竜王として産まれたのは、創造神アスシアルフの力によるものと推測されるそうだ。

 なにせ、【創造神の加護】を受けた【創造神の使途】なのだから。


『転生する前に、アスシアルフ様から説明とかもなかったのか?』

『いや、気付いたら竜になってただけで、何も聞いていないんだけど・・・』

『そうか。俺もアスシアルフ様と話はしたことがないのでな。どうやら創造神は、直接世界に生きるものと話したり、何かをしたりすることは出来ぬようなのだ。鍛冶を司る芸神ドラウヴェル様は偶にここに来るので、機会があれば聞いておくとしよう。とは言え、数十年に一度、フラッと突然来るだけなのでいつとは言えぬが。』


 神様は、なんとも自由な感じのようだ。


『創造神以外にも神様がいるのか。』

『ああ、いるぞ。今言ったドラウヴェル様は、元々はドワーフの鍛冶職人だったのだが、神格を得て神になった方で、今は鍛冶だけではなく工芸や産業等を管理している。他にも農神、武神、智神などがいるが、竜神はいま不在だな。』

『竜神という事はやはり竜なのか?』

『竜王のうち1体がそのうち神格を得てなるのだろうが、他の竜王は面倒がってなっておらんな。』


 カリバーンは咆哮のような笑い声をあげる。


『面倒だからならないとか、そんなんでいいのか?』

『何せ神だからな。下手なものを神に昇神させると逆に世界が荒れる。竜神の管轄は生物と進化だが、他と違いそれほど困るものではないのでな。』


 やはりなんとも緩い感じである。

 ただ、この世界には破壊神といった破滅を司る神はいないようなので、不在の神がいてもそれほど困ることはないそうだ。

 逆に、神が邪悪に堕ちたり、邪悪なものが昇神してしまうと、世界が大荒れになってしまうのだそうだ。

 そうならないよう、創造神がきちんと誰を神にするか判断しているのだが、神になると寿命がなくなるため、何千年も生きているとおかしくなってしまうものが、どうしてもいるのだそうだ。


 ちなみに竜王の寿命は不明だそうだ。

 最低でも数千年は生きられるそうだが、寿命が来る前に何らかの事故で死んだり、異常な力を持つものに倒されたりはするそうだ。

 それでも、魂を引き継いで転生をするので、事実上の不老不死と言ってよいのだが、何らかの事故か何かで、光の竜王である閃光竜が転生に失敗し、銀次の魂が異世界から入り込んで生まれることになったようだ。

 竜王とか急に言われても何をすればよいのやら、と銀次は困惑してしまう。


『なに、竜王なぞ大してすることはない。基本は何もせず、世が荒れそうになったら介入するくらいだ。あとは、自身の属性の精霊と協力して、世界の属性のバランスを調整することもあるのだが、追々(おいおい)覚えていけばよかろう。』


 竜王は、基本引き籠りでよいそうだ。


『何やら良からぬ事を考えている感じだったが・・・まあ良かろう。気にせずにおいてやる。』


 竜王は心が読めるのだろうか?


『ところで、なんで見た目は竜幼生なのに、閃光竜だと分かったんだ?』

『竜王の気配は独特でな。さらに竜王同士は繋がりがあるので、すぐに分かる。俺は当然だが、前の閃光竜であるクラウ・ソラスとは、近くにいたのもあって何度も会っているので、その気配も覚えている。』

『その竜王の気配ってのは、誰でも分かるものなのか?』

『いや、竜族の中でも上位竜と、あとは神くらいであろうな。すぐに竜王だと分かるのは。先ほどお前に挑んでいったのは、俺の眷属だが下位竜なのでそこまで分からなかったのだ。すまぬな。』

『死ぬかと思ったけど、その前に止めてくれたから気にしなくてもいいよ。』


 本当に死ぬかと思ったし、痛かったので恨み事も言いたくはなるが、ここは良好な関係を保っておいた方がよいだろう。


『名前を変えたほうがいいのは何でなんだ?』

『異世界からの訪問者は、前例がある。有名なところだと1,000年ほど前に来た者が、異世界の知識で農業や酪農を大幅に発展させてな。人間の世界でも、まだそれら異世界人の伝承が残っている可能性あある。もしお前が異世界からの訪問者だと知れた場合、その持っている知識を目当てに囚われる恐れがあるのでな。お前は強力な竜王の力を持つとは言え、まだ幼く位階も低い故、その力はまだまだ弱い。せめて成竜となるくらいまでは、普通の上位竜の振りをしておけばよかろう。それでも、竜であると言うだけで狙われる可能性があることを努々(ゆめゆめ)忘れてはならぬ。正面から挑んでくればまだよいが、搦手(からめて)により力を発揮できぬまま倒されることもある。』


 確かに、ドラゴンキラーとかドラゴンハンターとかそんな二つ名に憧れるものに挑まれることもありそうだ。

 更に異世界の知識で一攫千金のチャンスともなれば、狙われるのは至極当然ともいえる。


『なるほどな。しかしどんな名前がいいかな』

『お前の名前には、お前の国の言葉でどんな意味があるのだ? それをこの国の言葉に置き換えて語感の近い名前をつけるとかどうだ。』

『特に思いもないし、それでいいか。名前の意味は、金属の銀と、次の、という言葉の組み合わせだ。』

『シルバーそのままではどうだ?』

『さすがにそれは安直ではないかな。』

『では、シルヴェスターやシルヴェストルというのはどうだ。』

『おお、なんかカッコよくなったな。シルヴェスターだとムキムキになりそうだから、シルヴェストルにしようか。』

『では、お前の名はシルヴェストルで決まりだな。人間の貴族だと家名や領地名を付けたりするが、竜だし名だけで良いだろう。』

『うん、いい名をありがとう、カリバーン。』


 こうして、銀次のこの世界での名前が、シルヴェストルに決まったのであった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] しかし、50年程前から光を司る竜王、閃光竜クラウ・ソラスの気配が感じられなくなったらしく、転送に入ったのではないかと他の竜王は考えていたのだが、一向に転生したクラウ・ソラスが現れないので、転…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ