第5話:サバイバルの適性検査
「……おい、全員生きてるな? 誰か欠けてねえか!」
瓦礫の山に登り、声を張り上げたのは玄田先輩だった。ボランティア部OBであり、修羅場を潜り抜けてきた彼の声には、有無を言わせぬ威圧感がある。
周囲は不気味に発光する巨大キノコの樹海。見たこともない怪鳥の鳴き声が遠くから聞こえてくる。
「校長、安倍、状況はどうだ。ここはどこなんだ?」
「……うむ。ワシのシステムも、完全に異世界の座標を示しておる。地球ではないな」
メカ校長が腕のガトリングをギュインと鳴らす。
「とにかく、現状を把握するのが先決だ。俺たちの『持ち札』を確認するぞ」
玄田先輩が集団を見渡した。安倍の言葉を皮切りに、面々が次々と手に入れたチート能力を披露し始めた。メカ校長は弾薬無限のフルバースト、塩原さんは金貨召喚、角田先生は金剛不壊の肉体。
「……なるほど。全員が規格外の力を掴まされたわけか」
玄田先輩は一通り確認すると、腕を組んで釘を刺した。
「だが、チートが使えるからって調子に乗るなよ。ここは水も食料もねえ未知の世界だ。現場の基本を怠れば一瞬で全滅だぞ」
最後に、彼は俺の方へ歩み寄ってきた。俺は右手の親指に巻いた布が、徐々に赤く染まっていくのを隠すように、左手でそっとかばった。ズキズキと脈打つ痛みが、思考を削り取っていく。
「古田。お前はどうなんだ? さっきマイコニドを吹き飛ばした指の力……あれはただの爆発じゃないだろ?」
俺は痛みに顔を歪めながら説明せざるを得なかった。
「……自分の爪を剥がして、そこに記述した通りに事象を書き換える能力です。でも、使うたびに激痛が伴うし、今のところ傷が全く治らない……実質的な自爆チートです」
玄田先輩は、俺の指先の血塗れの布を鋭い眼光で見つめた。
「……そうか。かなりリスクの高い武器だな。古田、お前のその力、本当に命がかかった大一番まで温存しておけ。普段の開拓は、俺たちの力で回す」
彼は俺の肩を強く叩いた。
「無理して使うなよ。次、お前がその爪を剥ぐ時が、俺たちが本当に死ぬ時だと思え」
その言葉は重かった。古田の能力がチームの最後の切り札であると同時に、俺自身が脆い存在であることを突きつけられたからだ。
ふと、騒がしい能力確認の声が止み、森が沈黙する。
風が止まり、巨大キノコの隙間から冷たい視線が大量に注がれている。俺は一番に気づいた。
「……全員、伏せろ!」
森の奥から『キュイィィン』という、先ほどよりも遥かに鋭い鳴き声が響いた。
集団の騒ぎを聞きつけた、新たな獲物が姿を現したのだ。
「全員、準備しろ! 生き残りたければ、やるぞ!!」
俺たちの、最高にカオスで、そして血なまぐさいサバイバルが今、本格的に幕を開けた。




