7・香織の想い
7・香織の想い
やがて今日の授業は全て終わり、香織は帰りの支度をしていた。
「香織」
その時、前に居た香音が話しかけてきた。
「何? 香音お姉ちゃん」
「実は急に今日、各クラスのクラス委員が集まって会議をする事になったの! 多分遅くなると思うから、夕ご飯の買い物お願いして良い?」
「勿論だよ! 僕にまかせて!」
「ありがとう♪ じゃあお願いね♪」
と言って香音は、カバンを持って教室から出て行った。
※ ※
「さぁてと・・・先ずはルーとお肉と人参と・・・それと玉葱とジャガイモだね!」
香織は上野駅近くのスーパーに辿り着くと、籠を持ちながら、買う物を想定した。4時近く為か、スーパーの中はかなり混んでいた。
野菜のコーナーに着くと、香織は目当ての野菜を見つけると、次々と籠に入れた。
「あとはお肉とルーだね」
野菜コーナーから肉のコーナーまで近かったので、香織は肉のコーナーに向かった。肉のコーナーに着いた時、一人の人物を見つけた。
「あっ、真由!:
「香織!?」
其処に居たのは、和馬と恋人になった真由であった。
「買い物?」
真由が訪ねてきた。
「うん、そうだよ」
「香音は? どっかに居るの?」
「お姉ちゃんは、クラス委員の会議で、まだ学校。それで僕一人で、夕ご飯の買い物をしているの・・・真由は?」
「私も買い物! 今日和馬の所に行くから・・・」
「あ~・・・そういえば真由も和馬と同じで一人暮らしだったね」
香織は以前、真由から一人暮らしをしている事を聞いた事があったのだ。
「展開が速いね・・・恋仲になって直ぐ、相手の家に行くなんて・・・」
「別に良いでしょ・・・そういえばさぁ、アンタ私が『シスコン』って言っても怒らないよね? 何で?」
「?・・・・何でって、真由は僕がシスコンって気づいているんじゃないの?」
「えっ!? アンタ本当に、シスコンだったの!?」
真由は驚いた様に言った。どうやら本気で言っていた訳ではなかった様だ。真由は大きな声であったが、幸いにも周りに人には気付かれていなかった。
「別に驚く事じゃ・・・今までシスコンって言ってたんだから・・・(苦笑)」
香織は苦笑い気味に言った。
「それもそうね・・・・・じゃあ私は行くから、香音にも宜しくね♪」
そう言うと、真由は人ごみの中に消えていった。
※ ※
やがて買い物が終わると、香織は自宅に向かう為、上野公園を抜けていた。
「香織ク~ン!!!」
と、香音の声がした。香織は振り返ると、香音が走ってきた。
「あっ、お姉ちゃん! 会議は終わったの?」
香音は香織の前まで来て・・・
「そうだよ・・・ハア・・・・予想より早く終わったから・・・ハアハア・・・香織クンが此処に居る気がして・・・走ってきたんだ・・・」
と、息を切らせながら、香音は香織に言った。
「大丈夫?」
香織が心配そうに尋ねる。香音は息を整いて言った。
「うん大丈夫だよ! もう買い物は終わったんだね・・・そうだ! 香織クン、ちょっと来て!」
「えっ? えっ?」
香音は、買い物袋を持った香織の手を掴むと、何処かに向かって走り出した。
※ ※
二人がやって来たのは、弁天堂が見える不忍池の一角だった。夕方の為か殆ど人は居らず、香音と香織が居る所には、二人以外人は居なかった。
「懐かしいね♪ 子供の頃は、良く此処で遊んだね♪」
と、池の縁の柵に寄り掛かりながら、香音は香織に言った。香織はその横に並び、香音に尋ねる。
「懐かしいけど、どうして今此処に?」
「ん~・・・何となくかな♪」
ガクッ
その言葉を聞いて、香織はガクッとなった。もっと深い理由があるのかという考えが、僅かながらにあった為に、力の抜ける衝撃は大きかった。
「香織クン!」
「!?」
と、突然真剣な口調で、香音が尋ねてきた。香織は香音の顔を見ると、その顔も真剣な表情だった。
「お姉ちゃんの事・・・好き?」
「・・・・・好きだよ・・・だって僕のお姉ちゃんだもん」
と、香音の唐突な質問に、香織は冷静に返した。答えは勿論『好き』、ただ此れは表面上は『姉として好き』だが、実際は『香音という一人の女性が好き』である。しかし香織は、その事を伝えれば、『姉は間違いなく自分を嫌う』という予想がある為、あえて『お姉ちゃん』という単語を追加したのだ。
香音はその言葉を聞くと、軽く俯いてから、香織の顔を見た。その表情は何時もの香織であった。
「そっか良かった♪・・・私も香織クンの事は好きだよ♪ もう帰ろうか!」
そう言うと香音は、柵から離れて歩き出した。香織もその後を追った。香音の言った、『私も香織クンの事が好き』という言葉を気にしながら・・・。




