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ジェイ・ソーティ 自衛隊異世界任務記録  作者: EPIC
第2章「次なるフェーズ」
16/21

Part15:「異界の少年少女たちと、癖あり隊員等」

「……」

「っ……」

「はぁ……」


 陰る顔のまま。ここまでに知れた色々を思い返しながらも、眼下向こうの駐屯地を見下ろすエルフの少年たち。


 降って沸いたようにやって来た彼等ジエイタイに、比類なき強大な力に様を見せつけられ。

 ましてや、不覚にも手折られた己たちを救われるまでに至ってしまっては。

 少年たちが己の無力間に苛まれ、どこか悔しい思いを痛い手しまうのもまた無理は無かった。


 少年たちがその無力感を払拭しようと、今も我武者羅に鍛錬に励みながらも。

 その顔から陰りが晴れないの理由はそこにあった。


「……!」


 そんな憂いの思いを抱きつつも、丘の向こうの駐屯地を眺めていた少年たちの耳に。

 反対背後、リェエンの村のある方向から、何か唸るような音が聞こえ届いたのはその時。


 音に引かれて振り向いた少年たちが見止めたのは、村の方向から小高い丘を登り走って来る、馬も無しに動く不思議な鉄の荷車。

 それは、ジエイタイの彼等の乗り物――明かせば、共通軽装甲車であった。


「――あぁ、いたいた」


 共通軽装甲車は丘を駆け上がって来て、エルフの少年たちの近くに停止。

 ドアが開かれそこから降りて来たのは、緑を基調とした斑模様が特異な服装――迷彩服に身を包む、いささか人相の悪い男と、長身で美麗な女の二人。

 また明かしてしまえばそれは他でもない、第101前進観測隊の薩摩と加納であった。


「みんな、鍛錬に励んでいる所をごめんね」

「いえ、何かあったのかい?」


 すでに双方は初対面では無かった。

 まだ異世界の言語に不得手な所がある加納は、やや硬くたどたどしいイントネーションで詫びる言葉を紡ぎながら少年たちに歩み寄る。

 その加納に、エルフの少年は何事かあったのかと思い尋ね返す。


「別段そういんじゃねェ。飯の時間になっても少年ズが戻ってこねェから、見に来たんだよ」


 それに対して、否定と共にそんな回答を返したのは、同じく歩み寄って来て対面した薩摩。

 加納と比べて大分流暢だが、その分ぶっきらぼうで皮肉気な物と分かってしまう言葉使いは。しかしそれが同時に軽口と分かるイントネーションを、きちんと携えていた。。


「あっ、ごめん」

「もうそんな時間か」


 薩摩のその促しを受け、少年たちも鍛錬に夢中になっている間に、太陽がすでに真上に上っている事に気づいた。

 薩摩と加納は、そんな少年たちを昼食に迎えに来たらしい。


 エルフの少年たちは、今もリェエンの村の宿に留まっているのだが。

 ジエイタイは、曲がりなりにも冒険者である少年たちからも情報を得たい所があるらしいのと

 また、村と少年たちを助けた手前からなのか、どこか過保護と感じるまでに気に掛けており。

 少年たちはここの所、こうして少しばかり自衛隊に「面倒を見られて」いた。


「すまない、呼びに来てくれたのか」

「ははっ、あやまらないで。私等から言うのもだけど、こういうおせっかいも私等の性質でね」


 エルフの少年はわざわざ迎えの手数を掛けてしまった事を申し訳なく思い、謝罪の言葉を紡ぐが。

 加納はそれに、またたどたどしさの覗く言葉使いながらも、そのイケメン系の美麗な顔に笑みを作って返す。


「おせっかいついでに飴チャンでもあげるか?」


 付け加えるように薩摩が、皮肉気にそんな冗談を飛ばしたが。

 しかしその表現は異世界の少年たちにはイマイチ伝わらなかったようで、少年たちは微かに困った顔を見せる。


「伝わらない冗談はナンセンスだな」

「アぁ、ヘェヘェ」


 加納はそんな薩摩の飛ばした冗談をニヒルな物言いで批評するが。

 薩摩はウザそうに適当な返事を返すだけで、まともに取り合わない。


「私たちもこれからお昼でね、よければ一緒にどうだい?異世界の可憐な子たちと交友を持てるなら歓迎さ」


 そんな薩摩をさておくように、加納は次にはエルフの少年たちにそんな誘いの台詞を向ける。

 そこには何か、微かに口説くかのような色が含まれていた。


 実際、美少女と見まがう可憐さを持つエルフの少年に。凛々しくも愛らしい武人の少女。男の子的な可愛さと狼獣の愛くるしさを同居させる獣人の少年の三人は。

 それぞれ、見た者にお近づきになりたいと思わせる魅力を盛っており。

 そして実際加納もその腹積もりを少なからず抱いており。そのイケメン系美女顔には、しかし隠しきれない下心が浮かび覗いていた。


「変質者女には関わらねェほうが身のためだな」

「っ゛……!」


 そんな加納をシラけた横目で見ながら、遠慮の無い表現で少年たちに忠告の言葉を飛ばした薩摩。

 そんな横で変質者女と表現された加納は、一転苦虫を噛み潰したようた顔を浮かべる。


「……いや、せっかくのお誘いだからね。僕たちでよければご一緒するよ」


 そんな目の前での両者のやり取りに困惑しつつも、エルフの少年は代表して加納等からの誘いを受け入れる。


「……っ?」


 その直後であった。エルフの少年のその特有の耳が、「何か」の異質な音を捉えたのは。

 それは少年の仲間たちも一緒。

 音の聞こえる方向を追い、向こう遠くの空を見上げた少年たちは。大空の中に小さな複数のシルエットを見つける。


「あれは……っ?」

「うん?――あぁ、大丈夫。我々の同胞さ」


 正体不明の存在の接近に、少し身構えた少年たちに。

 しかし続けて「その」接近に気づいた加納が、そう説明する声を向ける。


 最初は微かであった異質な音声は、間もなく空気を割るような音へと変わり。

 そして空の向こうに見えたシルエット、どんどんと大きく鮮明になる。


 そして――


「!……うわ!?」

「っ!?」

「!?」


 音を凄まじい轟音へと変え、丘の上空を、薩摩に加納、少年たちの真上を。

 尖るシルエットの飛行物体が、四つ程立て続けに。

 信じがたい程の凄まじい速度で飛び抜けた。


 その正体は――戦闘機。

 航空宇宙自衛隊の、F-2A戦闘機だ。


 また明かし説明すれば、先日にようやく「こちら」で展開が完了した飛行場施設から飛び立ったものだ。


「空自のF-2だね」

「7空の3飛かァ?こんな異世界くんだりまでご苦労なこった」

「海自の「任務群」から発した隊と、戦爆連合を組むんだろう」


 飛び抜けたF-2Aの編隊を、目を剥き驚愕しながら目で追う少年たちの一方で。

 薩摩と加納は平然とした様子で、少年たちには分からないワードを混ぜて何か言葉を交わしている。


「彼らは……あんなものまで……っ」


 聞こえるそれが何を示すのかは皆目分からなかったが。

 今に飛び抜けた「怪鳥」が、とてつもなく凶悪な何かであることを本能で感じ取り。畏怖すらを覚えながら。

 エルフの少年たちは、飛び去ったF-2Aの編隊を遠くに見つめ続けた。

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