第12話:川辺の戦乙女
「……あれは?」
翌朝、森を抜けた先に現れた清流のほとりで、角田先生が足を止めた。
透明な水が流れる川辺。そこには、見慣れないものが倒れている。 近づいてみると、それは人間だった。
輝く金髪。透き通るような青い瞳。 ボロボロに裂けた騎士服を纏ってはいるが、まるで絵画から抜け出してきたかのような美女だ。
「ひどい……死んでいるの?」
なのはさんが青ざめて駆け寄る。 だが、山口先生がその肩を掴んで制した。
「まだ生きています。それも、かなりの重傷……。誰か、早く手当を!」
俺と角田先生が様子を確認すると、彼女の腹部には魔物の爪で引き裂かれた深い傷跡があった。
それ以上に奇妙なのは、身につけている装飾品だ。 見たこともない紋章が刻まれた剣が、打ち捨てられたように転がっている。
その時だった。
川の上流から、耳をつんざくような甲高い咆哮が響く。
森の木々が轟音と共にへし折れた。 現れたのは、巨大ムカデのような魔物。鋭い鎌を振りかざし、飢えた目でこちらを狙っている。
「おいおい、また厄介なのが出てきたな!」
玄田先輩が身構える。 俺も右手の親指に力を込めるが、魔物は先日の巨大イノシシをも凌駕する速度で突進してきた。
その時だ。地面に倒れていたはずの女剣士が、フラフラと立ち上がった。
「……私の獲物だ。邪魔をするな……!」
彼女は血を吐きながらも、その瞳に強い意志を宿して魔物の前に立ちはだかる。
限界を超えた動き。 相手のフェイントを見切り、首の皮一枚で回避する。
――紙一重の距離を保ちながら、相手の重心が浮いた瞬間を逃さない。
腐海の湿った空気を切り裂く、鋭い一撃だった。
彼女の剣技は洗練されていた。しかし、深手の影響か、足元が大きく揺らぐ。
「今だ! 金剛くん、先生、援護を!」
俺の叫びと同時に、金剛くんが瓦礫を盾に突撃する。角田先生がその巨体で魔物の勢いを真っ向から受け止めた。
「こい! この相撲部屋の教え、身をもって教えてやる!」
現代の筋肉とチートが、異世界のファンタジーと交錯する。
俺たちは、この「川辺の戦乙女」と共に、未知の魔物との激闘に突入していく。




